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Logo Mark脳内伝言板ソロ・オリジナルフルアルバム「The story of water」リリース

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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2021年2月、#エールアートプロジェクトの尽力により、K.SHIRASUNA(白砂勝敏)ソロ・オリジナル9曲入りフルアルバムをリリースすることが出来ました。

販売は販売サイトから、または今後の展覧会やライブ会場にて販売予定です。
下記販売サイトになります。価格(税込み)は2,200円になります。皆様よろしくお願いいたします。
Hippie Style

また2021年5月1日よりAmazonでも販売が開始しております。
Amazon

収録曲「The story of water(後編)」をYouTubeでご覧いただけます。
YouTube


今回はCDの制作にあたり思った事や収録曲の解説をしたいと思う。

私の制作したムビラを中心にデイジュリドゥやパーカッション等を使い演奏したインスト中心のソロCD。楽器制作、演奏、作詞、作曲、ジャケ絵はすべて私の作品でまとめてみた。アフリカでもなくオーストラリアでもなく日本でもない多国籍なグルーブと音色。癒されたり、ユラユラゆれたり、踊ったり、絵を描いたり等々、自由に聞いてくれたら嬉しい。

普段から楽器を制作したり改造したり、気になる音を創っている。そんな音を出しているうちにお気に入りのリズムやメロディーが生まれてくる。今回はそういったものを主軸に録音してみた。

録音スタジオに白砂式音器(自作の楽器)と既存の楽器を少し改良した物を持ち込み、何が出来るのかは録音しながら考える事にした。今の自分を表現するのにはそうする事が良いように思えたからだ。今更常識にとらわれる必要もないので作品制作同様、思いのままに制作してみる事にした。その結果、結構な時間をスタジオで過ごす事になった。私は自分のやりたい事なので問題は無いのだが、お付き合いいただいたエンジニアの健ちゃんには頭が上がらない。感謝。

私には何かを感じる音や立体的な物を感じるリズムがある。例えば太鼓の音が三角形や四角形といったイメージをもたらしたり、大地や水の流れを連想させることがある。これは音自体だったり、音と音との間隔(タイミング)や音程等色々なことが絡み合って生み出されているのだと思うのだが、そういった生命力等を感じる音やリズムに興味がある。

今回のCDはムビラという楽器を使った曲が大半をしめている。これまでも色々な素材を使いカリンバは数台制作したことはあった。ムビラを造り始めるまでカリンバとの違いも全くわかっていなかった。急にムビラに興味を懐き制作してみたのが私とムビラの出逢いであった。まだムビラを制作し始めて1年にも満たないが、そのキッカケを思い返しても全く思い当たらないので、本当に突然、制作したい欲求に突き動かされたのだと思う(他の作品に関してもそういう感じで出来ていく事が多い)。

最初はアフリカのムビラの幾つかある音階を参考にあまりよくわからないまま制作を進めた。弦数も多いいので音程等上手く出来るのだろうかと不安しかなかったが、試行錯誤していると少しずつ見えてくるものがある。制作しながらだいたい3オクターブ位の音が入っている事や不思議な音の並びに驚いたりもした。弦を組み上げて演奏しては違和感のある所をバラシしてまた組み直す。根気がいる仕事だ。それを何日も繰り返していると、次第に何かを掴み始める。こうなると更に演奏も制作も止まらなくなるし色々と試してみたい事が湧き上がってくる。そうやって4台のムビラを制作しそれぞれ別の音階を試してはバラシを繰り返していくうちに演奏力も次第に上がっていった。数か月が過ぎ、私の好みの音を弾き続けた結果、あるリズムが生まれてきてムビラを奏でながら日常会話も出来るようになっていった。

チューニングに関しては、最終的にアフリカの音の並びを少しアレンジしたところでひとまず落ち着いている。楽器のキーは台座のサイズや弦の硬さ等によって一番気持ちよい響きを探りながら制作している。多分弾き方もリズムもアフリカの物とは少し違うのだと思う(本場のムビラを知らないので何とも言えない)。思い返せばディジュを初めて制作した時もこんな感じだった。結果、オーストラリアのアボリジニに伝わる演奏とは違う感じになった。

ムビラを制作する前はカリンバの方が箱があるぶん音も大きいし共鳴も感じるように思えてあまりムビラという存在に気を向ける事はなかった。勿論その不思議な音の並びにも気付く事はなかった。ところがムビラ演奏をし始めると不思議な感覚に取りつかれていった。

