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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝プロレスメジャー3団体の年末年始体験

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
94回目のコラムです。年末年始はみなさんどうお過ごしでしたでしょうか? 年初から、地震・航空機事故・殺傷事件と例年になく穏やかでないスタートとなってしまいました。思いつめない、できることだけをやることが大事ですね。
何も考えずに現地に行ってしまい、避難所の子どもが配給されたパンを食べている前で、ボランティアが美味しそうな弁当を食べて水を飲んでいるシーンもありました。ケータイの充電に困っている停電の地域の方に必要以上に安否確認をする親族でもない方が迷惑がられていました。できることで役に立つことが大事ですね。そしてはびこる詐欺の誘いにも気をつけましょう。本年もよろしくお願いいたします。


■ 年末年始は、プロレスメジャー団体のビッグマッチに行ってきました

年末年始はプロレス団体がビッグマッチを開催します。私は、12月29日スターダム両国国技館大会、1月3日プロレスリングNOAH有明アリーナ大会、1月4日新日本プロレス東京ドーム大会を観てきました。スターダムと新日本プロレスは現在はブシロードの傘下になります。プロレスリングNOAHはサイバーエージェントの傘下です。
昔から大きなプロレス団体にはテレビ局が入りコントロールをしてきました。インディー団体が群雄割拠になってきて日本には地域団体を含めると100くらいの団体があります。興行をするということは、場所を押さえ、選手を招聘し(とくに小さい団体は他の団体の選手を借りる必要もあります)、チケットの販売、機材の設営・撤収・運搬から当日の運用業務、そしてギャラの支払いともろもろ重要な仕事があります。一般社会からするとプロレス社会は少々ずさんであり、いろいろ問題も起こってきました。たくさんの団体があるということは大将がたくさんいるということで、そのぶん組織運営が分裂することも多々あります。


■ 2023年の主なプロレス団体の試合

こちらで規模が何となくつかめるかと思います。
新日本プロレス    :観客動員数 255,847人 145大会
スターダム      :観客動員数 97,832人 136大会
プロレスリングNOAH :観客動員数 97,182人 71大会
ドラゴンゲート    :観客動員数 89,586人 172大会
全日本プロレス    :観客動員数 56,975人 73大会
DDT         :観客動員数 40,650人  87大会
大日本プロレス    :観客動員数 26,877人 116大会
東京女子プロレス   :観客動員数 24,472人 62大会
ブシロードの木谷会長は、アニメ業界・ゲーム業界の雄でもありますが、屈指のプロレスファンでもあります。そのブシロードが株主になった新日本プロレスとスターダムが圧倒的です。
また、サイバーエージェントの傘下にも、プロレスリングNOAH、DDT、東京女子プロレスなどが加わりABEMAなども駆使しながら上昇しています。
この2大グループは配信を活用し、世界にプロレスを提供しています。日本のプロレスレベルは非常に高いので配信を見た海外の選手は日本で試合をすることを夢見て活動しています。
神戸に自分たちの拠点を持ちスピーディーな試合を続けているドラゴンゲート、凶器満載のデスマッチを得意とする大日本プロレスなど個性豊かな日本のプロレス界です。


■ 12月29日スターダム両国国技館大会

定番になっている年末の締めのビッグイベントです。ブシロード傘下のプロレス団体は選手にSNSの重要さを教えています。世間でも話題になった木村花さんへの誹謗中傷事件もありました。木村さんもスターダムの花形選手でした。あんなことがあったのにまだ選手に対する誹謗中傷をやめないバカがたくさん存在します。私は高校生も教えています。
「誹謗中傷はしてはいけない。受けたとしてもよく見てみる。そんなバカよりも暖かく応援してくれている人の心の方が大事。」
…と。発信することはビジネス的に大事。でも選手をどう守るか、選手にどう自分を守らせるのか…について、エンターテインメント業界の指導はまだまだだと感じます。
この1年もスターダムの選手はたくさんの感動を作り続けました。新人選手もたくさんデビューし、新陳代謝も進みました。そんな中ですが、気になることがありました。「選手は宝」であるはずが「選手は道具」と思っていないかということです。過密スケジュールが組まれます。試合は過激になっていきますが、それだけでなくサイン会からYouTubeの撮影までとても忙しいです。また過酷な総当たり戦の最中にタイトルマッチもやらせるなど、今年は今までも最も怪我による欠場選手を多く出してしまいました。公式ホームページも選手の名前を頻繁に間違えたりしています。それでも選手はファン思い。ある大会では、開場が大幅に遅れ、選手がスタッフにどうして遅れたのかを訪ねると、せせら笑いながら無視したり、サイン会のアンケートをどうするのか尋ねたところ「捨てますよ」と言われて、慌てて選手が回収したりということも起こったようです。SNSを大事にしているので、当然選手はこのようなことも書いてしまいます。こんなことが上に伝わらない、最初に謝るのはいつも親会社の木谷会長。これは、団体というよりも企業のリスクマネジメントの課題であり、採用や配属の問題でもあります。社長交代となりました。でも選手は感動して泣いてしまうような試合を続けてくれています。


