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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝ダウンロードジャパンをコロナ禍の観点で見る

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
61回目のコラムです。今回は、久しぶりに開催されたヘヴィメタルフェス「ダウンロードジャパン」に参戦してきましたので、イベント運営として感じたことを記してみます。


■ DOWNLOAD JAPAN 2022 8月14日(日)  幕張メッセ 1〜3ホール

イギリスのイングランド、レスターシャーにて行なわれている野外ロック・フェスティバル、及び同名を冠した世界各地で開催されているフェスティバル・ブランドが、ダウンロード・フェスティバルです。本家イギリスのダウンロード・フェスティバルは毎年の晩春時期に開催され、ライブ・ネイションが主催しています。コロナ禍の前までは日本でも毎年開催されていました。ライブ・ネイションとクリエイティブマンプロダクションが共催のようです。この手のフェスの開催予定がほとんど2年ほど延期になってきていて、ついに開催となりました。

ヘッドライナーにドリーム・シアター、さらにブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン、マストドン、スティール・パンサー、ソウルフライ、アット・ザ・ゲイツ、コード・オレンジ、ザ・ヘイロー・エフェクト、オープニング・アクトとしてBAND-MAIDというラインナップで行われました。同様なイベントとしては、ラウドパーク、ノットフェス、オズフェス、スラッシュドミネーションなどあり、ヘヴィメタルファンとしては各国の、そしてヘヴィメタルの中でも多くのジャンルを一気に見ることができるお祭りです。


■ 行動制限のない夏のフェスが各地で開催

このイベントに限らず、この夏は、たくさんのフェスが制限の中でも開催されました。フジロックでは、今までで一番海外のアーティストが少なかったかもしれませんが、夏の風物詩を多くのファンが楽しみました。日本を代表する音楽フェスのロック・イン・ジャパン・フェスティバルの会場を茨城県のひたちなか海浜公園から千葉市蘇我スポーツ公園に変更して実施されました。理由は、昨年の茨城県医師会が開催1か月前に開催中止の要請をしたことが原因のようです。昨年のロッキンは来場者数を例年の半分以下にするなど、万全のコロナ対策で開催する予定だったが茨城医師会が突然の中止要請したことにより開催1か月前に急遽中止となってしまいました。多くの音楽ファンが医師会宛に抗議を行い、その数は2000件以上だったといわれています。


■ 久しぶりの運営

DOWNLOAD JAPAN 2022も、通常の半分のキャパにて距離が取れるように意図した開催となりました。9:30開場オープンで、9:45からオープニングアクトの演奏開始というスケジュールを見てやや不安になりました。オープン当初は、入り口検査が2ブースで長蛇の列ができていました。途中から間口を広げてスムーズになりましたが、オープニングアクトを見ることはできませんでした。オープニングアクトが日本のBAND-MAIDさんでしたので、こういうフェスでしか見られない人とか、バンド命でこのバンドを見るために来たという人もいたと思うので少し残念なオペレーションでした。さらにグッズ売り場に並ぶと(私は並びませんでしたが)、買ったころには3バンド目が終わるという感じ。これはこれで密でもあるので、なかなか難しいところもありますね。


■ コロナ禍での注意深い運営

まずは通常の半分のキャパでの運営。収支的には大変苦しいものがあると思いますが、ヘヴィメタルキッズのために開催してくれたのだと思います。通常は18000円のチケットですが、前方の囲いにはVIPエリアがあり、35000円とのことでした。だいぶチケットが高騰しています。しかし、この2年、とくに外国のアーティストを呼んだライブができない状況もありましたので、ファン的にはやや仕方がない感があります。KISSやGuns N' Rosesなどの大物の来日情報も矢継ぎ早に出ており、なかなかの値段に目をぱちくりしていたりもします。

さて、運営ですが、まずは事務局の方が、アーティストの登場の合間の時間に、必ず諸注意事項として、距離を保つこと、声を出さないこと、マスクをすること、コール&レスポンスをしないことなどが発せられました。話している人も心苦しいかと思いますが、これがフェスをやっていい条件でもあります。当然、イベントホームページでもこの諸注意は書かれています。ただし、会場ではずっと日本語での発信でしたので、盛り上がった外国人の方々は大声を出しているのが散見されました。英語での諸注意もあったらなと多くの人が思ったようです。そうは言っても会場にいる外国人の大半の人達は日本に住んでいたりするのかなとも思います。全般的には大半の人がルールを守ってフェスを楽しんでいましたのはもちろんです。

私の近くにいた若者たちがマスクをせずに大声をあげていました。体の大きな外国人のセキュリティの方が注意しましたが、馬鹿にした様子でいたところ、さくを乗り越えて、「どういうつもりだ、みんながルールを守って楽しんでいるのに」といった感じで、その若者のところまで来ました。迫力がありました。日本の警備は、アルバイトが多いですし、とにかくわかっていただくスタンスで、少し強い口調で言おうものならSNSで非難されるとか、訴えられるような風潮があります。先日も、自分で物を線路に落とした人が駅員に止められると非常ボタンを押して、どなる駅員の動画を都合の良いところだけを編集してアップするというようなニュースがありました。彼らは、安全に運航できるように、安全に運用できるように毅然とやっているのです。日本人のサービス系の弱腰文化も変えたいものです。

そして、ここまでみんなルールを守っているのですが、アーティストもファンの想いに応えたくなり、「もっと声をくれ」的なパフォーマンスをしてしまいます。ファンも、コールしてくれたらコールバックしたい!アーティストへの注意は、マネジメントを通して行っているのだと思いますが、かなりラフにしか伝わらないものです。アーティストに伝えるにはどうしたらいいかも考えるべきテーマかと思います。たとえば日本でのライブについてというレクチャーの時間をきちんと設けるなど。ロックミュージシャンにそこまでは…という方もいらっしゃるかもしれません。日本のプロレス興行では、いまだに声を出していません。海外から来るレスラーもきちんとレクチャーを受けています。先日は、新日本プロレスの大会で、100年に1人の逸材棚橋弘至選手の退場時に、ちいさな女の子が走り寄ってきて握手をしに来ました。棚橋選手は、触れるギリギリでこぶしを止めて「また、今度しようね」と言っていました。女の子にはなぜしてくれないかわかりません。そのあとのバックステージで「夢を売る人間がこんなこともしてあげられないなんて」と号泣する姿がありました。何が正しいかは1つではないと思いますが、演者とファンの我慢しながらも感動できる場面を創造するのがイベンターです。みなさんの苦労が垣間見えました。

我々もファンもたくさんの我慢をしてきました。開催にあたってもまだまだたくさんの注意が必要です。そこまでやって効果があるの?と思うこともあるかもしれません。でも、withコロナを意識することで、「できなくなる」ということがないように、いろいろ工夫していきたいですね。

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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