[ Spinart(スピナート) ] - あらゆる表現者・アーティストと出逢えるサイト

Logo Mark連載記事

Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝ネットビジネス進化論

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

続きを読む

野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。 17回目のコラムです。今回は、ITビジネスの専門家である尾原和啓さんの新著「ネットビジネス進化論」を拝読し、ネットマーケティング用語にあふれている現状において、本質的ななぜ?を含めてわかりやすくまとまっていたので、人の心を揺らすツールだけではなく、環境を理解することで手法のバリエーションが広がっていただけたらなと思い筆を執りました。ちょっと教科書チックですが、興味が出ましたらこの本を手に取っていただけるとよいなと思います。


■ 尾原和啓さんとは

尾原さんはマッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー、サイバード、オプト、グーグル、楽天などの事業企画、投資、新規事業開発などを手掛けてきました。以前にもご紹介した「アフターデジタル」にも共著で参加しているITビジネスを知り尽くした方です。私は、リクルート時代に「リクナビ」の開発でご一緒し、その後もグーグルや楽天の時にもビジネス開発で相談してきました。好奇心は最大級で、彼に紹介された方は数知れずです。元リクルートとベンチャー企業の社長たちをつなげる会を催したり、ベンチャー投資家の千葉功太郎さんとともに「千葉道場」(以前のコラムで紹介しました)を開催し多くのナレッジをベンチャーで共有するなどの仕掛けも楽しんでいます。実は私も元リクルートとして、前述のマッチングの会にてFiNCの当時の溝口社長と知り合い、上場企業からベンチャー企業に転職したことがあります。とにかく常に新しい技術とコミュニケーションに敏感な方です。
また、私はアフターデジタルな時代であっても忘れてはいけないことは、結局は生身の人間の心が揺らされて購買や決断ができるので、その観察をやめてはいけないということですが、それに対しても尾原さんは心から賛同してくれていて、一緒にオンラインセミナーも開催したりしました。これだけすごい人に師匠と呼ばれることで私もまだまだたくさんの人にそれを伝えていかないといけないと思っています。
新著の「ネットビジネス進化論」は、帯にも記載されている通り、激動の時代を乗り切るための羅針盤の役目を果たします。進化論ですから世界を変えてきた歴史から未来への展望までが書かれていて、しかも大変わかりやすい整理がされています。当然、今、チャレンジしようとしている方々に向けてのものですが、実に分かりやすいため、ちょっとネットで活動を広げていくことが苦手…とか感じている人にとっても、挽回するバイブルになるのではないかと思ったので今回はこれをコラムにしました。


■ つながりの場所を押さえたものが勝つ

すべてのネットコミュニケーションの入り口は検索でした。そこを押さえた企業がグーグルとヤフーです。ヤフーは人力で情報を集め躍進しましたが、ものすごいスピードで情報量が爆発し、ロボット検索を開発したグーグルが王者となりました。ネットビジネスの雌雄ではなく、2020年2月の世界時価総額ランキングでは、GAFAMに加えて、アリババ、テンセントが進出してきており、すでにトップ10で7社がネットワーク企業になっています。日本の中では、それらの企業に、ヤフー、楽天、LINEが入り込んでいるのも周知の事実です。これらの台頭によって、インターネット広告市場は大きく拡大し、検索連動型広告によってマスの中から興味がある人に刺さるという効率の悪いメディアからの広告シェアを大きく奪い取りました。ヤフーはその後、情報の総合デパートの方向にかじを切って日本では独自の存在感を保っています。


■ 売買取引は線になり、IDと決済を握ることがマストになった

尾原さんが共著している「アフターデジタル」では主に中国のインターネットの発展に焦点を当てています。アリペイ、ウィチャットペイ、銀聯カードなどに見るように中国のキャッシュレス決済の進化に比べると日本の遅れがよく指摘されるところです。リアル世界での売買取引は「点」であったものが、オンライン決済やクレジット決済で起こっているのは取引ごとに分断されていたお金のやりとりが全部つながりつつあります。これらは支払方法から機能的に発展する前に、たとえばウィチャットである人がチケットをまとめて取って、友人に渡すということがオンラインによってできることに価値があり、それならお金のやり取りもすぐできるということでフリクションレスに信用性もあって利用できるという発展をたどりました。日本でもPayPayなど場を圧倒的に抑える先日によって進化していますが、まだまだキャッシュレス化が進まない国民性があるようです。キャッシュレス決済によってすべてのお金のやり取りがリンクになるというのは個人を識別するためのIDと決済が結びつくということです。


■ つながりの進化

・人から人へ物をつなげるCtoCコマース。そもそもは、売りたい人、買いたい人、バンドメンバー募集など新聞や雑誌に掲載して募るというもので、オンラインではまだ騙されるのではないかという不安もある中での情報の少ないコミュニケーションでした。SSLの登場によってネットに安心がもたらされ飛躍的に発展しましたオークションサイトでヤフオク!が数ある競合から抜け出たのは、早く主流になったものが勝つ、買い手がいるほど落札価格が上がる、たくさんたまった売り手が買い手を呼び、たくさん集まった買い手がさらに売り手を呼ぶという相互ネットワーク効果を知っていて大きく投資できたことだと感じます。その状態でもメルカリが台頭しているのは、検索の思考ではなくて、探索の楽しさとそのスマホとの相性の良さが効いているようです。

