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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝真のwinwinの実現こそプロデューサー(1)

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
12回目です。私は、ローソンに努めているころに、エンターテインメントやマーケティングの責任者をしていました。マーケティングはお客様のニーズにあった商品を開発し、それを告知していくことで成立します。愚直にお客様に合わせていくのですが、エゴが入ると、それがお客様との溝になって失敗が生まれます。マチナカの多くの商品は何らかの理由で終焉を迎えます。一握りの商品がヒット商品になっていきます。上司から言われたテーマだからとか、原価が合わないのでこのくらいで…とお客様に関係ないところでの思考が常に失敗の原因になります。今回は、お客様のニーズに合わせるだけでなく、真のwinwinを追求してみた事例を書いてみます。


■ カスタマー(お客様)至上主義でなく、エゴで進めると失敗する

以前プロレスの亜流で「ハッスル」というプロジェクトがありました。有名なプロレスラーが、キャラクターを演じたり、ドラマのような役割を演じたりするエンターテインメントでした。新日本プロレスやUWFなど多くのファンを熱狂させた高田延彦さんを中心に、アメリカのWWEのようなエンターテインメントビジネスを目指したものでした。当時は、「元気になろーそん」という掛け声で、どんどん世間に元気になる提案をしていこうというスローガンのもと商品開発やサービス開発が行われていました。ある方からハッスルを紹介され、私もプロレス好きなので興味があり、ハッスルという響きや考え方も元気に通じるということでコラボレーションの話が進みました。私の中には、こういう機会にプロレス界を元気にするという思いがありました。ここにエゴがあります。カスタマーが抜けているのです。ハッスルは、正義の味方のハッスル軍と、悪のモンスター軍が対決するシナリオになっており、その対決の構図を商品企画に生かしました。ハッスルカレーパンとモンスターカレーパンなど、パンや弁当など数種類の商品を開発しました。当時のエースであった坂田選手(小池栄子さんとご結婚されました)と小池栄子さんのLOVEシナリオなどもあり、そういったエピソードも取り入れようとしましたが、小池さんの事務所からのNGで実現しませんでした。また、テレビ東京で30分番組を持っていたのですが、この番組が商品発売直前に打ち切りとなりました。今は、新日本プロレスを中心にプロレスの市民権が復活していますが、当時はわりとどん底時代で、一般の方にとっては興味が薄いジャンルとも言えました。こんな形で展開し、実に何も結果が起こらずに終了しています。細部がどれもこれも甘すぎたわけです。自分がプロレス界に貢献するということだけが優先された形の失敗でした。


■ カスタマーファーストで成功したゼクシィやローソンのリラックマキャンペーンは成功してきた

Spinartのコラムでもこの話は書いてきました。純粋にカスタマーを観察し続けて、長いヒット・深いヒットを生んできました。前述のとおり、カスタマーから入っていないハッスルのキャンペーンは何も起こりませんでした。しかし、コンビニエンスストアの幹部であれば、ニーズ通り実現するだけでは新しい展開は作れません。このコラムの筆者紹介でも私は、ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛しているとしています。一般の商業ベースに乗っているエンターテインメントと比べるとマイナーなジャンルで、しかし深いファンはいるジャンルとどう取り組むか。ここに取り組みのがマーケティング本部長ではなく、エンターテインメント本部長の顔です。これまでも、EXILE、ジブリ、リラックマなどの大きなタイアップを実現してきましたが、ちょっと全国区まではいかないジャンルで成功するためには、カスタマーをよく知ることと同時に、業界を動かす必要がありました。


■ プロレスリングNOAHとのコラボレーション

当時、子会社のローソンチケット(私はのちに社長になるのですが)の担当者から「野林さんはプロレス詳しいですよね」という打診がありました。どうしてもチケット会社は、チケットを扱わせてもらって手数料をいただく業者という立場になります。扱いを増やしてもらうためになんとか親会社のローソンと組んで振り向いてもらいたいという気持ちがあったようです。全国に1万店もあるローソンの本部長がプロレス好きらしいということで、プロレスリングNOAHの偉い人も出てこられました。いずれにしてもこの時点ではマイナーなコンテンツなので単純なタイアップだけだと何も起こらないのは明白でした。まずは、材料を整理します。プレイヤーは(1)ローソン (2)ローソンチケット (3)プロレスリングNOAH (4)日本テレビ (5)週刊プロレス (6)東京スポーツ。みなさんもwinnwinという言葉はよく耳にすると思います。真のwinwinとはプレイヤー全員が満足できることです。そして絶対的に大事なプレイヤーはカスタマーです。それを6つのプレイヤーが一枚岩になってカスタマーの満足に向かい、自分たちもそれぞれ満足をつかむことです。そのストーリーを考えました。
プロレスファンは、どうせチケットを買うならローソンで特典付きのものを買いたい。そのときに限定グッズがあればとてもうれしい。そこで、当時の社長であった三沢光晴さんとお話しして、チャンピオンの三沢さんが現在使用しているガウンやシューズを特典でいただきました。さらに試合のバックステージツアーでサインとか記念撮影とかいろいろプレゼントを用意しました。最初は要望を聞きますだった三沢さんも、私がデビュー戦から見てます…から始まって会話を楽しんでいただき、最後は「こんなのはどう?」とノリノリで提案をしてくれました。さらに各選手のローソン限定のQUOカードなどなどプレゼントと、Loppiでの物販品が次々と承認されていきました。ローソンおよびローソンチケットとしてはキャンペーンが作れる、Loppiで商品が売れる、チケットの販売シェアが上がる、チケット購入の際のついで買いが起こるなどのwinがあります。とくにローソンチケットとしては、チケット販売において市場のシェアが逆転するということも起こりました。プロレスリングNOAHとしては、販売品のライセンス収入、そして全国の店舗のレジ画面でNOAHの興行日程を告知するということがwinとなりました。フリーペーパーの月刊ローソンチケットでもNOAHの特集を組みました。店内告知がうまくいったので店外の告知に着手します。まずは、週刊プロレスさんにこのコラボレーションを大々的に取り上げてもらいます。私は雑誌の責任者もしていたので、週刊プロレスさんのwinはニュースの提供と、ローソン店舗での雑誌の取り扱いを要望通り展開するというものでした。東京スポーツさんも同様です。そしてこの2つのプレイヤーには、ローソンがNOAHと組み理由という取材をしていただき、私は、日経新聞にはほとんど出ないのに東京スポーツでは連載をしてもらえることになりました(苦笑)。そして試合の映像などを使いたかったのですが、こちらはVAPさんが権利をお持ちで有料ということでした。しかしVAPの方も何とかこのステキな座組に参加したいということで、使用料を無料にする代わりに日本テレビのG+の広告宣伝を配布するフリーDVDに入れてくれればOKにしますということで、こちらもwinwinが成立しました。実はのちに新日本プロレスからは、ローソンとNOAHのようなタッグを組みたいという希望が出て、現在大人気の新日本プロレスはローソンとタイアップを続けています。この話は、大手コンビニの取り組みという理解ではなくて、応援したいコンテンツを少しでも大きくするなら、それぞれのプレイヤーのwinを考え、それを着実に実現するという考え方でチームを作るとよい というふうに理解したいただくとよいかなと思います。


せっかくですので次回は、モータースポーツ。フォーミュラニッポンを応援して、F1日本グランプリを独占販売するようになったステキなチーム作りをお届けしたいと思います。


次記事「真のwinwinの実現こそプロデューサー(2)」はこちら。
連載記事・真のwinwinの実現こそプロデューサー(2)

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ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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