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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝明るく、激しく、新しく、そして美しく! 輝く女子プロレス団体スターダム

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
32回目のコラムです。今回は、日本の女子プロレスの最高峰スターダムの後楽園ホール大会に行ってきましたので、そこで感じたことを企業の人材育成と照らし合わせて書きたいと思います。


■ スターダム

この団体のキャッチフレーズは、「明るく、激しく、新しく、そして美しく! 輝く女子プロレス団体」。
過去女子プロレスと言えば、クラッシュギャルズや、ダンプ松本、ブル中野、ジャガー横田、北斗晶といった昔を知らなくても今もタレント的に有名なレスラーたちが一世を風靡していたことが思い起こされます。健気な正義チームと悪を尽くす悪役軍団が抗争しながらファンを煽っていくスタイルでした。
この全日本女子プロレスが崩壊し、新しいうねりも含めてたくさんの団体が乱立することになります。
週刊プロレスの団体紹介を見るにつけ、スターダム、OZアカデミー、センダイガールズ、アイスリボン、WAVE、ディアナ、我闘雲舞、SEAdLINNNG、アクトレスガールズ、東京女子、PURE-Jと実に11団体もあります。さらに各団体の台所事情も明るいものではなくフリーの選手も多数存在します。そして男子団体の女子部という存在もあり、プロレスにありがちな散財が起こっています。
そんな中でスターダムは、技のクオリティ、ユニット抗争、美しい選手のスカウト・育成を進めトップランナーです。新日本プロレスをM&Aしたブシロードがそこに目をつけスターダムも傘下に収めました。
ブシロード会長の木谷さんは当時「世界のトップ団体であるWWEは、男子のプロレスも女子のプロレスもそれぞれのストーリー設定の下、1つの興行で行われ、そのパッケージで世界をツアーしている。それが世界標準の考え方だが、日本は遅れている。世界と太刀打ちするなら重要なことである」とお話しされていました。すでにアニメやゲームで世界と勝負しているブシロードですから、視野が世界に及んでいます。
ことプロレスについていうと、日本のプロレスは、アメリカのプロレスのエンターテインメント路線のストーリーと比較すると闘いのストーリーが強く、実は世界のプロレスラーは日本のプロレスの配信で勉強している人も数多くいるくらいです。新日本プロレスが、ブシロード傘下に入り、配信ビジネス、グッズビジネス、レスラーキャラクターブランディングが本格化し、コロナ禍前ではチケットが取れないほどの人気となっていました。また、配信ビジネスに力を入れてきたため、海外興行でもすでに世界観やレスラー個人のキャラクターまで理解しているシーンがたくさんありました。
スターダムでも、個人個人の個性・美しさ・かわいさ・ひたむきさ・強さを確立し、配信ビジネス、グッズビジネス、クロスメディア戦術が大きくレベルアップしました。現時点では女子プロレスの中では圧倒的な立場にあります。
この日の後楽園ホール大会でも、女子プロレスらしい華美なコスチュームやパフォーマンスとともに、基礎の基づいた激しいプロレスが展開されていました。


■ 新陳代謝

かつてのスターダムには、紫雷イオ、宝城カイリといったスーパースターが観客動員をしていましたが、前述のアメリカのプロレス団体WWEに引き抜かれ窮地に立つことになります。しかし、それが下にいた選手たちの奮起を呼び一気に多くのスターが生まれることになります。スカウトも含めて、ピンチのタイミングにたくさんのスターの芽がいるかどうかが団体存続の分かれ目になります。ここがインディー団体との差別化です。
同じブシロード傘下の新日本プロレスも選手の大量離脱やWWEからの引き抜き後も着実に若手選手がメインイベンターになっていきます。以前のコラムでも書きましたが、企業と同じで、ブランディングによって有望な人が採用ができること、新陳代謝が起こって上が辞めても下が力をつけて上がってくるとことがあれば、企業は成長続けます。これをリクルートに結びつけてみましょう。
リクルートは、入社するほぼ全員が何十年も在籍することなく卒業していきます。転職・起業…そもそもそういうつもりで入社しています。
マーケティングやエンジニアリングは、流行とは別に技術的に以前よりも速いスピードで進化していきます。20年目の人よりも最近入社したIT人材の方が世の中の流れをつかみ、技術やアイデアを使っていきます。それが企業の力を強化していると思います。そして、退職でなく卒業と書いたのは、卒業後もリクルートとの協業や情報交換が終わらないからです。
そんな新陳代謝を新日本プロレスやスターダムに感じます。次から次へとヒーロー・ヒロインが生まれてくるのです。つまり採用できる力がないとこの新陳代謝が起こりませんし、新陳代謝への危機感がベテラン選手のレベル向上・ブランディングにも影響していきます。


■ 民放はまだまだ活用できる

以前のコラムで、民放に残った新日本プロレスと、CS有料チャンネルに移行したF1について書きました。
既存ファンはとても大事なエンジンですが、新規ユーザーは成長には不可欠です。そこに民放の価値がまだあると感じます。
新日本プロレス同様、スターダムもBSながら民放に番組を持っています。偶然見ることもありますし、ちょっと興味を持った時にお金を払わなくても感じることができるわけです。そして予備知識をベースにライブを堪能します。
この2つの団体の番組は、ブシロードプレゼンツなわけです。プロレスラーが社長になり、谷町さんにお世話になってやってきた業界ですが、一部上場企業の資金とノウハウとコンプライアンスのもとに成長を遂げる良い事例になっていくと思われます。
インディー団体でも、DDTとNOAHという2つの団体の親会社としてサイバーエージェントが名乗りをあげました。資金だけではなく、クオリティの向上や戦術面でのプロフェッショナルなサポートが期待されます。そして、日本の中で生き残る→日本の中で勝つ→世界に打って出るという発想に変わっていくことが期待されます。
できることをやるというスタンスから、大きな目的に向かってゴールから考えて積み重ねていくという転換はパラダイムシフトと言えるでしょう。今後も注目していきたいと思います。

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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