・企業から人へ物をつなげるBtoCコマース。Eコマースの代表のアマゾンが本から始めた理由が、リアルの店舗では全部そろえることができないことと、多くの趣味嗜好のジャンルを持つ性格の本はロングテールの特徴を持つため、網羅性と検索による効果が大きかったからです。そしてつかんだユーザーに、CD、家電と広げていきました。アマゾン・ジャパンも長い期間赤字でも本をやり続けたところに、ゴールを見据えた戦略が見え隠れします。アマゾンの顧客のことだけを考えるカスタマー・オブセッションという思想が、中途半端に全プレイヤーを立てる企業との圧倒的な差かもしれません。これに規模以外で対抗するには…ということで、楽天は楽天カードと楽天ポイントのエコシステムを活用して、Yahoo!は、出店料無料のYahoo!ショッピングを展開して戦いを挑みます。別の付加価値とか、出店者のコスト面とか角度を変えた戦いは面白いですね。最短距離の検索型と迷う楽しさも味わえる探索型、完全自動化とエンタメ化の二極化が進む未来が想像できます。

・企業から人へサービスをつなげるBtoCサービスコマース。さらに情報が莫大になってくると比較してくれるニーズが高まります。私が所属していたリクルートでは、紙メディアの時代から常に情報を比較検討するマッチングビジネスを行ってきました。ほとんどのビジネスがインターネットに移行したのは必然のことです。旅行や飲食店探しなどは、楽天トラベル、ぐるなびなど多くのプレイヤーによって発展しました。リクルートもじゃらんやホットペッパーなど多くのジャンルでビジネス化しています。美容室探しのホットペッパービューティーなどは独壇場になっています。これらがカスタマーから受け入れられるのは、ツメの開発が優れていることです。リクルートのカーセンサーでも、価格・色・車型・年式・メーカー…などなど様々なツメを開発して雑誌に実装しました。これがインターネットになっても活躍しています。そして、旅行などの予約サービスやチケット販売といったサービスコマースは、在庫化することによってよりオンライン予約を加速することになります。

・人から人へ情報をつなげるCGM。出してからの情報を整理して自分のものにする時代から、誰でもコンテンツの作り手になれる時代になりました。次の人のために役に立ちたいというペイフォワードの連鎖が気持ちいいということでしょう。ウィキペディアやはてなブックマークなどはビジネスというよりは共有していく文化のような気がします。Youtube、ニコニコ動画などもうこれが当たり前のようになりました。また、地道にレビューを集めたクックパッド、アットコスメなどはじっくり時間をかけて収集し不動の情報源になっています。レビューすることは、自分を示したいのでもあり、他人に役に立ちたいのでもあり、やはりカスタマー満足の高い運営をすることが何よりも大事ですね。


■ 続々と現れるインターネット用語、ニュービジネス

情報をつなげることにより、それがコンテンツになっていきます。アドテクノロジーが進化することによって、WEB広告は、広告枠の販売からターゲティング広告が主流になっていきます。暇つぶしの王様スマホゲームはゲーム機やソフトの存在を途々に駆逐していきます。収集・交換・育成・対戦という遊びの4原則を実装したポケットモンスターは空前のブームとなりました。さらに、ただゲームをプレイするということではなく、アバターによって違う人生を生きるというとらえ方、ゲームを見るという市場も誕生するという事実、インターネットがどんどん可能性を広げています。ブロックチェーンという分散型台帳技術が、過去のすべての取引の履歴が記載された台帳となり、暗号で守られ改ざんできないことによりビットコインのような取引形態を生み出す。クラウドファンディングによって、金融機関やファンドにプレゼンテーションすることなくヴィジョンに向かうスタートが切れる。有限資産を小分けにしてみんなで使うシェアリングエコノミーという発想が生まれる。サーバーがクラウドに存在することによって、初期コストが低減され、サーバーの運用コストが固定費から変動費になる。システムを使った分だけ料金をいただくSaaS(software as a Service)というビジネスが登場し、オラクル、セールスフォースといった企業が非常に多くの企業の主幹システムになっていく。一元さんを獲得するための施策から、常連さんに長き付き合っていただくための発想としてサブスクリプションというビジネススタイルが登場する。カタカナにあふれる毎日ですが、1つ1つ整理しておくと、納得の進化をしているだけなことに気がつきます。


■ 個人がパワーを持つ時代

機器を使った初期のコミュニケーションはSMS、ポケベルでした。女子学生の使い方が独自で話題になりました。 iモード「1円メール」の登場によってコミュニケーションコストが下がり伸長するきっかけとなりました。さらに、伝わらなかったり、誤解を生じていたりしていたことが、絵文字とスタンプによって、コミュニケーションが円滑になっていきました。SNSの登場によってつながりが大きなパワーを持つことになります。情報収集面で自分の関心のあるものにたどり着くフィルターとしてのツイッター、ツイッターによって拡散しすぎてしまうことに引いてしまった人がほっとする実名主義のフェイスブック、ツールからプラットフォームに進化したインスタグラム、無料通話からはじまりグループ機能によって抜けられないものになったLINE。SNSによってつながりが大きな力を持ちました。ビジネスでも拡散力の強いインフルエンサーが多数現れ、高額な金額が発生するのは重要な販売チャネルであると認知されているからです。受け手も進化していますので、ステルスマーケティングでは長期的な関係を築けなくなっています。FiNCの在籍時に、アンバサダーさんとカスタマーが喜んでくれる場を作ろうとしていて、その時に感じたのはフォロワーの数ではなくて、きめ細かいコメントの返信や共感をしてくれる方が圧倒的にファンづくりができるということでした。そして、オンラインサロンのようなコミュニティビジネスが勢いを持ってきました。まさに集合知から個人のインフルエンサーへということを体感しています。

今回は、尾原さんの「ネットビジネス進化論」がほんとうにわかりやすく、しかも本質的に書かれているので、まさにネットを駆使して活動を拡散されている方も、ちょっと出遅れてしまったかなと思う方にもとても参考になると思いましたので書いてみました。ぜひ読んでみてください。

この記事への感想はこちらへどうぞ

この記事への感想を送る


野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

続きを読む

関連記事

準備中