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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝コロナ禍からエンタメ業界が立ち上がるには

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
18回目のコラムです。今回は、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けて、今も試行錯誤しているエンターテインメント業界について必死に闘っているニュースも散見されますので触れていきます。


■ あまり聞きたくないニュースが聞こえてきました エイベックス、セガサミーの希望退職募集

エイベックスが初の希望退職を募集すると発表しました。募集人数は約100名。募集期間は12月10日~21日で、退職日は来年3月31日予定です。ライブ、舞台などを含む音楽事業の一部と間接部門に在籍する40歳以上で、対象社員443名とのことです。エンターテインメントのトップ企業ですから衝撃のニュースとなりました。発表では第2四半期の連結での最終利益も32億8900万円の赤字となりました。最大の要因は、ライブ、イベントの開催自粛による売上減で、売上前年同期比は44.0%減の342億7900万円と苦戦したと発表されています。「a nation」などの大型イベントや、夏の大きなライブがことごとく中止でしたから未曽有の事態です。
遊技機やゲームなどの事業を展開するセガサミーホールディングスもグループ正社員と契約社員を対象に計650人の希望退職者を募集すると発表しました。新型コロナウイルスの影響で業績が悪化しており、コスト削減を進めざるを得ないようです。募集期間は11月16日~12月25日まで。特別退職加算金の支給や希望者への再就職支援などを実施するとのことです。9月中間連結決算の純損益は217億円の赤字(前年同期は98億円の黒字)に転落しています。娯楽施設を運営する連結子会社セガエンタテインメントの株式の85.1%を遊技機器関連のGENDAに譲渡し、国内のゲームセンター運営事業から年内に撤退するとのことです。
ローソンやレッグスのころにビジネスにおいて大変お世話になった2社のニュースに改めて心を痛めています。


■ まずは配信から頑張る 日清パワーステーション復活

第二次バンドブームの1988年3月に開業、98年6月に惜しまれながら閉鎖した東京・新宿のライブハウス「NISSIN POWER STATION」が22年ぶりにREBOOT(再起動)すると日清食品が発表しました。日本初の配信特化型ライブハウス「日清食品 POWER STATION[REBOOT]」として11月21日にオープンしています。
かつて日清食品の東京本社ビル地下で運営されていた約700人収容の「日清パワーステーション」は、ディナーしながらロックできる「ロッキンレストラン」として、閉館までの10年間で、27公演を開催した忌野清志郎さんをはじめ、THE YELLOW MONKEY、井上陽水、小田和正、JUDY AND MARY、スピッツ、真心ブラザーズ)、Mr.Children、L'Arc~en~Ciel、LUNA SEAら1600組の総公演回数は3000回以上、総動員数200万人超の伝説のライブハウスとして語り継がれています。私もファンとして通いましたし、いつかは自分のバンドでも上がりたいと夢見ていたものです。
日清食品は「ニューノーマルへの変化が起きている今しかできない、新しいエンタテインメントを提案したい」とかつての「日清パワーステーション」を、スマートフォンやパソコンで視聴する配信に特化した無観客ライブハウスに改装し、「全席、神席。日本初!音楽特化・配信特化・無観客ライブハウス」のキャッチコピーを打ち出しました。常に若者に寄り添い、奇想天外なアイデアも生み出す日清食品さんの魂健在という感じです。
そして、ニューノーマルを標榜するからには、技術革新を一気に投入しています。ステージに設置した透過型LEDバックパネルやLEDフロアパネルに視聴者のチャットが映し出され、ファンの熱量をアーティストに伝えることができます。投げ銭タイプのチャット送信時オプション「ウルトラチアー」を使えば、ライブでペンライトを振って声援を送るかのように盛り上げることもでき、「配信ライブでありながら、まるで実際のライブ会場にいるような“参加感”」が体験できるとしています。「配信するしか手がない」からどれだけ「本当のライブに近づけるか」という前向きな発想での取り組みになっている気がします。また、ステージと同じものをバーチャル空間にもCGで作り上げ、VTuberがモーションキャプチャスタジオから出演することも可能であり、VTuberやアニソン歌手、ボカロPなど、さまざまなジャンルの音楽に触れられるライブハウスとなることを目指しています。
先日、ニュース番組で、前述のTHE YELLOW MONKEYの東京ドームライブの様子が取り上げられていました。会場に行けたとしてもマスクをして声を出せないのが現状。バンドが何かファンのためにと考えて行ったのが、事前にオンラインで、みんなでいつもは合唱する「バラ色の日々」を歌ってもらい、それを集めて当日の楽曲の中で流すというアクションをしました。テレビを見ているだけでも目頭が熱くなりましたが、会場のファンの方々から感動の涙が溢れていました。ニューノーマルという言葉は少し感情が希薄な気がしますが、こうした1つ1つファンのことを考えたアイデアが集積されていくところに回復のヒントがあると感じます。


