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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝夏のプロレスビッグマッチからターゲット戦略を学ぶ

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
107回目のコラムです。夏と言えば、プロレスビッグマッチが目白押しです。新日本プロレスG1 CLIMAX、プロレスリングノアN-1、そして世界最大のプロレス団体WWEの来日公演@両国国技館、そして同じ両国国技館でのDDTのビッグマッチ。「プロレスってだいたいこうでしょ」と言われますが、各団体ともにターゲットが違うので、今回はその違いを書いてみましょう。


■ 新日本プロレスG1 CLIMAX

ヘビー級選手によるシングルリーグ戦。新日本プロレスで開催される最大級の大会であり、「真夏の祭典」として知られています。テレビでも有名なレジェンドたちが過去激闘の末にトップを取ってきた最高峰の大会で、今年34回目の開催という伝統のシリーズです。コロナ禍以降、少し固定的なメンツでの大会のイメージもありましたが、今年は毎回上位とまではいかないレスラーたちが予選に回り、将来有望な若手が優先される仕組みとなりました。「どうせ出場できる」のではなくて、上位の常連でなければ予選からスタートするという厳しい大会になりました。この夏を熱く走り抜けていくと思います。まだ序盤戦ですが、新鮮な戦い、そして「世代交代」をかかげる若手と、「強いやつが勝つ」と言うレジェンドがしのぎを削り、ここ数年ではかなりの興奮度でスタートしています。この手のリーグ戦は海外では例がありません。後半には、技術・体力と共に精神力が疲弊していきます。日本人レスラー、そして日本を主戦場にしている外国人レスラーは、これを乗り切る力がついています。日本中を沸かしてくれるでしょう。


■ DDT WRESTLE PETER PAN 2024@両国国技館

新日本プロレスは瞬発力と耐久力と破壊力を競うストロングスタイルです。DDTのスタイルは玉手箱。コミカルな動きやおもしろいストーリー。「ストロングスタイルでなくていいのか?」と思うプロレスファンもいますが、「笑いながらプロレスを感じるとほっとする」というファンも多数存在します。スーパー・ササダンゴ・マシンというレスラーは、試合開始前にパワーポイントを使って、おもしろおかしくプロレスの見方や、内部事情をプレゼンテーションします。大社長と呼ばれる髙木三四郎vs男色ディーノ(観客の男性にキスをしまくるのですが、コンプライアンスの関係上、最近は観客の挙手制になりました)では、試合の合間に何度も凶器が投入され、エスカレートしてくると、いろいろなレスラーが投入され、収拾不能になります。試合中なのにサプライズ登場の選手などもいて、芝居を見ているようです。大会後半に向かうと大きなレスラーの肉弾戦、スピーディーなプロレス、そしてストロングスタイルと様相が変わってきます。緩急が非常に意識された大会のストーリーと呼べばよいでしょうか。このDDTとアメリカのAEWという団体にダブル所属しているKONOSUKE TAKESHITAが圧巻の試合を見せました。かれは、前述した新日本プロレスのG1 CLIMAXにも初出場し猛威を振るっています。新日本プロレスの自由人(新日本プロレスだけでなく、いろいろなインディー団体にもどんどんテーマを持って上がっていきます)エル・デスペラードはなんと凶器何でもありのデスマッチで登場しました。こんな玉手箱のような大会のメインイベントは、DDTの若手の中心、上野勇希vsMAOというDDT生え抜きの選手による素晴らしい激闘、そしてさわやかな決着。玉手箱の締めにこの納得感を持ってくるところが素晴らしいです。観客は満足のうちに帰ろうとすると、本日の全選手がエンドロールで流れてきます。みんなの足が止まります。そして最後は1か所に全選手が集まり、「よき大会」を締めくくりました。プロレスは個人プレイヤーですが、全選手が1つの大きな大会を作っているというさわやかなエンディングが、当日の満足感を一気に引き上げました。


■ WWE SuperShow Summer Tour 2024@エディオンアリーナ大阪、両国国技館

世界最大のプロレス団体・WWEは2019年6月に『WWE Live Tokyo』を両国国技館で2日間開催。今回は実に5年ぶりの日本上陸となりました。
このコラムで何度も記載している日本のストロングスタイルというよりは、エンターテインメントショーの要素が強いスタイルです。世界最大のプロレス団体であり、日本人レスラー、日本で活躍していた外国人レスラーが憧れて移籍していきます。世界をツアーしていますし、NFL、NBA、MLBのスパースター扱いにも引けを取らない扱いでチャリティーなどにも積極的な世界的な団体です。プロレスのスタイルとしては、新日本プロレスのような理詰めで展開していく、長時間の耐久戦を勝ち抜くという様なものよりは、シンプルな技で見栄えよく、ベビーフェース(善玉)とヒール(悪役)に分かれていて、観客はベビーフェースを応援し、ヒールにブーイングをくらわすわかりやすいスタイルです。
この大会には、日本人スーパースター中邑真輔(元新日本プロレス)、イヨ・スカイ、カイリ・セイン(元スターダム)、ASUKA(元カナプロ)、里村明衣子(元センダイガールズプロレスリング)、フィン・ベイラー、AJスタイルズ、コーディ・ローデス、タマ・トンガ、トンガ・ロアといった新日本プロレスでトップを張っていた外国人レスラーも集結しました。解雇されて帰国した日本人レスラーもたくさんいますが、彼ら彼女らは第一線のスーパースターとしての来日です。観客もみんな彼らを応援したいのですが、「ここはアメリカ!」という環境ですので、選手がヒールの場合にはブーイングを浴びせます。レスラーの登場、レスラーの一挙手一投足に観客がアメリカと全く同じリアクションで声を出します。日本ではイスに座って観戦しますが、WWEでは入場やすごい技には立ち上がって声を出します。以前は、民放の深夜などでもダイジェスト版が放映されていましたが、今はABEMA独占で放送されており、インターネットビジネスによってコアファンのこの一体感が生まれている気がします。前回の時は、歓声はあげているけど、遠慮もあるような雰囲気がありましたが、インターネットの力によってアメリカにいるのと何も変わらない会場が創りあげられていると感じました。
観客がABEMAを通してみているトップスパースターたち、ジェイ・ウーソ、ダミアン・プリースト、ビアンカ・ベレア、レイ・ミステリオ、サミ・ゼイン、ケビン・オーエンズなどの登場にも声を張り上げて応援する観客の状態に、これもまた日本のプロレスとの違いを感じたところです。ちなみに帰宅時にみたグッズ売り場は、完全にソールドアウトでした。


ストロングスタイルが好きな日本の伝統のプロレスを愛するファン、真剣勝負も好きだけどコミカルなものも含めたトータルの大会を楽しむ人、本場アメリカにいるかのごとくスーパースターのエンターテインメントショーを小ことから楽しむ人。そして、その人たちは何をしてあげれば喜ぶのかを次々に考える各団体。
「どんな人は、何をしてあげると、なぜ幸せになるのか」の追求です。

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野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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