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Logo Mark脳内伝言板日本みつばちがかわいくて仕方ない3

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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夏に入居した日本みつばちの群れ。冬になったので、入り口を狭くし、断熱材(廃材)があったので巣箱を囲んで寒さ対策をしてみた。それ以外は本当にたまに、巣箱の底を簡単にお掃除するくらいだった。元々それほど強い群れではなさそうだったんで途中で消滅してしまうかもしれないと思っていたのだが、無事冬を超えることができた。それはそれで感動した。

春になってハチの数も順調に増えている。調べてみると分蜂といって新女王が誕生する季節。だが春は展覧会も多い。今年も3月4月と結構広い空間での個展を開催していたので、かなり忙しかったが、本当に数時間空いた時間に空き箱(巣箱)を1つ設置することが出来た。これがナイスタイミングだったみたいで。3日ぐらいして見に行ってみると、なんとみつばちが入居しているではないか。これは嬉しかった。やったね~って感じだった。その前後の状況から察すると越冬した家の群れがいつの間にか分蜂してその群れが自然入居したのではないかと思われる。

みつばちは一つの群れに一匹の女王バチという掟があるらしい。多分、新女王が生まれる寸前に現女王バチが群れの半分くらいを連れて巣箱から外にでていく。これを分蜂(ぶんぽう)というのだけれど、みつばちはそうやって子孫を残していく。外に出た群れは、新たに住処を探すまでの間、とりあえず太い木の枝に集まって玉になる。これを蜂球(ほうきゅう)というのだけれど、これがまた凄い。ホント自然界ってどうしてこんな仕組みになっているんだろうと考えさせられる。そうして早ければ数時間、長ければ数日の間、蜂球状態で、探索バチが新天地をさがしてくるまで留まっている。この時、働きバチの体内には蜂蜜をいっぱいにしているらしいが、当然外に出て新たな住居を見つけ更に一から巣を作り、女王バチが卵を産むのは、かなりリスクのある事だろう。今までそこに住んでいた女王バチが出ていき、生まれたての新女王が今までの巣を受け継ぐということを知ったとき、少し意外な感じがしたが、種のことを思ったらそれが最善なことなんだろう。ただこれが実際には想像以上に分蜂するので驚いた。同じ群れが数日おきに分蜂したのである。こうなると生まれたての女王バチは数日で新しく生まれてくる女王バチに巣を明け渡して外に飛び立たなくてはならない。故に生まれたばかりで野にはなたれ、住む場所を見つけ卵を産むための巣をつくり、餌を調達して、交尾して、ようやく産卵を始める。かなり大変な作業だろう。だからその年の最後に生まれた女王バチはラッキーということだ。生まれながらにして住む家と卵を産む為の巣房もあり、餌もある。まぁそういう一見理不尽に感じるシステムが絶妙に絡み合って自然界は廻っているのだろう。

新しい巣箱にみつばちが自然入居した数日後、今年越冬した群れが分蜂した。ちょうど個展が始まっており午後1時にギャラリーに向かわなければならなかったのだが、昼前くらいに巣箱から大量のみつばちが出てきて飛びまわり始めた。初めて分蜂を目の当たりにしたが、凄い迫力だ。音も数も勢いも、本当にこんな風になるんだぁと感動した。飛び回るみつばちの中にいても全く怖さはない。不思議な感覚。以前明け方の森の中で蜩(ひぐらし)の鳴き声が爆音なのに全然うるさくなくむしろ静寂を感じ、そんな演奏がしたいと思った時みたいに、こういう感じを私の演奏に取り入れたいなぁと思った。日本みつばちのそれは、命の激しさを感じるも、何だか温かい感じがした。この群れはやぶの中の高い木の上に蜂球を作り、やがてどこかへ飛び去っていった。そしてまた数日後、個展会場にいるとかみさんからTELが入る。また同じ群れが分蜂したとのこと。この時は何とか手が届きそうだったらしいが取り込む準備等できていなかったので自然にまかせたが数時間後どこかへ飛んで行ってしまったとのこと。

