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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝相手が一番、自分が二番  コロッケ・フィルハーモニー大音楽会

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
95回目のコラムです。取引先のお誘いで、「新春!爆笑&感動!オールスター大集合!? コロッケ・フィルハーモニー大音楽会」というイベントに行ってきました。ものまね会の巨匠、あのコロッケさんのライブです。ただただ楽しかったのですが、テレビで見るのとは違い、真剣な部分や感動する部分も散りばめられていて、とても勉強になりましたのでレポートします。


■ 当日はどんなイベント?

大田区文化振興協会というところが主催したコロッケさんと山下康介さんが指揮する東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団のコラボイベントでした。普段は作りこんだカラオケをベースにパフォーマンスするコロッケさんですが、この日は生音をベースに、それでもより自由にパフォーマンスする日でした。圧巻のお笑いパフォーマンスに楽団に人が笑ってしまったり、いつ次の曲の演奏に入るのかをつかもうとしてタイミングを見計らっているのですが、コロッケさんがのってしまってトークが炸裂していたり、自由な空間でした。


■ トークも冴えまくり

日頃ものまね番組など短い時間でのパフォーマンスでは行き過ぎくらいのものまねで、時には模写の対象者から叱られる感じが記憶にありますが、こうしたコンサートですと、ものまねをする対象の方へのリスペクトや、コロッケさん本来の歌のうまさなども堪能することができました。
昨年、惜しくもお亡くなりになった谷村さんとのエピソードを軽快にお話しされた後、ちょっと涙目になりながら、「いい日旅立ち」を地声で歌い切りました。「ものまねの人間の地声って珍しいでしょ!」と言いながら。時には封書で「ちゃんと歌ってください」とだけ書いた手紙が来ることもあるそうです。
トークもとても楽しく会場は終始笑いに包まれました。コロッケさんのものまねは似ているだけでなく、本人がやってもいないことを自分のイメージの中で音が鳴ってきて創りあげているとのことでした。吉幾三さんが歌っていると歌詞の切れ目切れ目で、犬が唸っているような音が浮かんでくるのだそうです。


■ このパフォーマンスはどうやってできたのか

コロッケさんは子供の頃から気になることがあるとそのことから離れなくなる性格だったようです。その事象に興味が尽きず妄想して世界が作り上がっていく、そんな感じのようです。
ものまねのレパートリーは500以上と言われ、多くの歌手の方から「そんなことやってないよ」と言われながら、「まあ、やってていいよ」と愛されている存在です。松山千春さんからは、「おまえ、俺の頭爆発させてんじゃないか」と言いながら北海道ツアーでは楽屋までわざわざ来てくださったそうです。あまりにもたくさんの方のものまねを展開してこられたので、コロッケさんに真似ていただかないと一流ではないという錯覚もありそうですね。永遠に続きそうな大御所たちとのエピソードもとても楽しく、そして予定にないトークもいくつも飛び出していました。


■ すべての人のキーを出すためのボイストレーニング

一般的な「ものまね」ではなく、模写する人物の中でも、コロッケさんが特徴的だと思いこんだ一部分を強調したものまね。極端なデフォルメのあまり、本人とは全く違う別物になってしまう事が多く、他の人から「何故ああいう風になったのか?」と聞かれても説明できないそうです。一見するととんでもない誇張表現で、失礼な感じでもあるパフォーマンスですが、すべてこれが対象アーティストへのリスペクトでできていることも感じられてステキでした。
ロボット五木ひろし、口が半開きで目が泳ぎ、極端に歩幅が短く、鼻くそをほじって食べる野口五郎、顎を突き出し、目を真上に向け、笑いながら歌う岩崎宏美、右の口角を上げ、「アァン!」と変な声を入れる美川憲一、 歌の途中で、「アウッ!」や「ペ〜!」と言う長渕剛、語尾が全部犬になる吉幾三、不気味な笑いで、吐息がオーバーな玉置浩二、ハエを目で追いかけて素手で捕まえるように歌う堀内孝雄、歌う途中で鼻を鳴らす北島三郎 などなど。そしてテレビより時間があるので、一瞬芸ではなく、きちんと歌う時間もあり、実はそれぞれの歌唱がそっくりなことも確認できました。沢田研二さんなどは今までの見たものまねで一番似ていました。そのあたりもさすがです。実はすべての人のキーを出すためのボイストレーニングの努力がほんとにすごいと聞きました。


■ 相手が一番 自分が二番

コンサートの中で、ほろっとする瞬間がありました。模写する人物へのリスペクトがあるのは書きましたが、自分が大事にしていることが、「相手が一番 自分が二番」ということだそうです。解釈の仕方はいろいろあると思います。「ライバルより自分が勝つことがトップにのし上がるのではないか」という意見もあるでしょう。「自分の考えを主張するより、相手の心境を感じてアイデアにするべき」という考えもあるでしょう。このコロッケさんの言葉は、模写する人物へのリスペクトであり、協力者やファンへの感謝である気がします。そこが先という順番を絶対に変えてはいけないというのがコロッケさんが大事にしているポイントなのだなあと思いました。
東日本大震災のとき、めちゃくちゃ悩みながら被災地を訪問していました。今年も被害の大きい震災が起こってしまいました。なんとかタイミングを見て訪問したいとおっしゃっていました。
「自分が二番」ということは、大事な相手にとって意志をもって提供するということなのかなと感じている次第です。実は、いろいろ観ることが大事と言っておきながら、お笑いのライブ(お笑いでいいのか?)に来たのは初めてでした。他のパフォーマーさんでもテレビでは伝わり切れないショーが行われているのでしょうね。いろいろ足をのばしてみたいと思います。

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野林徳行

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