■ 老舗のロフトが立ち上がる 配信イベント会社に生まれ変わる

新型コロナウイルスの感染拡大のなかで、初期に“クラスター”が発生した場所といえばライブハウス。以降、ライブハウスは危険という過剰なニュースのトーンにより、アーティストそのものの気持ち、そしてファンを心配するアーティストの不安、なによりもライブハウスが、クラスターをだしたら自分の店舗もアウトだけれども、業界全体に迷惑をかけてしまうという不安の中で打ち手もなく時間が過ぎてきました。いまだ営業再開できない店も多くあります。知っているライブハウス、出演したことがあるライブハウスの閉店のニュースはつらいものです。そんな中でも、新しいことに挑戦して話題を集めているのが、老舗・新宿ロフトをはじめ直営10店舗の会場を持つ『ロフトプロジェクト』です。私にとってもバンド時代は、憧れの場所であり、有名なミュージシャンもたくさん輩出してきた老舗です。10店舗の家賃は毎月1300万円。どうしたらいいかではすみません。この苦境にオンラインイベントを月200本以上開催する配信イベント会社として生まれかわっていました。
ライブハウスというとミュージシャンのライブという印象ですが、ロフトはトークライブハウスも運営しています。音楽系はなすすべがなく時間が過ぎましたが、トークライブの方は無観客の有料配信はなんとかできていたとのことです。3月から試行錯誤をしながらナレッジを貯め、最近では月に200本以上の配信イベントができているそうです。そのためには無料配信で行っていたレベルの画像ではだめで、新しい技術をどんどん吸収して今に至っているのです。たとえば、チケット販売を兼ねた配信サービス「zaiko」では、終演後も保存された映像を見るためにチケットが買えます。終演後でもチケットが売れる…画期的です。また、声優さんのイベントでは会場座席数の7倍くらいの人数が見てくれたイベントもあったそうです。ライブハウスのキャパとは関係ない広い空間があるわけです。確かに私もオンラインで講演した時に、メキシコ、熊本、苫小牧の方が参加していてびっくりしたことがありました。「オンライン配信しか手がない」と考えがちですが、「来れない人にも届けられる」というメリットを生かすにはどうしたらいいか という発想も出てきます。ファンの方々も家にいる機会が増えました。日本全国のファンが楽しみにしていて、一日数回の配信で最大の集客もできるわけです。発信側としても、地方や海外からのゲストを呼びやすくなったことにより、ステキなコラボも実現しています。
野球やサッカーの規制が少しずつ緩和されてファンも楽しそうです。声は出ちゃってますね。それに比べるとロックや格闘技はまだまだ監視の目が厳しいです。プロレスなどは、悪役が反則しても、正義の味方が挽回しても拍手のみで対応しています。ファンも叫びたいでしょうね。ファンも騒ぐことで業界が立ち上がれなくなるので我慢して応援しているのです。マナーが浸透するのが日本のいいところかもしれません。この時期を乗り越えられるからこそ、会場でライブを新しい形で楽しめる時も来ると思います。元の形ではなく、新しい形を楽しみたいですね。音楽好き、ライブ好きのみんなは、タピオカ店のように、儲からないから他の業態転換といいわけにはいきません。絶望が希望に変わるためにも、チャレンジとナレッジの共有が必要になっています。みなさんも何よりもかわいい作品を多くの人たちに届けたいですよね。Spinartもサポートしていきます。

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