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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝次々にチャレンジする新日本プロレスのデジタル戦略

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
41回目のコラムです。今回は、以前から何度かレポートしているブシロード傘下となって大きく飛躍した新日本プロレスの多種多様なコンテンツビジネスを垣間見てみましょう。


■ ブシロードの中でも重要なコンテンツである新日本プロレス

以前にも書きましたが、大のプロレスファンでもあるブシロードの木谷会長が、新日本プロレスを取得した時、プロレスの世界しか見てこなかった人たちではできないことがたくさん起こる気がしてうれしく思い、すぐに手書きの手紙を木谷会長に送って、その後、お会いさせていただきました。
以前からプロレス団体のオーナー企業はいくつも存在したのですが、現場やレスラーと合わないとか、お互いに信頼感が生まれないとか、意気投合しているのだけれども資金が続かないとか、なかなか企業としてのマネジメントが機能しない時代が続きました。
そこで上場企業基準を持ったコンテンツビジネスの雄ブシロードという際立った企業が名乗りを上げてくれたことに大感謝しました。低迷していた新日本プロレス、そしてプロレス界のキャラクター=選手の個性を定義し、十分な広告宣伝にて再度、往年のプロレス人気を取り戻すことに着手したのです。コンテンツビジネスに精通した社長が就任し、ブシロードの企画制作部隊が投入された結果、はっきりいうとあまりレベルの高くなかったグッズも、どんどんほしいものに進化しました。
また、コンテンツビジネスの雄アミューズの相馬氏をブランディングのプロデューサーに迎えたことも大きな意味があります。相馬氏は私がローソンチケット時代の大事なパートナーで、そして彼もプロレスの大ファンです。そして配信ビジネスを一気に拡大したことで、コロナ禍でも世界中のファンとつながっていられる環境を早々に創りあげていたことは大きな成果でした。
また、世界トップの団体WWEは、男性レスラーも女性レスラーも当たり前のように同じ団体に所属し、スーパースターとしてプロレスだけでなく社会貢献でも大きな活躍をしています。木谷会長も日本ではトップの女子プロレス団体スターダムも取得し、2団体でのコラボレーションもスタートしています。


■ 配信ビジネス

新日本プロレスワールドという月額999円の主要な大会を生中継し、見逃し配信も可能なビジネスを世界に向けてスタートさせました。ここでしか見られないオリジナル映像、過去の激闘・熱戦・名勝負、完全密着ドキュメンタリーや独占インタビューなど新日本プロレスワールド限定の貴重映像満載にして配信しています。さらに、NJPW STRONGという新日本プロレスのアメリカ支部の試合の様子の配信も始まりました。この両方の配信に登場するレスラーが、両国を行き来して新鮮なコンテンツが成立するようになってきました。
さらに前述したスターダムもスターダムワールドという配信番組をスタートしています。こちらは試合以外にも選手の素顔がわかるおもしろいプログラムも満載になっています。日本選手が海外に出場するときの人気はもはや配信で知っているのでブランディングがいらないくらい認知されており、鈴木みのる選手の登場曲を日本語で歌うアメリカやイギリスの観客の姿は圧巻です。


■ さらなる動画配信

新日本プロレスリング株式会社のYoutubeのチャンネル登録者数は 45.7万人です(2021年10月現在)。
試合の動画はもちろん、バラエティ色の高い動画や、獣神サンダーライガー、矢野通、高橋ヒロムなどしゃべれるレスラーたちのYoutube番組も人気を博しています。
ブシロードからは、2団体のどの選手にもSNSを積極的に使うように指示が出ていて、昔のプロレスラーはみんなガラケーだったことなど忘れたように発信しています。とくに、Twitterでは、試合前のツイート攻撃や、来場への感謝など闘いのストーリーを助長するようなやり取りも多く行われており、ファンは、試合前から闘いを楽しむようになってきました。


■ 闘魂SHOP

以前は、後楽園ホールなど水道橋に行けば新日本プロレスグッズショップがあると押し掛けたものです。また、観戦によって気持が高揚したファンはグッズが買いたくなるし、好きな選手の応援グッズを身に着けて観戦することでエンターテインメントな感情が爆発していきます。相手選手にそのアイテムをいじられたりしながら楽しい体験をします。コロナ禍で、そしてそうでなくても、EC化は必然の流れです。新日本プロレスリングで開発した関連グッズをインターネットで購入することができる新日本プロレスリングオフィシャル・ショッピングサイトとしてオンラインでもオープンし、人気となっています。