■ 1月3日プロレスリングNOAH有明アリーナ大会

NOAHは、ジャイアント馬場さんが亡くなられた後、全日本プロレスからほとんどの選手が脱退して作った団体です。三沢光晴さんの団体といった方がわかるでしょうか。ほんとうの生え抜きの選手で残っているのはトップレスラーの丸藤選手です。一時期は、新日本プロレスに続きブシロード傘下になるのかと思われましたが、サイバーエージェントの子会社のサイバーファイト傘下となりました。これで新日本プロレスとの交流はなくなるのかなと思っていましたが、ベテラン選手の交流が始まり、面白いストーリーをもって新鮮な闘いが提供されています。
当日、特に良かった試合は、GHCというNOAHの師玉のベルトのタイトルマッチ拳王選手vs征矢選手の非常にストーリーが深い試合。想像を絶する闘いでした。そして新日本プロレスの名勝負製造機石井選手に喧嘩を売った北宮選手との試合。壮絶なぶつかり合いのあとの言葉のない信頼感がステキでした。メインイベントは世界を揺るがした天才飯伏選手が丸藤選手とやる試合でしたが、おそらく怪我によるコンディション不良からか、飯伏選手が精彩を欠いていました。これをストーリーに仕上げてしまうのがプロの仕事。丸藤選手は見事でした。
師玉のタイトルマッチがメインイベントではなくセミファイナルであったことへの疑問が多くのファンに残りました。集客の目玉であったことは間違いありません。「客を入れること」も大事ですが、「客を満足させて帰すこと」も大事な気がします。そうであればコンディションを見てあげることも必要だったのではないかと私見ですが思います。


■ 1月4日新日本プロレス東京ドーム大会

3万人ほどははいったでしょうか。すごい熱気でした。ベテランの有名選手ですら出場できないほど人材も溢れています。
新日本プロレスも社長が交代しました。前任の大張社長は、コロナ禍の中のプロレス興行をほんとによく引っ張ってくれました。そして満を持してトップ選手の棚橋選手が社長となりました。本人も以前から選手が経営する(昔と違ってちゃんと組織機能をもって)ことを希望していたようです。
この大会はほぼすべての試合がタイトルマッチであり、ほとんどの王座が移動する空間となりました。新しい夜明け感が出ていましたね。
内藤選手が新しい顔となりました。プロレス界では知らない者はいませんが、一般の人ですと、棚橋さん、オカダさん、真壁さんなどテレビでもおなじみの選手が思い浮かびます。今後どういうブランディングをしていくのでしょうか。
最後は、会場全員での「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の大合唱で高揚感と共に大会が終了しました。
ハウス・オブ・トーチャーという悪役ユニットがいて、登場するとブーイングの嵐です。ブーイングを受ければ受けるほど満足げな表情です。内藤選手が壮絶な闘いの後、コールをしようとすると邪魔に入ります。内藤選手に負けて倒れているSANADA選手が気力を振り絞って退治します。4年前にもKENTA選手が乱入し、この大合唱ができないままコロナ禍に入ってしまったので、ファンも気が気ではありません。内藤選手のコールを邪魔しようとするEVIL選手、内藤選手に負けたSANADA選手がEVIL選手を阻止、コールをする前に内藤選手がSANADA選手の存在への感謝を示し、ファンとともに大合唱。かつてはこの3人は同じチームでした。ブーイングだけでなく、汚い言葉やSNSを受けているが、EVIL選手の存在感と覚悟を絶賛する人もいました。大事なのは観客が感じるストーリーが成立しているかどうかです。


プロレスを見ているだけでも、組織作りの大切さ、ファンオリエンテッドの考え方、表面的ではないステキなストーリーの必要性、コンテンツのブランディング いろいろな示唆がありました!

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