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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝ブックオフ創業者 坂本孝さん、ご冥福をお祈り申し上げます

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
50回目のコラムです。今回は、先般ご逝去されたブックオフの創業者坂本孝さんに触れていきたいと思います。


■ ブックオフの創業者・坂本孝さん

「ブックオフ」「俺の株式会社」創業者の坂本孝氏が亡くなりました。81歳でした。
50代で「キレイな古本屋」を創業。お家騒動でブックオフを出た後、70代で、立ち食いの高級イタリアン・フレンチレストランを創業しました。
古本屋は、主人がすべての値決めを自分だけのナレッジで行い、立ち読みをさせず、ほこりっぽい店舗で発展性もなく継続している、どちらかというと暗いイメージの業態。それを、昨日入社したアルバイトでも査定できて、明るく元気に接客して、新刊書店のようにきれいで、立ち読みOKのブックオフを創り、それによってフランチャイズ展開も容易になり、一時は1000店舗になるまでの成長を遂げました。まさに逆転の発想です。

そして内部告発からブックオフを追い出されてしまうのですが、そこからの一念発起の起業が、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」です。
高級フレンチは、少しずつの料理が大きな皿でエレガントに運ばれてきて、19:00に入店したら22:00くらいまでゆったり食事をしてその席はその日1回転というシステムが性に合わなかったようです。それなら立ち食いにして一日4回転できるのではないか。そのかわりとんでもないステキな料理を原価度外視で提供する。そのために有名シェフを引き抜いてきて大きな写真とともに店外に掲出する。たっぷりのフォアグラ1200円などの驚きとともに提供しました。店舗によってはジャズプレイヤーなどの演奏時間を設けたりしました。案の定、16:00には行列ができ、高級料理とともに、ごくごくとワインを何本か飲んで帰っていくグループ。想定通りの展開となりました。これも逆転の発想です。

坂本さんは、天才的にビジネスを発想し、人間力で強く推進していくタイプです。しかし、この2例をよく考えてみると、自分が思ったこと=カスタマーが「負」と考えることをステキに転換していく発想です。つまり、カスタマーはなぜ幸せになるのか、という起点からいつも始まっていたのです。


■ 坂本経営に参加した

リクルート在籍時に半年だけブックオフに研修で出向し坂本さんのカバン持ちをしたことがあります。
当時リクルートでは「アントレ」という企業を志す人たちのための雑誌を発行していました。その時のベンチャーの雄である、ブックオフ坂本さん、TSUTAYA増田さん、HIS澤田さんなどには、多くの若者チャレンジの審査をしていただくなどお世話になっていました。
坂本さんは、リクルート創業者の江副さんを大変尊敬していて、アントレとの関係も深まる中、「リクルートから出向者を受け入れたい」というご要望をいただき、なぜだか数千人の中から私に声がかかりお世話になりました。実はこれが人生が変わる瞬間でした。

坂本さんは、京セラの稲森さんのイムズで経営をされていました。
リクルートでは、目標達成したかしないか、上位にいるかいないか という判断基準で動いてきましたので、「他人に役に立つにはどうしたらいいか」「謙虚にしておごらず」「誰にも負けない努力をする」という社風に圧倒されました。
まだ社員が250人のときです。坂本さんが「のばさんと飲んでないやつはブックオフのもぐりだ!」と全社総会で発言したものですから、全国から「私と飲んでください」という依頼が殺到し、半年でほぼ全員と飲むことになりました。それにより、大きくなっていく過程のベンチャーにて、経営者の考えていることと、中間の幹部の考えていることにゆがみがあり、それを現場を対話を増やすことで再び一枚岩に持っていくことができるという体験をしました。

成果としては、東京都の荻窪といううところにブックオフ初の大型店舗を出店し大成功。その後のブックオフの大型店舗・都心店舗拡大のきっかけとしました。宅配で本を買うなどのシステムも作ることができました。たった半年でしたが、リクルートに戻る挨拶をしたときに、全社員からの鳴りやまない拍手がありました。さすがに感動して泣いてしまいました。そのときいっしょに頑張った子たちが今ではブックオフの未来を支える幹部になっています。また私もローソンを離れるときに声をかけていただき、今ではブックオフの社外取締役も10年を超えています。おつきあいは22年を超えています。

リクルートに戻ると、人が変わって帰ってきたと言われました。
なにしろカスタマーがなぜ幸せになるのかの追求が足りないと会社はダメになる、まずは相手から考える、ということを徹底的に説き始めたのです。会社にとっても自分の人生のとってもほんとうに大きな転機となった半年でした。心の底から感謝しています。


■ 今後のブックオフ

新刊書店の経営が悪化しています。新刊が売れなければ中古も危ういです。CDやDVDは、もはや盤を買うということがなくなっていきます。デジタルにNFT技術などで価値がついてもブックオフのような業種が中古売買するものではないと思います。洋服などは猫も杓子もリサイクルショップを始めています。以前は新刊書店から敬遠されていたブックオフですが、今や新刊書店も中古コーナーを設置しています。

ゲーム、トレーディングカード、フィギュアなどまだまだ拡大するマーケットはありますが、ここで考えたいのは、製造者・作家・アーティストなどの著作権とともに透明性をもってマーケットを創り、だまされることのない新しい場所を創っていくことかもしれません。たくさんたくさん考えなければならないことがあります。それを小売りの論理ではなくて、作り手・受け手と一緒になってやっていきたいと考えています。

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野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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