私は精霊とか神様とか見たこともないしもちろん話すことも出来ない。だがムビラを奏でているとそういったものと会話が出来るのではないかと思うような不思議な感覚に包まれる。また、見ている景色や物の見え方まで変わってくるのだ。例えば作品の前や展示空間でムビラを奏でるとその作品や空間と自分までの距離が縮むというかその中へ入っていく感じがしてとても心地よいのだ。これについては今後の展示にも取り入れていきたいと思っている。なんというかムビラを弾くたびにその音は細胞に染みわたっていくような感覚を覚える。少し調べてみると現地ではやはり神様と会話する的な事が言われている。

例えば口琴なんかは頭蓋骨を共鳴装置として使っているし、ディジュは体内の器官の音までも多分増幅して音にしている。どれも楽器と一体化して音が生まれる。ムビラは音は小さいけれども、何とも言い難い感覚を受ける。そしてその正体を見つけたくなり時間の許す限り弾き続ける。一晩中奏でる事もしばしばある。

最近になってなんとなくわかってきた事がある。気持ちがいいのは音のせいだとばかり思っていたのだが、振るえる弦が僕の体を響鳴装置に変えているからなのか。楽器と自分が一つになっているからなのか。その振動が微弱なうえより新たな感性を刺激するからなのか。とにかくとても気持ちいい。気が付けばまた朝になる。

                   完


【The story of water】楽曲説明

1曲目:The story of water(前編)… 9分10秒。
2曲目:The story of water(後編)…13分26秒。
タイトル曲の「The story of water」は一滴の水の雫が、雨となり大地に降りそそぎ、汚染と浄化を繰り返しながら様々な生き物の体を通り抜け川になり海になりやがて天空へ戻っていく。何万年も前から繰り返される様々な水を通した循環「水の旅のストーリー」を自分の人生と絡めてイメージした曲。22分36秒と長い曲なのでリズム無しの部分1曲目(前編)とリズムが生まれてからの2曲目(後編)に分けてみた。実際はとは同じ曲なのでそのままCDを流せば切れ目はない。
初めて聞いた方には何台かで演奏しているように聞こえるかもしれないが、この曲は一台のムビラで演奏している。

3曲目:Water forest
これも8分16秒と結構長い曲である(笑)。
これはムビラの重奏。「深い古代の森、踊る雨水に植物の生命力」そんなイメージの曲。
録音したものを聞きながら少しずつ展開を変えていった。結果6通りのムビラを重ねて録音。一番多いい所で5重奏。

4曲目:土偶の森を行く
これもまた長い曲で17分11秒。
コンガ、ジャンベ、等パーカッションを主軸に様々な楽器が登場していく。タイトル通り土偶の森を冒険していく中で出逢う出来事をイメージした曲。

5曲目:埋もれた遺跡
こちらは比較的短い曲で2分51秒。
ムビラ一台で演奏。この日は風が強い日で外で何かが倒れる音が入り込んでしまったり、演奏終了した瞬間、多分自衛隊の訓練機が低空飛行してきたようで録音に入ったりと色々とあったが、聞いてみるとこのタイミングで入り込んだのも何かの縁かと感じ採用した。

6曲目:maGma…3分58秒。
桐のディジュリドゥ、独奏、タイトル通りマグマのイメージ。

7曲目:軸音 jikuoto…2分30秒。
タモの樹のディジュリドゥ途中から重奏。タイトル通り地軸の音のイメージ。

8曲目:大切な約束…1分26秒。
ムビラを使ったオリジナル曲。歌詞付き。ブレイン(文章作品)より大切な約束と稀人を取り上げ録音した曲。

9曲目:向こう側に咲く花…8分18秒。
アルバム3曲目「Water forest」に歌詞をつけて録音したもの。


CD情報
アルバムタイトル:The story of water
作詞・作曲・演奏:K.SHIRASUNA 白砂勝敏
楽器制作・改造:K.SHIRASUNA 白砂勝敏
ジャケット絵:白砂勝敏…樹海で出逢った妖精(表)麒麟(裏)
総再生時間:67:08
レーベル:MUSICA SHIRASUNA
レコーディングスタジオ:KENSTA
制作:2021年制作
価格:2,000円+税
Amazon販売開始:2021年5月1日〜

※写真は自作のムビラ達です。

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

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