2022/04/23
ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...
野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
53回目のコラムです。今回は、尾原和啓さんの著書「プロセスエコノミー」を読み、アウトプット物、たとえば良い作品を創り、それが店舗やECで売れていくということだけではなく、そのプロセスが人の心を揺らし、お金を払う対象になっていくということを理解し、アーティストの販売戦略にも大変通じるものがあると思い、レポートします。
巻末の著者紹介には、フューチャリストと書いてあります。以前からネット社会の歴史から未来までを常に発信している方です。私がリクルートにいたときに、転職されてきてリクナビの事業部に入社しました。私も求人事業部の出身であり、マーケティングもしておりましたので、いろいろお話をしました。こんなにすごい方に師匠と呼んでもらっていてむず痒い思いをしています。
京都大学大学院→マッキンゼー→NTTドコモのiモード事業立ち上げ→リクルート→そしてGoogle、楽天など多くのネットビジネスを導いてきた方です。
以前私がSpinartでコラムを書いた中にも、「アフターデジタル」「ネットビジネス進化論」などいくつものインターネットビジネス、それに対して変化するジェネレーション観察などの著書を出版されています。この著書のプロローグでは、良いモノを作るだけでは売れない時代になった。インターネットによって、一瞬で情報がいきわたって、一瞬でコピーされる時代である。冷蔵庫のスペックってこれ以上になる必要があるのか。そして、個人のクリエイターがやっているYoutubeやInstagramですらすぐにまねされてしまう。焦ってPV稼ぎに行き過ぎたアクションをしてしまう。それに対してプロセスはコピーできない。プロセスを売る時代になっていると書いています。
よくよく考えるとすでにそういったものが多くの人の心を揺らしていると感じます。
以前にレポートしたローソンのリラックマのお皿がもらえるキャンペーンでは、形や柄までリラックマが大好きなファンたちと作ってきました。ファンは皿をもらう前に、ローソンをリラックマで埋め尽くそうとか、キディランドには売っていないものを景品として提案しようという心境で参加していたのです。
先日は、アーティストのゆずの新曲のことをテレビで放映していましたが。コロナ禍において、ファンに「何してほしいか」聞いたそうです。そして、みんなの言葉やエピソードを歌にしたとのことでした。
NIZIUやモーニング娘。もまさにプロセスの共感から人気コンテンツになりました。CDやDVDの付録になっているメイキング映像は、価格アップのコンテンツになっています。
オンラインサロンやクラウドファンディングなども参加感やそのグループへの所属感があり、課金を受け入れ満足を得ています。
SHOWROOMの投げ銭、果ては、きのこの山・たけのこの里の毎年行われるどっち派選挙まで、体感する・参加することに価値を見出すシーンが続出しています。
私は57歳です。会社への入社は昭和62年。まだまだ出世する・勝つ・羨ましがられることがモチベーションであった世代です。営業マンはランキングされ昇格が決まっていきました。収入を得れば、マイホームを買う、マイカーを買う。それがステイタスでした。勝つとか達成するということがモチベーションでした。コンプライアンスという言葉もありませんでしたので、朝まで働くことが自慢でした。今の若者はどうでしょうか?
まず、終身雇用制度がなくなっています。我慢して頑張って、係長になり、課長になり、部長になり、定年まで勤めあげて大きな退職金をもらって老後を穏やかに暮らす。それが標準であったので我慢してでも会社にしがみつきました。私は、新卒でリクルート入社でしたので、誰も定年退職しない環境だったので、本当の苦労はわかっていないかもしれませんが。目的の見えないものに我慢して追随している必要がなくなった若者は、学生の時から起業したり、違うなと思ったらさっさと転職したりします。購買についても、生まれた時からないものがない時代を過ごしています。家電は全部そろっていますし、パソコン・ケータイもそもそもあります。勝ったり、達成して出世し、モノを手に入れることに快楽を感じられず、自分が好きなものがほしい、共感できる企業のモノを買いたいという風に変化しています。家族・近所・会社への所属ではなく、どこかの共感できるグループへの所属が大切なのです。
そのグループがあることでのセカンドクリエイターという存在が出現しました。たとえば、作品を作ることを宣言し、そのプロセスを開示する。それに対して興味ある人が課金して楽しんだり、アイデアを提供したり、制作を手伝ったりします。ついにはその共感が、応援団からの大きな拡散を生むのです。モノを作り、作品を消費者に届ける今までの工程が大きく変化しています。クラブハウスなどで情報をオープンにすることによって、さらなる情報が集まり、プロダクト進化していく。企業機密漏洩のリスク管理も大事ですが、こういう環境になったという認識がもっと大事になってきました。
以前にもレポートした千葉功太郎さんが主催する千葉道場、もちろん著者の尾原さんも参加しています。千葉さんが出資する50社以上のベンチャー企業が集まって、自分たちの大事な情報をどんどんGIVEしていきます。盗まれるとか、攻撃されることはありません。GIVEしているのにたくさん持って帰る仲間です。オープンな環境でグループが進化していくのです。
冒頭に書いたように、良いモノを作るだけでは売れない時代になりました。この企業は、この商品は、なぜ作られたのか、誰に何をしてあげると幸せになると思ったから作られたのか。それを実現するためには、どういう工程があり、どういう葛藤があり、どういうブレイクスルーがあったのか。それに自分も参加したのであれば喜びもさらに大きい。whyとは、その企業の、その人の生き方そのものなのです。
スピナート動画部では、4回にわたり、登録アーティストのハイブリッド・ロックンロール・バンド「LINX」のインタビューを配信しました。あまりにも痛快な進行であり、楽曲作りなど感動するようなストーリーもありました。視聴者の方々からの感想でも、ふだんライブに行ったり、CDを聴いているのですが、こんなインタビューで知らないことがたくさん知れて幸せでした という主旨の言葉をいくつもいただきました。良いモノを作るだけではなかなか売れない。プロセスを一緒に体感してもらうということが、今の時代に必要になっているようです。
ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...
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