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Logo Mark脳内伝言板柿の葉が開くころに

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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今年も春がやってきた。
私にとって春は季節の廻りをしみじみと感じるのだ。

若いときは夏が大好きだった。20代は桜が咲き始めると体がうずうずしはじめて、旅に出たくなった。その衝動はとても大きくて抑えきれずに大したあてもなく放浪し続けていた。それは自分の中に何があるのかを探る時間だったのかなぁと今は理解しているが、その当時は得体のしれない不安や期待に押しつぶされないように必死で動き回っていたように記憶している。

ところが夏場は年齢を重ねる度に湿度が高いのが結構しんどく感じるようになってきた。特に梅雨時がつらい。あと私が子供のころより明らかに夏の暑さが尋常じゃない程暑くなっている。暑いというだけでこれ程までに体力を奪われるんだなぁと今更ながら実感している。夏は体力的にもきついという理由もあるが注意しないと木や紙などの素材がカビてしまう。そうならないように置き場所や管理が必要になる。あと田舎暮らしでは草の猛威と虫が多い。冬場は殆ど虫がいないので窓は開けっぴろげで開放的なのだが、夏は網戸をしておかなければあっという間に蜂や蚊などと同居になってしまう。

あてもなく何かを求めて旅をして、結果的にアートに出逢い、ようやく心の底からやりたいことに出逢ったら、当然それを軸に生活が回り始めるので制作活動がしやすい冬が好きになっていった。とはいえ静岡県の冬なので雪もほとんど降らないような適度な冬が好きなのだが。

冬は11月くらいに草刈りをすれば4月中旬くらいまでは草の方は大丈夫。毎年冬の間に庭のかたずけを少しずつしているのだが中々進まず気が付けば今年も春が来てしまった。静岡県の冬は海沿いは風が強い所もあるが、この辺は風も穏やかで、適度に乾燥しているし天候も晴れの日が多い。夜も日中外をかたずけたり、木工作業ででた切れ端なんかを薪ストーブにくべれば、朝まで十分作業ができる。日中も多少寒いくらいのほうが動いていればちょうどいいくらいなので作業がしやすい。制作中心の生活としては冬場のほうが圧倒的に作業がはかどるのである。

私の好き嫌いとは関係なく、季節は巡っていく。夏が辛くなったとはいえ嫌いになったわけではないので、無理をしないよう気を付けながら夏は夏の良さを楽しんでいる。春の話を書こうと思っていたのだがなんだか夏と冬の話になってしまった。

春は芽吹きの季節生命力をひしひしと感じる。梅の花が終わるころ、家の周りではフキノトウが出始める。やはり日当たりの良い場所から出始めて、だんだん日当たりの悪い場所が芽吹いていく。こういう事って文字にしてしまうと当たり前のことなんだけれど、実体験すると、自然界との距離が近くなるように感じる。そのうちにタラの芽がでてくる。そして満開の桜と黄色い菜の花。またこの菜花がとても美味しいのだ。その後タケノコのシーズンになるのだけれど、これも日当たりによって随分差がでる。ここへ引っ越してから近所のおばさんが教えてくれたことがある「柿の葉が開き始めるとタケノコが出始める」と。数年観察してみてこれが確かにそうなのだ。ただ柿にも早生とかあるので一概に言えないのだけれど、私は庭に何種類かある柿の木の中であたりをつけてあり、その柿の木の葉が開くくらいに竹やぶに行くと確かにいい感じなのだ。逆に周りではタケノコが出回り始めていたとしても庭の柿の葉がまだ閉じている頃は裏山のタケノコはまだ土の中にいるようだ。やはり植物はその年の気候の微妙な違いの中で生きながらえてきているのだから、植物のことを植物に聞くというのは理にかなっているし、昔の人は自然との距離が近かったんだろう。私も自然と同調するように生きていきたいものである。

        おしまい

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

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