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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝プリンセステンコー東京魔術団団長・澤村正一さんの研修

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
73回目のコラムです。今回は、あのイリュージョンマジックのプリンセステンコーさんを支える魔術団団長澤村正一さんの「人を喜ばせるスペシャリスト講座」に行ってまいりましたので、その報告をします。


■ プリンセステンコー東京魔術団団長・澤村正一さんのプロフィール

幼少から俳優としてTV・舞台に数多く出演。東京魔術団団長。
1979年、2代目引田天功、プリンセス天功と出会いマジック界に転向。国内、世界各国にて活躍。
マジック界で最高峰の「マジシャン・オブ・ザ・イヤー」アカデミー大賞を受賞。
現在も演出家としては舞台、TV、CMの特殊演出を手掛け、プリンセステンコーの団長として、舞台に出演している。


■ 引田天功

少し年齢が高めの方であれば、マジックの引田天功という初代のことを知っていると思います。
1968年から1975年まで7回にわたって日本テレビの特番として放送された従来のマジックからは考えられないほどの脱出イリュージョンである「死のジェットコースター大脱出」、「死の火煙塔大脱出」「死の水道管大脱出」「油地獄水面炎上大脱出」といったスケールの大きさで毎回高視聴率を記録していました。その人気から日本中に脱出ブームを巻き起こしました。
テレビメディアと組んだ大規模な脱出イリュージョンの日本におけるパイオニアとして、日本のマジック界をリードする存在でしたが、脱出の際の大掛かりなパフォーマンスで使用する大量の火薬の威力は凄まじく、練習中に瀕死となるアクシデントや、音と熱と煙に相当悩まされるなど諸刃の剣であったと自身の著書に記しています。
心筋梗塞などの心臓疾患に苦しみ、1979年大晦日に45歳で死去されています。


■ 2代目引田天功・プリンセステンコー

1976年から初代引田天功に師事する。マジックを披露しながら歌う異色のアイドル歌手「朝風まり」としてデビュー。歌手・女優をしていたが、心筋梗塞で倒れた先代の遺志を受け継ぎ、大がかりな脱出イリュージョンを展開するようになります。
その後は国外活動の比重を置いて世界各地で公演を展開し「プリンセス・テンコー」の愛称で知られようになりました。
欧州の王道イリュージョンを追求してきた先代と違い、プリンセステンコーは1からのショーの構築だったため、過去に縛られない新しいエンターテインメントを展開し始めます。他の弟子ではできないことを次々と創りあげていきます。
そこに合流したのが澤村正一さんというわけです。


■ 研修はマジックから

みなさんはマジックはできますでしょうか? 私は、タネを見抜こうというスタンスがあまりなくて、すごい!すごい!と騒いでいる方です。
お札にペンを突き刺す基本的なマジックを教えてもらいました。真剣にやってみるとできるのです。しかし、手先や次の動作に集中しているため、私が集中している部分に、見ている人も集中しています。
「あれ、今のって…。」
そうです。タネがあるので、素人がみんなタネの部分に集中しているので簡単に見抜かれてしまいます。澤村さんが言います。
「みなさんは、マジシャンになるわけではないので、いきなりできなくても大丈夫です。大事なことは、ストーリーです。」
私もこのところのマーケティングコラムで、「ステキなストーリー」について記してきました。つまり、みんながタネの部分に集中してはいけないわけです。他の部分に気を取られていただく。千円札にボールペンを突き刺して、抜いたら穴が開いていないというマジック。仕掛けに目をやらせないストーリー。
「今の千円札は誰だが覚えていますか? 野口英世さんの顔の右半分と左半分をよく見てみましょう。」
「今、あなたの財布から出していただいたので怪しくないですよね、1万円札を出さなかったのはちょっと怖かったからですか。」
観客の視線があちこちに行きます。
「さあ、それではみなさんご覧ください、えいっ、刺さってしまいました。抜きますよ…破れたらごめんなさい…えいっ、穴はふさがりました。」
観客の視線があちこち行っているうちに準備は整っていました。もちろん、澤村さんの場合は、全員がじっくり見ているくらいでは見抜けませんが。
「今日大事なことは、ストーリーを創り、ストーリーに巻き込むということです。これは、対話にもビジネスにも応用できますね、いかにあなたのストーリーに引き込むことができるかという練習です。」
続いて、トランプマジックでも、同様にテクニックを駆使している間のストーリーを学びました。参加者のみなさんの顔を高揚しています。ストーリーを語ることに熱が入ってトランプを落としたり、仕掛けをするタイミングでストーリーが止まってしまったり…笑いながら、みんながんばってチャレンジしました。


■ 表現力を鍛える

みなさんはTVCMにおいて、正しいことやもっともなことは言っているが、会社名を覚えていないとか、何をしている会社か覚えていないということはありますか? かなりのTVCMがそういう状況です。むしろ通販会社の社長が、DVDを「デー・ブイ・デー」と発音してしまっているCMの方がインパクトがあったりします。ビール各社のCMはかっこよくてキレがありそうですが、果たしてキリンだっけ、アサヒだっけ、サッポロだっけとなってしまいますね。アサヒスーパードライの生ジョッキ缶のように、
「店で飲むように泡が出るのか、試してみたいな、SNSにあげちゃおうかな。」
これだと、わざわざ指名で買いに行くストーリーが作れています。
CMのセリフに抑揚をつけてみよう。できれば、赤文字にするとかラインマーカーを引くとかではなくて、絵にしてみよう。画像・映像の感覚でしゃべってみよう。澤村さんが開発したツールです。
参加者1人1人が絵にして発表します。全員が違うトーンでの発表になります。私の研修でも、何チームあっても発表が被ることはありません。今度は、違うCMの文言をナレーターではなくて、自分が決めたキャラクターで読んでみます。お経、悪魔、おねえ、声優、暗い感じ、宝塚風…それぞれが苦手そうな分野に取り組みます。当然、骨子は変わりませんが言葉遣いは変わっていきます。全員がやり切った顔をしていました。これもストーリー創りです。


アーティストのみなさんは、まさに表現力の方々です。さまざまなキャラクターに自分を置き換えてストーリーにしていくことが得意だと思います。みなさんのパフォーマンス、みなさんの売り込み、みなさんのMC、みなさんのファンづくり。どこまでステキなストーリーが意識されているか、心を揺らせているか たまには振り返ってみるのはいかがでしょうか?

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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