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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝競合と協業の両立〜チケットエージェンシー共通基盤構想への期待

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
22回目のコラムです。今回は、先日発表されたチケットエージェンシー大手の「株式会社イープラス」「ぴあ株式会社」「株式会社ローソンエンターテインメント」が非営利の組合を組成して、チケット票券業務の共通基盤の開発に乗り出すことについて記します。


■ 競合である大手チケットエージェンシー3社が、大変な作業である票券業務の一元管理に乗りだした

私が、ローソンのエンタテイメント本部長をしているとき、そしてローソンチケット(社名は株式会社ローソンエンターメディア)の社長をしているとき、数万社に及ぶイベント主催者の各イベントの票券業務への労力は大きな課題でした。大手3社はその同じ作業をそれぞれがやっていたわけです。当然3社は競合関係にあり、ローソンチケットはローソン、ぴあはセブンイレブン、イープラスはファミリーマートと出資関係における競合環境があり深い溝になっていたわけです。ライブの現場では3社とも将来を語り合うなど和気あいあいとしているのですが、コンビニエンスストアにおけるエンターテインメントでの集客というミッションがある以上、できれば独占販売を狙う競合同士になってしまうのです。票券業務を1本化するという話は、「できれば理想」という思いは各社ありましたが、競合関係である以上なかなか進みませんでした。票券業務とは、各チケットエージェンシーへの配券枚数が確定すると、その座席管理・販売枚数管理をしていくことです。野球場などは分かりやすいですが、ライブの特設シートや、招待用のシートなどほぼすべてにイレギュラーがあり、間違ってしまうと2重発券などのトラブルになってしまう非常に繊細な作業なのです。また、先行受付・一般受付、インターネット先行販売、クレジットカード会社優先販売など販売方法も驚くほど多岐にわたります。また効果的に販売するためにはイベント内容の書き方にもこだわります。そしてフェスなどでは少しずつ発表される大物アーティスト、またはアーティストの来日中止など様々なアクシデントもあります。コロナ禍においては、来場の上での諸注意、キャンセル手数料など、主催者とカスタマーの間で奔走することになります。主催者もこの業界を引っ張ってきたイベンターやスポーツ球団のような存在から、県職員が企画したイベントや小さいライブハウスまであります。システム登録ですべて動いているのならいいのですが、電話・ファックス・メールなどで頻繁に修正が入ります。入るならまだいいのですが連絡を忘れているために当日大混乱になるなどのことも起こります。


■ これはチケット業界の働き方改革である

この10年来ライブエンターテインメントビジネスは常に拡大を続けています。書籍や音楽が電子化されても家でライブを観るだけでは体感できないエネルギーがあるからです。拡大し続けるマーケットに対し、スマホ完結も含めて手法は複雑化するばかりです。そして各社のシステムとの連動において膨大な手作業が発生していました。大きな対策をとるというよりも、目の前の膨大な作業を人力でこなし続けてきたのです。そしてコロナ禍で市場が一気に冷え込んだ今こそ、必ず復活する市場に対し、まさに投資のタイミングであったとのことのようです。私の在職時代も、3社で同じことをやり続けることへの改革の必要性は感じていましたが、何年もかかってようやく本腰が入りました。そしてコンビニエンスストアに影響を受けるチケットエージェンシーが、手を組んだことには大きな意義があると感じています。この効率化によって、ライブエンターテイメント業界への貢献に資金を回すこともできるでしょうし、票券業務だけでない開発にも期待が持てます。


■ しくみはどうなっている?

サービス開始の目標は2022年春で、イベント主催者に向けて無償提供されるしくみだそうです。3社で8億円を拠出して組合「TAプラットフォームソフトウェア共同事業体」を組成し、チケット業務のイベント情報管理システムを開発します。これによりチケットに関するすべてのデータをプラットフォーム上で一元管理できるようになる。チケットエージェンシーは、イベント主催者から発券手数料をいただきます。イベントキャンセルが起こった時には返金手数料もいただきます。いわゆるシステム利用料です。それに対してこの構想は事業収益を目的としたものではないので利用は無償提供となっています。組合という形にしたのもこのコンセプトの表れです。このシステムをイベント主催者が活用することでチケットエージェンシーだけでなく、イベント主催者側の管理も負担が減っていきます。国内流通のほとんどのチケットに活用されればメリットが大きいですね。さらにこのしくみは他のチケットエージェンシーも利用できるオープンプラットフォームとしていく予定になっています。


■ さらに期待したいこと

私が、ローソンのエンターテインメント統括をしているころからの悩みがあります。たとえばLoppi限定のキャラクターグッズや、ローソンのキャンペーンでの限定グッズ、そして店頭でのキャラクターグッズなどに転売ヤーと呼ばれる人たちが買い占めてしまい、ファンの人や、アニメを楽しみにしているキッズたちの手に渡ることがなくなってしまうことです。私の思いはほんとうに好きな人に世界で唯一の企画を手に入れてほしいということなので、即日にヤフオクなどに売りに出されているのを見ると悲しい気持ちになっていました。チケットもそうです。人気アーティストのチケットが、何万円もの価格で高校生が買わされているなどつらいことです。今、マーケットをつかんでいるメルカリは、ほしい人に適正価格でお譲りできていることを感じますし、一方で高額販売の温床になってしまう一面もあります。そういう時代でもあるのでしょうけれども、ほしい人に適正価格でお譲りできるという理想をあきらめてしまってはいけないと思っています。
この構想が発展して、作業の軽減化だけではなくて、アクシデントで行けなくなってしまった方のチケットを等価で行きたくても取れなかった方にお譲りできることなどができるとほんとうにステキなインフラになると感じます。また、なかなか満員にできない興行については、配券での売り切りだけでなく、チケットエージェンシー全体で見て会場を埋めていくような動きも期待したいところです。競合と協業、厳しい時代だからこその両立に期待しています。

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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