そして個展最終日前日、また分蜂したと連絡がきた。これは藪の中の高い木に蜂球が出来ていたのでお手上げだった。これは2日ほどそのまま留まっていた。個展最終日の夜に雨が降ってしまったので、夜な夜なあの群れは大丈夫かと心配したりもしたが、翌日雨が上がったので見にいくと、群れは姿を消していた。ところが暫くして別の場所に群れが動いていることに気が付いた。そこはちょっと危険だけれどフェンスにしがみつけばなんとか捕獲できそうな場所であったためにチャレンジしてみることにした。安全帯をつけて蜂球のところまで行くことが出来た。何度かに分けて網で捕獲し、空箱へみつばちを移すことができた。これは4回目の分蜂した群れなのでかなり小さな群れであったが、巣箱も気に入ってくれたようで無事入居してくれた。入居後しばらくしてもあまり元気がない感じで、もしかしてアカリンダニがついているかもしれないので、巣箱の上部にミントの葉っぱを出し入れできるように巣箱を改造してみた。日本みつばちはアカリンダニという0.1mmくらいのダニが寄生すると器官がつまり死んでしまう。アカリンダニは外来種で西洋ミツバチと一緒に日本に入ってきたらしい。西洋ミツバチが寄生されても大丈夫らしいのだが、日本みつばちにはかなりのダメージを与える。ただ面白いことに成虫になって数日のハチのみに寄生するらしい。幼虫と成虫は寄生されないというから、なんだか不思議だ。これの予防方法として巣の中にメントールを入れるとダニがつかないという。ところがみつばちはメントールの匂いがあまり好きではないらしいので、最初は少しずつ慣らすようにいれていく。ググってみると日本ハッカの葉を入れている方が多いみたいだ。ただ家の庭にはアップルミントしかはえていないので同じようなもんだろうと勝手な推測で代用している。

個展期間中10日間くらいの間に同じ群れが3回分蜂した。多分最初に自然入居した群れもこの群れから分かれたものだと思うのでこの春に同じ群れが4回分蜂したことになる。想像以上の回数とスピード間に、自然界は刻一刻とすすんでいることを実感する。そのスピード感で分蜂した場合、女王バチはどのタイミングで交尾するのだろうか? 分蜂直後に交尾するものと、新天地についてから交尾するものがいそうな気がするが詳しいことはわからない。ただ女王バチは空中で交尾するらしいのでどのタイミングかわからないが巣の外にでて空に飛び立つ。女王バチのフェロモンに誘われてオスが追いかけてきて空中で交尾するらしい。巣の外で交尾するには鳥などに食べられる危険があると思うのだが、違う群れのオスと出会うためなのだろうか…。よくわからない。だから取り込んだ群れや残された群れの女王バチが無事産卵を始められるか、結構ドキドキしながら見守っている。
四月の初めに自然入居した群れの女王バチは多分去年家で越冬した女王バチだと思われる。これがものすごい強い女王バチでみるみる蜂の数が増え巣もぐんぐん大きくなっていった。やはり2年目くらいの女王バチは威勢がいいのかもしれないなぁと思ってみたり。まぁこれは今後もいろいろ観察できれば分かるかもしれない。

続く

写真は日本みつばちの梅の木の枝にできた蜂球(ほうきゅう)です。 新住居が見つかるまでこの状態で住居が決まると一斉に飛び立ちます。その音もビジュアルも超迫力です。

日本みつばちがかわいくて仕方ない
日本みつばちがかわいくて仕方ない2
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日本みつばちがかわいくて仕方ない5
続・日本みつばちがかわいくて仕方ない 虫の道
続・日本みつばちがかわいくて仕方ない スズメバチの猛襲

グランシップ誰もがWonderfulアート 白砂勝敏 生命のかたち〜白砂式創造の渦へ〜

グランシップ誰もがWonderfulアートは障害の有無を超え誰もが持つ豊かな感性や個性を認め合うきっかけの場となることを願い開催されているイベントです。
元々NHKのハートフルアートの流れから生まれたイベントで数年ほど前から静岡市のグランシップで開催しています。

【イベント名】グランシップ誰もがWonderfulアート 白砂勝敏 生命のかたち〜白砂式創造の渦へ〜
【期間】2023年8月26日(土)〜9月10日(日)
【時間】10:00〜17:00 (入場は16:30まで)
【場所】グランシップ6F展示ギャラリー/GRANSHIP 静岡県コンベンションアーツセンター
【住所】グランシップ/GRANSHIP 静岡県コンベンションアーツセンター
    422-8019静岡県 静岡市 駿河区東静岡二丁目3番1号
    JR東海道線 東静岡駅 南口出てすぐ
【主催】公益財団法人静岡県文化財団

★鑑賞ツアー:2023年8月26日(土)(1)11:00〜/(2)13:30〜(40分程度)参加費無料※事前申込制
★白砂勝敏ライブパフォーマンス はこぶねおんがくかい:2023年9月3日(日)14:00から(1時間ほど)参加費1名500円※事前申込制

お問合せ:グランシップチケットセンター TEL054−289-9000


以下のリンクからグランシップイベントの詳細をご覧いただけます。
グランシップ誰もがWonderfulアート
※こちらのページ内の「PDF」リンクからチラシを印刷いただけます。どうぞご利用ください。

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

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