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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝水害で大きな被害を受けた人吉・球磨地方を訪れました

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。 45回目のコラムです。今回は、みなさんの記憶にも新しい熊本県で発生した球磨川流域の水害に苦しめられた人吉・球磨地域から依頼された講演について報告します。


■ 人吉・球磨地方について

以前のコラムでも熊本県の県南フードバレーでの講演についてレポートしました。面積の大きな県ですから、阿蘇などの県北・中心部の熊本市・そして人吉・球磨のある県南とそれぞれに特徴が違います。
人吉・球磨地方は、熊本県南部に位置する人吉盆地にあります。この地を語るにあたってのキーワードとしては大きく2つ、風水と三日月の気(エネルギー)です。その気が溜まる最適な場所は盆地とされています。風水都市として有名な京都も盆地です。人吉・球磨地方も同じく盆地でありますが、三日月の形をしているのがその特徴です。この「三日月盆地」は、鎌倉時代より明治維新まで700年以上にわたり相良家が統治していました。
相良家はその間、域内に様々な結界を作っていきます。結界とは俗域と聖域を区切るラインであり、そのラインの内側は気を取り込める聖なる空間となるのです。身近な例としては、地鎮祭で神主さんが土地の四隅にしめ縄を張ることで、しめ縄の内側は聖域となることを意味しています。相良家はこのように気が溜まるに最適な盆地に結界を設け、聖域とすることでさらに強く気を取り込み、人吉・球磨地方の安定を確保できると考えたのです。人吉・球磨地方を抱く三日月盆地全体に気を行き渡らせるためでありましたが、そのように祈り深い相良家ゆえに人吉・球磨地方を長く護ることができたのでしょう。


■ 球磨焼酎について

今回の講演は、前回の農産物の加工品に続き、伝統の球磨焼酎のリブランディングプロジェクト向けの講演でした。人吉球磨地域に蔵をかまえる27の蔵元は、複数の個性ある銘柄を持ち、すべてをあわせると200以上のブランドを誇っています。杜氏たちの手で丹精込めて作られた球磨焼酎は、 芳醇な香りと深いコクが楽しめるのが特徴で、多彩な味のバリエーションを作り上げています。
「球磨焼酎」は、日本に4つしかない産地呼称が認められた本格焼酎のブランドのひとつ になりました。1995年、人吉球磨で造られる米を原料とした焼酎が正式に『球磨焼酎』として国税庁の「地理的表示の産地指定」を受けました。良質な米と水のこだわりが、球磨焼酎をコニャックやボルドーワインなどと肩を並べる世界的な銘酒へと押し上げています。球磨焼酎の定義は、国産のお米を使い人吉球磨の水を原料として製造し人吉球磨でびん詰めされたものだけが球磨焼酎と名乗ることができます。


■ 人吉・球磨地方を訪れて

前日は熊本市で講演をしたため、当日は早朝から人吉・球磨地方に入りました。まずはこの地の守護神である青井阿蘇神社を参拝。水害で神社の手前の川にかかる神聖な禊橋は、まだ修繕が済んでいなくて壊れたままになっていました。早朝でしたが、保育園の先生と思われる男女と、その間に小さな生徒が2人並んでいて、わずかに訪れる人に元気な声で「おはようございます!」と声をかけていました。こちらも負けずに大きな声であいさつしました。その後、水害によって何が起こったかという簡易な展示場を見学していたところ、また二人の子供の「これで朝の挨拶を終わります!」という声が聞こえました。生徒は二人なのかな…と思いながらすがすがしい気持ちになりました。そしていくつかの球磨焼酎の蔵元を見学させていただきました。その工程の中でまだまだ水害で被害を受けた家々の修復作業や建て替え作業が至る所で行われていることに複雑な思いで見ておりました。東京では、被害の後、すごいスピードで回復していきますが、まだまだ時間がかかりそうです。一刻も早い復活を望みます。道中は、宿泊は「あゆの里」というテレビにもよく登場する有名な宿ですが、食事中にも若女将が「この地域をよろしくお願いいたします」とご挨拶に来られたり、その他にも講演に来られなかった蔵の方が挨拶に来られたりと、地域をみんなで守る空気にあふれていました。この宿も被災していて、今は川を臨むステキな宿に戻っていました。とても大きな川幅と十分な道への高さがある川なのですが、これが溢れて橋も壊すという…どれだけの脅威だったのかと思います。まだまだ立派な箸にも損傷の後がみてとれました。道中でも無数のダンプカーが永遠に球磨川の土を運んでいました。山々からあふれ出す土砂が川にたまってしまい、また2次被害を起こす可能性がありますので、もうのべ1万台のダンプカーが運んでいるようで、まだまだ続くとのことです。宿でも球磨焼酎を堪能しましたが、伝統の米焼酎である球磨焼酎、焼酎におけるの米焼酎の流通シェアは10%程度ということで、まだ知られていない分野になっています。私もつい「芋ちょうだい!」と銘柄も言わずに頼んでしまいます。知った限りはがんばって普及に努めていきます。みなさんも試してみてください。マーケティング的には、この地域の人たちはなぜ球磨焼酎が好きなのか、熊本県の人はどうか、熊本県出身者は今の居場所ではどうしているのか、周囲の人には薦めているのか、そして居酒屋は球磨焼酎を理解しているのか、を追求していかないといけません。

今回感じたことは、ニュースで見た球磨川の反乱と被害、大変だと思いましたが、実際に見てみると想像をはるかに超えるものでした。そして支援のためにいろいろな商品を買うのもとても良いのですが、この地域の商品を買うということにはつながっていない気がします。とことん観察してみることの原点に返ることができました。

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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