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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝デジタル化とDX

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
40回目のコラムです。今回は、TVやネットにあふれてきた「DX」について触れてみましょう。


■ Spinartをもっともっとよくするために

私は、あらゆる表現者・アーティストと出逢えるサイト「Spinart」を運営する会社:株式会社4DTに近年合流しました。この会社の代表である木村氏・清水氏は、リクルート出身であり、アーティストでもあります。アーティストであるみなさん同様、早い技術の流れにも敏感にチャレンジをしています。その好奇心旺盛で研究熱心なアティチュードは素晴らしいと思っています。アーティストのみなさんにとって役に立つにはどうしたらいいかを日々考えています。一方で、ボランティアではないですから持続できる事業を目指さなければ、ずっとアーティストをサポートし続けることはできません。
先日、江の島にある本社で合宿を行いました。
「誰をどうやって幸せにするのか」「誰のどんな負を解消してあげるのか」
「誰のどんなステキを拡散してあげるのか」いわゆるミッションの再確認です。ファンが心を揺らしてくれるアーティストに出逢うこと?アーティストがコラボして行き詰っている現状から飛躍することができるプラットフォーム? 検索サイト? 紹介サイト? ステキに出逢えるコミュニティ?」
どんな要素も必要なものなのですが、300を超えるアーティストに登録してもらっていますので、先に進むためのスモールスタートである一歩を共有するよい機会となりました。進化していくSpinartにご期待ください。また、みなさんのアイデアもぜひ吸収していきたいと思います。


■ 「DX」って言葉がテレビでもネットでもやたらと出てくる

DXとは、デジタルを活用して圧倒的かつ優れた顧客体験を提供し、事業を成長させる(稼ぐ・儲ける)ということでしょうか。前述したSpinartをどうしていくのかを考えることにもまさに当てはまります。みなさんが働いている企業や、おこなっているアーティスト活動にも通じるものがあります。
ビジネスでは、社内の手作業を代替するビジネスソフトウエアの導入が当たり前になってきました。これによって別の組織や、現場ともつながり効率化が進んでいます。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsof)だけでなく、BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)も含めて、自分たちの産業に全く新しい競争原理が持ち込まれ破壊される危機感が現実化しています。さらにコロナ禍によって働き方やイベントの在り方など変化を加速することになりました。オンラインツールを入れて煩雑な業務がシンプルになったというようなデジタル化のことをDXと呼んでしまっているケースも多いようです。効率化したらコストが下がった、やるべき業務に集中できるようになった…これで事業は成長するでしょうか? デジタルを武器に顧客を知る、顧客に特別感を持ってもらう、顧客に知らせる、顧客にステキを拡散してもらうことができるようになることが大事で、それをDXと考えます。


■ 株式会社Kaizen Platform須藤憲司社長

さて、Spinartの会議に向かう途中、駅の本屋さんに立ち寄りました。私も代表2人とともにリクルートにいたのですが、私のリクルート時代に最後に採用した青年が須藤さんです。短い交流だったのですが、とことん現場を回った人はヒントの宝庫を持ち、発想がどんどん沸いてくるという教えを実践して圧倒的な功績を残した彼が米国で立ち上げ日本法人もマザース上場を果たした会社が株式会社Kaizen Platformです。
この本屋で見つけた須藤さんの著書「総務部DX課岬ましろ」はちょうどDXについてやさしく解説してくれていました。よいタイミングでした。4DT代表の木村氏とも親交があるようで、数年前の私の結婚式でも3人は会話を弾ませていました。
彼が、冒頭からエンディングまで常に言っていることは、
「DXで大切なことは目的と課題の正しい設定をすること」
ドラッガーの5つの問い「我々の使命は何か」「我々の顧客は誰か」「我々の価値は何か」「我々の成果は何か」「我々の計画は何か」を常に明確にしておくこと。
ツールなどはそれを実現する道具なのです。そして成功の秘訣は、泥臭いことも厭わないこと、そしてコミュニケーションのポテンシャルを最大化し、多くのカスタマーの声を入手すること、前述したデジタル化=DXという罠にはまらないことだと書いてあります。デジタル化とは、業務プロセスを最新の技術で用いてより便利に進化させることを言います。たとえば、コンビニのレジは、サービスが多様化し、外国人の従業員も増えていることから、どんなサービスでもすべてバーコードをスキャンすればサービスが終了するように進化しました。ここで止まってしまってはDXが実現できません。スムーズなレジでできることではなく、わざわざ来店したい体験の開発が肝となります。話題のスイーツが買えることかもしれませんし、店舗でキャラクターがARで登場することかもしれませんし、限定チケットが入手できることかもしれません。
業務プロセスのDXができたら、提供価値のDXに進まないといけません。デジタルによる顧客体験の変革によって儲けることが目的です。Spinartの進化もこれを意識してみなさんと作り上げていきたいと思います。


