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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝業界を支えてくれている人々のことに思いを馳せる

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
30回目のコラムです。今回は、先日ある劇団の主幹の方とオンラインで話す機会があり、そこで改めて理解したことを共有します。


■ ゴールデンウイークに渾身の芝居を観に行く予定でした

再び緊急事態宣言が発せられました。酒の提供がNGとなり、飲食店がどう困るかというニュースがずっとテレビから聞こえてきます。楽しみにしていた劇団の芝居についても、劇場への行政からの通達、お客様からの問い合わせやキャンセルなどが重なり延期の連絡が来ました。お誘いいただいた劇団の方は旧知の仲で、一緒に年1回DEEP PURPLEの曲などをやるバンドで共演させていただいています。デザイナーの奥様もよく知っていて長いこと顔を見ていないのでオンラインで近況を語り合いました。奥様が教えている美大の授業のこと、私が教えている高校の授業のこと…そしてご本人がちょっと遅れて参加されましたので、「今回の延期残念ですね…」から会話がスタートしました。
演劇は、稽古に稽古を重ねてストーリーを磨き、出演者の息を合わせていきます。開演日にかなりベターな状態に仕上げ、公演中にブラッシュアップしていきます。「公演の中止というのはコロナ禍でなくてもあり得る話なんですが、雲行きが怪しくて覚悟している場合と、ぎりぎりまで来て中止になるのでは役者のモチベーションは全く違う」とのことなのです。
演劇に限ったことではないと思いますが、私のようなものがやっている講演とは全然レベルが違うと思います。役者の皆さんは、稽古に打ち込んでいることもあり、ただし、まだ役者としての収入では生活できないため、アルバイトをしている人が多くいます。公演に向けて稽古しているときはアルバイトのシフトを減らして打ち込みます。飲食店などのアルバイトが多いようです。
コロナ禍では、公演が中止になっても飲食店のシフトが復活することもなく困惑している人も多いと聞きました。また、劇場からは「延期ということにしてキャンセル料は取らないから、落ち着いたら演ってください」と言っていただいたとのことです。
経営も苦しいと思いますが、役者たちを、そして文化を守るという熱い心がそう発言させているのだなあと思います。すぐに「配信すればいい」という意見も外部からは言われるそうですが、やはりリアルの芝居での伝わり方は全然違いますね。以前、ライブハウスの配信ビジネスについてコラムにしましたが、トークライブが主流で音楽ライブの音質や迫力を伝えるのには苦労しているということも書きました。技術の進歩や工夫で、withコロナとしての発想が重要ということも重々承知していますが、ファンとしてはリアルの上演を待つばかりです。


■ イベント会社の重鎮にも聞きました

イベントの中止に関連したたくさんの事業者は、急に発注がなくなってしまい、当然お金が回らなくなってしまいます。
ライブエンターテインメント業界が産んでいる雇用の数はとても多く、アーティスト自身はもちろんですが、そこに紐付いている膨大な数の雇用が失われているわけです。
フリーランスでコンサートの警備や整理、搬出搬入の仕事をしている人もたくさんいます。ケータリング会社やアルバイトの学生もいる。みんな仕事がなくなってしまう。「ミュージシャンがライブできなくて大変だ」という見方をする人が多く、もちろん大変なのですが、そのイベントに従事している人が日本の経済を下支えしていると言えると思います。
それにツアーやイベントは地方創生にもつながっています。ここまで含めてライブエンターテインメント業界と見ないといけないと言うのです。イベントが行われないので、舞台を作ってきた鳶職の人たちが、音楽の仕事がゼロになって、みんな建築業界に回ってしまったとのことです。建築業界も人手が足りないし、鳶職の人にとっても生活の安定も含めて定着してしまう傾向になります。そうなるといざコンサートを再開した時に舞台を作る人が集まらないことが容易に想定されるそうです。
コロナ禍においてライブ配信という形が広がりました。苦肉の策として始まりましたが、以前にもコラムで書きましたが、「仕方なく配信」ではなくて「配信だからこそできること」を模索することが大事だと思っています。ただし、こういった配信ライブでは、ライブエンターテインメント産業の雇用、フリーランスや事業者の仕事の創出にはなかなかつながりません。サザンオールスターズのように「雇用を守る」と桑田佳祐さんが言って行っている配信はありがたいことですが、採算も考えるとどのアーティストもできることではありません。通常はお金もかけずにミニマムな形でやっています。アーティストはそれでも発信しなければ存在できません。


■ 業界を支えてくれている人々のことに思いを馳せる

テレビで見ている困っている人、たとえば飲食店のニュースに、生産者の方、メーカーさん、酒屋さん、おしぼり業者の方、多くの方に支援が行き届きません。
ライブエンターテインメント業界も同じです。業界団体も声をあげていますし基金を設立するなどの行動も出ています。政府への働きかけも行っています。
エンターテインメントはいつの時代も多くの人の心を癒します、揺らします、明日への勇気をくれます。アプローチすること、声をあげること、少しでも施策を積み重ねること、とても大事だと改めて思った瞬間でした。
コロナ禍では最初に打撃を受けて、最後に回復するのがライブエンターテインメント業界だと言われてます。ワクチンと治療薬ができて、心の問題まで回復して、初めて完全復活と言えますが、まだまだ長い闘いですので今回は支えてくれている人々まで関心を持つ大事さに触れてみました。

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野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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