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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝高校生がマーケティングやエンターテインメントに触れるとステキに変化する

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
3回目は、ビジネスマンをしながら女子高校で週1回マーケティングを教えているのですが、「カスタマーがなぜ幸せになるか」を常に意識することで、彼女たちがステキ創りをしていくという話を記します。みなさんのお客様も、ライブを見たり、対話したりすることで、前を向く機会を得たりすると思います。そんなことを感じてください。


■ 高校生に教えるようになったきっかけ

2013年に、ビジネス社より『とことん観察マーケティング』という書籍を出版させていただきました。この本を出したきっかけは、リクルート、ブックオフ、ローソンというキャリアで、とにかく悩んだらカスタマーに聞くことで長いヒット・深いヒットにつながる経験を、勉強会や飲み屋で常に語り続けていたのを友人の勧めで書籍化したことによります。見て聞いて知って生かす事例なので非常に分かりやすく、行動にもつなげやすいことが良いということでした。
リクルートのとても著名な後輩2名が、自分たちの仲間たちにこの話を裏話も含めて伝えて、自社の悩みやコンサル先の悩みの解消に生かしたいということで、NOVA塾(私が野林なので)なるものを実施してくれました。非常にバリエーションに富んだ方々が集まり、ディスカッションも活発に行われました。その参加者の中に学校法人高木学園の高木暁子理事長も参加されました。高木学園は創立110年の伝統ある女子高で淑女であることを理念に運営されてきました。創立したのは高木さんのおばあさま、その後、お父様が継いだのですが、お亡くなりになり、企業にいた高木暁子さんが理事長を継ぐことになりました。彼女は、社会で戦ってきたため、生徒が今後どういうふうに社会に出てほしいかをよくわかっています。当日の私の講演内容が、雑誌とかコンビニとかブックオフの話題が多く、わかりやすかったため、これは高木学園の生徒にもいかせるとピンと来たといいます。商業科は簿記が主体です。とても重要なテーマです。ただし、いろいろな帳簿関係のソフトも発展する中、簿記だけで生徒の就職が有利になるわけではない。ここにマーケティングの授業を投入して進化する学校としたいという思いがあり、ぜひ授業をやってほしいという要望をいただきました。サラリーマンが高校生の授業を受け持てるなんてこんなにいい機会はありません。また、リクルート、ローソンでもどちらかというと購買金額の大きい大人のマーケティングが主体でしたので、高校生のマーケットには違ったおもしろみを感じました。受け入れられるかどうかという不安もありましたがスタートしました。


■ 活性化された授業とするには(寝ない授業とは)

マーケティング理論や、WEBプロモーションのしくみなどは最初から難しいと考え、コンビニとかキャラクターとかスターバックスとか自分で考えやすいジャンルでスタートします。解説は20分、ディスカッションは20分、発表は20分ということで、発表することが前提での授業、ディスカッションすることで、自分から口を開くことによる脳の活性化。このやり方がうまくいきました。60分聞いているのはさすがにしんどいですね。
(1) コンビニのキャラクターとタイアップしたキャンペーンを考える
(2) グッズ付映画前売り券の企画を考える
(3) ブックオフが今後やったほうがいいリサイクルのアイデアを考える
(4) とらばーゆのターゲットを学びその人たちの心が揺れる記事のタイトルを考える
などが一学期のテーマ。マーケティングの練習です。
2学期になると、
(1) スターバックスとドトールの戦術の違いからターゲットとするカスタマーの違いを学び戦術を出す
(2) ミニストップの特徴を出しあいミニストップが生き残る戦術を出す
(3) ゼクシィの心を揺らす付録を考えてみる
(4) ポイントカードのメリット・デメリットを整理して改善案を提案してみる
1学期よりも難しくなってきます。
ですが、ずっと意識させていることは『誰はなぜ幸せになるのか』『誰はなぜ買うのか』『誰はなぜ来るのか』『誰はなぜ買わないのか』『どうしたら買うと思うのか、それはなぜか』。授業では常にこのことを通じてカスタマーの心を揺らすことを考え続けてもらいます。これは、どの企業でも通用することで『誰』と『なぜ』のない会議が往々にして行われています。
3学期には、
(1) ロッテのガーナのバレンタイン企画を考える
(2) 東京ディズニーリゾートへのステキなサービスの提案を考える
などを、企画書に落とす形でやってもらいます。集大成ですね。


■ どんな反応が起こるのか

学期の最後には、提出物を出してもらいます。『マチで見たこれはなぜ?をレポートする』『企業がやっているわざわざ来る理由をレポートする』『高木学園の応募者が増えるにはどうしたらいいか考える』悪戦苦闘しながら40人がほとんどテーマがかぶらない提出物を作ります。この提出物に授業の感想を書いてくれるのですが、多くの記載の中に面白い書き込みがあります。
「中学生のころから人前で話すことができなかったがマーケティングの授業を通じて話せるようになった」
「最初は自分で考えても何も浮かばなかったがみんなと議論しているうちにアイデアが浮かぶようになった」
「議論をまとめるのに苦労したが、自分にないアイデアも出るのでおもしろかった」
「他の授業でも手を上げることができるようになった」
「マチを歩くときになぜこうなっているんだろうと観察しながらあるくようになった」
高校1年生です。この年代の人には難しいことも多々ありますが、この子たちの反応を考えるにつけ、社会人においても『この会社は、この事業は、このチームは、誰を幸せにするために活動しているのか』ということを軸から外さないことで、改善できると思いませんか。また、1人で考えるよりチームで考える、チームで考えるよりも多くの部署のナレッジを駆使して考えることが、よりステキなアイデアになることもわかります。
私の企業向けの講演でもこの体験が役に立っています。


■ アウトプットはどうなった?

ほんとうは高校1年生から3年生まで面倒見てあげたいのですが、なにぶん私もサラリーマンでしたので1年生を教えて2年生は慶応大学の先生方に任せています。高木理事長も企業に明るいですから、コラボしてくれる企業を探してきてくれます。キングジム様、チェリオ様、スリーエフ様、フェリシモ様、そうそうたる顔ぶれが、高校生とコラボした商品創りを承認してくれます。自分たちの考えた商品が店頭で販売される喜びは大変なものです。キングジム様とコラボしたKITTAという商品は定番商品になりました。マスキングテープのアイデアなどは社会人よりも高校生の方がおもしろいです。このようにマーケティングは若いうちから触れてもらった方がいい。何気なく過ごしてしまう時期にマーケティングのおもしろさに触れてもらうことでこれからの生き方や楽しみ方に影響することがわかりました。


■ みなさんのメッセージの反応を確認しよう

以前にローソンチケットの社長をしているときにアミューズのFlumpoolさんのライブで、バンドからのメッセージに対して、隣にいた女子中学生が「明日、がんばってもう1回学校に行ってみる」と叫んでいました。エンターテインメントが人の心を揺らすことは非常に多いと思います。来てもらう、見てもらう、聞いてもらう、感じてもらう…ステキ創りしていきましょう。

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