■ 新日本プロレス公式スマホサイト

最新NEWSから大会情報・試合結果がいつでもどこでも見られる公式スマホサイトもオープンしました。月額330円です。試合速報として、全試合結果を一番早く伝えてくれます。試合経過、写真はもちろん、試合後のコメントなどもいち早く見たいファン向けに作られています。さらに、選手自身が執筆した、入魂の選手日記では、選手の思いや裏話が掲載されており、各曜日の担当レスラーが決まっています。選手自身が執筆した日記はスマホサイトのオリジナルコンテンツになっています。以前は、「自分はプロレスに集中していればいい」「試合後はプライベートを大事にしたい」という感じでしたが、大会がコンテンツであると同時に。個々人のリング外もコンテンツであるというあたりは、ブシロードでなければここまでできないのではないでしょうか。


■ 新日コレクション

スマートフォンアプリ「新日コレクション」が、正式サービスを開始しました。新日本プロレスの選手カードの収集ならびに,公式サイトやSNSにアクセスして,最新情報をコレクションできるアプリになっています。さらに,試合会場でチェックインすると,ギフトをもらえる機能も搭載されています。今後は,思い出深い名シーンや,リアルタイムで繰り広げられる戦いと連動したカードが続々登場予定です。


■ 新日本プロレスSTRONG SPIRITS 事前登録受付中!

さらに大会の休憩中や配信の宣伝部分でも繰り返される新企画の告知。スマートフォンゲームアプリ『新日本プロレスSTRONG SPIRITS』が、2022年初旬世界同時リリース予定とのことです。


■ 新日本プロレスOFFICIAL FAN CLUB Team NJPW

ファンクラブの特典を見てみましょう。
特典1:メンバーズカードIC会員証には会員番号、氏名が印字されます。
また、IC会員証やチケットが入るオリジナルチケットファイルもプレゼント!
特典2:チケット先行予約、どこよりも早く大会チケットを予約できます!
一部大会は、オリジナルデザインで発行し、ご購入者の会員番号、氏名が印字されます。
特典3:撮影会。
各試合会場にて、選手と写真撮影が出来ます。
特典4:会員限定イベント。
ビッグマッチの前夜祭、大会後のファンイベントなど会員ならではのイベントに参加することができます。
特典5:Team NJPW magazine(会報誌)を年3回発行。
写真はすべここでしか見ることが出来ないて撮り下ろし。
特典6:2020年度よりTeam NJPW会員継続手続きをされた方全員に、継続特典として『Team NJPWオリジナルラバーバンド』をプレゼント。
特典7:グリーティングカード。
新年にオリジナル年賀状をお届け。
特典8:Team NJPW会員しか手に入らないオリジナル限定グッズを販売。
アミューズ公式オンラインショップ 「アスマート」の新日本プロレスリングSHOP内で販売します。


■ 企業とのコラボレーション

10月にファッションセンターしまむらとのコラボの秋の新作アイテムが発売されています。今回の新作は、トレーナー/パーカー/パンツの3種類、それぞれ2デザインずつになっています。新作ということなので、このコラボは継続されていくと思われます。

9月には「新日本プロレス エムアイカード」の会員の募集がスタートしています。イメージキャラクターとしてオカダ・カズチカ選手を起用し、キメ台詞「カネの雨が降るぞ」にちなみ、一般カード、ゴールドカードの2種類となっています。入会特典として「オリジナルジャンボサークルタオル」がプレゼントされます。

7月には、ローソン限定 新日本プロレスグッズが発売されていました。アクリルマグネット全7種、クリアファイル3枚セット全3種、ランチトート全2種、そして、大会会場などで大人気のぴょんすけぬいぐるみのデザインがマグネットになって発売されていました。ローソン店頭の雑誌コーナーや、Loppiでローソングループ限定発売されました。10月には、新日本プロレスくじ第3弾も発売されます。

さすがに、ここまでくるとだんだんわからなくなってきました。新日本プロレスの最新情報を早く知りたい、選手のリング外でのキャラクターが知りたい、という顧客の欲求を超えて、団体の過去を知りたい、オンラインでプロレスラーを育ててみたい、育てたレスラーで世界のファンと戦ってみたい、さらに想像を超えたコミュニティーを期待している…ライトユーザーの獲得、コアファンの欲求を満たす…これからも新日本プロレスの挑戦が楽しみです。
私は、40年以上プロレスを見ていますが、実際の会場での観戦と、新日本プロレスワールドに入会して配信をなるべく生で全部見るのが精一杯です。しかし、同じくプロレスファンの妻は、選手が今日寿司を食べてたとか、お互いのTwitterでの舌戦が面白いとか…リングでないところへの関心も高いようです。全部が成功するかどうかはわかりませんが、1つのコンテンツにも多様なファンがいて、それぞれのニーズが存在し、またそれを理解することで新たなニーズを創り出すことができる。そんなマーケティング視点で見ています。

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