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Logo Markなにか創るとうれしくて暗い重い長い…「最高層より翔ぶ男」という楽曲(1)

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者
YouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおじぃ
YouT...

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 2019年11月。iTunes、Google Play、Amazon、Spotify、等々各種メディアから「最高層より翔ぶ男」という楽曲をリリースした。この曲は以前、クリムゾン・シャアというバンドをやっていた頃にやっていた楽曲のリメイクだ。
 どこがどう違うのかと言えば実は当時とさほど違いはない。違うところと言えば、当時この曲のメインVo.だった田辺DISIR大介さんが歌っていたパートも自分一人で歌い、ギターもだいぶいろいろと入れてみたり、ストリングス系も、当時とは違うアレンジになっている…くらいなものか。楽曲の方向性や構成等々、骨子として大きな違いはないと言える。

 しかし当時の「最高層より翔ぶ男」はちゃんとした音源になっていなかった。
 VHSビデオ作品「29日目の鮮血」のラストに入っているが、これはそのビデオ収録のその場で演奏した収録ライヴの音源だし、デモテープとして配布した(もしかしたら有料で売ったかもしれない…もう覚えてないけど)「クリムゾン・シャア七」の1曲目としても入っているが、これも「29日目の鮮血」の時の音源をそのまま入れて出したに過ぎない。

 だから今回、こうした音源作品としてはほぼ初のリリースということになる。
 まぁ、こういう重暗い楽曲である上に10分を超えるようなバカげた楽曲だから、当時としてはレコーディングを躊躇ったということだったかなとかはおぼろげに思い出したりするものの、今回改めてやってみると確かに長いなとかも思ったりしてやや苦笑する。

 さてこの曲、なにをこんなに長い時間をかけて歌っているのかと言えば、実はある一人の男性がビルの屋上に上って飛び降りるという内容だったりする。
 まずはその歌詞をご覧いただこう。

 最高層より翔ぶ男
 詞・曲 紫水勇太郎

  救いなどありはしない
  逃げても逃げきれるものじゃない
  救いなどありはしない
  助かる見込みもないというのに…

 重い鉄の扉の隙間から
 かすかな光が差し込んでいる
 これこそが救いの光だと
 信じて俺は扉を開いた

  救いなどありはしない
  逃げても逃げきれるものじゃない
  救いなどありはしない
  助かる見込みもないというのに…

 まばゆい光に眩んだ瞳に
 現実の映像が戻ると
 そこは日常をはるかに離れた
 強く風吹くビルの屋上

  救いなどありはしない
  逃げても逃げきれるものじゃない
  救いなどありはしない
  助かる見込みもないというのに…

   なんて気持ちがいいんだ
   大気に包まれ胎児に還る
   なんて気持ちがいいんだ
   木の葉のように舞い大地に還る

 小さく蠢く眼下の日常は
 黒く群れなす蟻の巣穴か
 働くだけ働いて夢もなく
 気づけば年老いてこうつぶやく

  救いなどありはしない
  逃げても逃げきれるものじゃない
  救いなどありはしない
  助かる見込みは ないのか! ないのか!

  救いなどありはしない
  逃げても逃げきれるものじゃない
  救いなどありはしない
  助かる見込みは…

 救いがあると信じてここまで
 登った俺に神は微笑む
 「おまえの人生に報いよう」
 大きく呼吸し力を込めて
 大空へ… 大空へ…

 こんなことを歌ってたらそりゃ重暗くもなるわなとは思いつつもさらに、メロディー的な展開がほぼないという乱暴さにも自分であきれかえるわけだが、当時やたらと展開する曲ばかり書いていた身としては、よくもまぁこんな単純な曲を書いたものだと、既に思い出せなくなっている作った当時の自分の心持ちを思い出そうとしては思い出せず、ただただ首をかしげるばかりだったりする。

 さて、飛び降りるとなればもちろん考えるべきは「生」と「死」ということになるわけで、この歌詞の中でそれは「救い」等という比較的ありきたりな言葉で括られていたりもするわけだけれども、この価値の置きどころについてはもちろんのこと人それぞれいろいろあるだろう。通常世間的に死ぬことは良くないこととされているわけだし、
「死んだら終わりだ。」
とか、
「生きていればいいこともある。」
的なことが言われて、映画やドラマなどでは、死のうとしていた登場人物がそれを中断し、これからも生きようと翻意するところでめでたしめでたしとなることが圧倒的に多い。
 まぁそれもそれで一つの価値観だろうと思う。
 しかしこの歌の主人公のように、死によって救われるということもあるのではないかという点についても正直否定できない自分がいる。

 生きていながらにして戦い続けるステージから降りることはできる。だから、戦いから降りることを理由に死を選択する必要はないとは思う。しかし生きている限りは無駄に使われる税金を取り立てられ、運用者の都合で勝手に受給年齢を引き上げられたり受給できる金額を変更することのできる契約としてはなんか変なのとしか思えない年金も取り立てられ、物価は上がるが給料は上がらず、同じお金を得るためにはさらに多くの労働が必要になり、子どもの養育費や教育費にはべらぼうな金額を必要とし、最終的に老後にもとんでもない額の貯蓄が必要だなんて言われ、どうもなにかがおかしいと思いつつも選挙結果は毎度同じような次第で、なんでそうなるかなぁとか考えれば他に選択肢もなく、また多くは目先の利得によって選択してるんだろうななんてことも思ったりするわけで、そんなことをいろいろ考えていると幻滅感と諦念しか頭をよぎらなくなって、結局なにもかもが面倒になる…なんて感じの結果、死ぬことで本当にホッとできるなんて人がいても、これを否定することはできないかもなぁなんて思うという次第。

 まぁ願わくば、(これは自分も含めてではあるけれども)そうなる前になにか、別の救いが見出せるようになればいいなと思う。それは「救い」等という大層なものでなくてもいいんだけれど、ささやかでもなにかしら明日への活力になるもの。その当事者だけではなく周囲も含め多くの心や智を以てそうしたことが見つかる世の中になれば、この世の中から出ていこうとする人を少しでも少なくすることができるかもしれないなと思ったりもする(実はこのサイト「Spinart(スピナート)」を運営し始めた際の動機にもそういったことが入っていたりする)。

 ということで、「こんな歌を作っておいてどの口が言う?」という感じではあるけれども、この歌をきっかけに、少しだけでも、生きていることや死ぬことの意味なんてことを考えてみてもらえたらちょっとだけうれしいかもとは思う。
 ま、人間死亡率100%なので、いつどんな風に死ぬのか、その時にどう思うのかがけっこう大切になるのかもなぁなんてことも思ったりするのだけれども。

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「最高層より翔ぶ男」はYouTubeで聞けます。

2019年11月発売のEP「最高層より翔ぶ男 / 1914」。
クリムゾン・シャア時代の代表曲にして10分を超える大作「最高層より翔ぶ男」を完全新録で再生。
カップリングには、2016年リリースのアルバム「99.99%」に収録の「1914」の、ギターをすべて自身の演奏に差し替えリミックスしたものを収録。
紫水勇太郎のハードロック的な側面を象徴する2曲を是非お聞きください。

収録曲
1. 最高層より翔ぶ男
2. 1914(2019)

Written words and music, arranged, programed, sang, played guitar, produced, recorded, engineered, mixed, mastered, designed cover and shot picture by u-taro'DANNA'shimizu.

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