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Logo Mark連載記事

Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝ターゲットを明確にするとアイデアが溢れたり、フォローが繊細になっていく

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
19回目のコラムです。今回は、ターゲットを明確にするとアイデアが溢れたり、フォローが繊細になっていく事例を紹介します。あなたの作品に心が揺らされるのはどんな人ですか


■ ミワンダフル

10回目のコラムで紹介したメイクスマイルアーティストのミワンダフルさん。「メイクで世界を笑顔に」というコンセプトで、リアルでオンラインでメイクを教えています。彼女のターゲットは「ひっそり女子」。10代・20代の女の子がターゲットと言ってしまうと、快活で友達がたくさんいて社交的でガンガン出かけていく子もいれば、学校や仕事が終わったら割とまっすぐ帰るのが好きで家でまったりしている子もいます。この2人の子は自分らしい時間が全く違うのです。ミワンダフルの活動は、ちょっと自分に自信のないひっそり女子がメイクの力を借りて「勇気と自信」を手に入れていくのです。ターゲットは、「女子」ではなくて「ひっそり女子」です。そう決めると、この子たちの普段の悩みの解消や、ファーストメイクのアドバイスなどアイデアがどんどん出てきます。オンラインイベント、実際の会場でのメイクアドバイス、ファーストメイクブックの発売…結果が出ていきました。私は女子高校でマーケティングも教えているのですが、ご褒美に一年間の最後の授業は、ミワンダフルを呼んで彼女の生き様の紹介とともにメイク指導をします。私の一年間のどの授業よりも目が輝いています(泣)。


■ ゼクシィ

また4回目のコラムでは結婚式場を探す雑誌ゼクシィを紹介しました。花嫁1000人委員会を組織していてリアルな花嫁さんたちに、表紙・TVCM・モデル・特集・付録などなど聞いていきます。そして何よりも結婚前の生活・新婚生活についても聞いていきます。ゼクシィの付録は話題です。「花嫁すぎるゴム手袋」「乙女すぎるドライバーセット」などステキな付録がギネス販売部数を生み出します。広告代理店ならおしゃれなかわいいトートバックなどを提案してしまいますが、ゼクシィの編集部の人たちは、結婚式をワクワクした気持ちで待ちながらもすでに生活していて、新婚にふさわしくない生活の不を聞いているので、それをステキにしてあげようという発想からギネス部数につながる付録のアイデアが生まれます。このゼクシィという雑誌のターゲットは、「結婚する人」ではなくて、「結婚式をすることにしたのだけれども、はじめてのことなのでいろいろわからなくて、無難にはこなしたいのだけれども、自分たちらしさもちょっと出したい…教えてゼクシィな人」なのです。ステキでありつつ、きちんとマニュアルになっていないといけないのです。セレブな方々は、親や友人の知識や人脈などから企画していきますのでゼクシィのターゲットではありません。ゼクシィでは、「セレブ婚」や「海外ウエディング」というテーマではなく、「費用っていったいいくらかかるの」「準備中にもめてしまうことは」などの特集が愛されます。ここに大雑把よりは少し踏み込んだターゲット理解が成功の秘訣になっています。


■ スマイルランド

通販の会社「ニッセン」さんがはじめた大きなサイズのファッションショップを紹介します。ニッセンはWEBと同時に、電話での注文をたくさん受けています。当時の社長がはたと気づきます。1000人以上いるオペレーター…ほとんど女性。背の高い人、足の小さい人、ちょっとぽっちゃりしている人…。いろいろな方々がいます。注文の中心は日本人の標準サイズ。ということは、そのおしゃれ商品が欲しいのに自分の体型を鑑みてあきらめてしまう人がたくさんいるに違いないと気づきます。自分の目の前に1000人以上の女性、体形も様々。だったらそんな人たちの悩みも共感できるはず。ということでプロジェクトを作ります。まずは、ちょっと太めの方々を愛をこめて「ぽっちゃりさん」と呼び、招集してプロジェクト開始です。最初の店舗はファッションの最前線である渋谷のパルコでした(現在はここにはありません)。悩みを理解している人たちのコンセプト店舗です。
(1) サイズは10Lまであります。
(2) 外観はおしゃれで、「大きなサイズの店」などのPOPはありません。
(3) 広々通路でゆったり探せます。
(4) 試着室は通常の3倍、個室ごとに冷房完備です。
(5) ゆっくり休めるソファがたくさん設置されています。
(6) カジュアルな普段着から仕事用のスーツ、パーティードレスまで何でもそろいます。
(7) シューズやベルトなど周辺アイテムも充実しています。
(8) ラージサイズの知識のあるぽっちゃりさん店員がコーディネートをサポートしてくれます。
マーケティングのポイントは、お客様を徹底的に知ること。この戦略は、聞いて知るだけではなく、同じ悩みや要望を持っている人たちがそれを解消しようとしているので、通常のマーケティングよりもお客様に近づいています。それによって、きめ細かいサービスができています。お客様の中には、「外に出るのが楽しくなった」と言っている人もいます。また、なんと週に3回通ってしまうお客様もいるということです。ターゲットを徹底的に知るとアイデアが溢れ、繊細なところまで気がつきます。


みなさんの作品は、当然たくさんの方々に見たり、聞いたり、感じたりしてほしいものだと思います。企業のマーケティングとはちょっと違うかもしれません。ただ、どんな人が好きになってくれて、どんな人が友達を誘ってくれて、どんな人がSNSで拡散してくれるのか。友達が来てくれるというレベルから、わざわざ聞きつけてきてくれることへのジャンプアップのためにも、ターゲティングというのも意識してみてはいかがでしょうか?

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野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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