■ 顧客って何だろう

企業やサービスだと、購入者・利用者とわかりやすく語れます。アーティストでも、視聴者・作品購入者・ファン・来場者など本質的には同じなのですが、菓子のパッケージやビールのTVCMなどのようには考えにくいので堂々巡りしがちです。わざわざ来る理由・わざわざ買う理由を考えるにあたり顧客目線を意識してみましょう。いつも来てくれるファンの方、時間や場所の制約から来るのをあきらめている人、勇気がなくて1歩踏み出せずにいる人、アーティストそのものを知る機会がなかった人、いろいろな人がいます。これらはファンになる可能性のある人です。作品を見たい・聞きたい人、ライブに行きたい人・そこまででは思わない人、グッズも欲しい熱狂的な人・グッズまではいらない人、自分だけではなく人にも伝えたい人、熱狂的で他は見ない大ファン・目の前のアーティストだけではなくて複数のアーティストを感じたい人、コラボがステキで涙ぐんでしまう人、過去までさかのぼってアーティストを感じたい人。たまには顧客目線に立ってみて考えてみるとヒントが出てきます。


■ キャッシュポイントをとらえる

従来のマーケティングにある「交換価値」としての「モノ」や「コト」。作品を創り届けること。DXによってこれに「体験価値」を加えることがマストになってきました。こちらからの発信であるライブや動画、作品などのコンテンツ、さらにはメイキング映像や、作品のヒストリー。これに加え、振り付けとか演奏方法とかを教えるといったコミュニケーション、そして、交流できるファンクラブのようなコミュニティの進化が成功のカギの1つかもしれません。お金を払うタイミングや体験が求められているのです。わざわざ来る理由・買う理由です。体験のリッチ化には、デジタルとリアルの境界が曖昧になることをめざすことが大事なようです。そしてその先に体験のパーソナライズ化、いわゆる「あなただけに体験いただけます!」ですね。熱烈ファンになってもらうことでビジネスも成長し、そして長いファンになってもらうことで継続的なビジネスになる。ビジネスという言葉を使うと違和感が出るかもしれませんが、「ファン作り」のことを言っています。


■ アーティストに関係しそうな事例も紹介されていました

この本には、面白い事例が紹介されていました。ロック関係の方ならよく知っているギターのフェンダー社の事例です。ギターのeラーニングアプリを開発しました。ギターは、購入者の半分が初心者だそうです。そのうちの9割が1年以内にギターをやめてしまうそうです。残った1割の人が生涯で5~7本のギターを買う。このギブアップ率を10%下げることで継続的なビジネスが実現できると考えてのアプリ開発だったようです。リリース3年で100万ユーザーを獲得し、業績は向上しているとのことです。
2020年のNHKの紅白歌合戦では、その年のCD販売額トップのAKBは出演せず、CDを出していないYOASOBIが出演して話題をさらいました。グローバルのデータを見ても、ここ10年で、パッケージは目も当てられないくらい大幅に減少しています。そしてダウンロードも少しだけマーケット創造をしたのち、大きくなることはなく減少を続けています。マーケットを大きく変えたのは、ご承知の通りストリーミングで、もうすでにマーケットの大半に成長しています。CD購入派の私としては、好きなアーティストの新作がストリーミングのみであったり、CDショップがなくなってしまったりということが恐ろしいです。

DXについて簡単に書き進めてきましたが、道具が変わる→環境が変わる→ルールが変わる→未来が変わるということを理解してきました。みなさんも、変化を受けて対応しているのだと思いますが、対応することと、それを活用して進化することでは、届く未来が違ってくる気がします。ミッションの確認、顧客目線の確認と、技術・ツールを面白く活用することでみなさんのステキをたくさんの人たちに楽しんでもらいましょう。

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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