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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝TAKAYAMANIA EMPIRE 本気で伝える

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
111回目のコラムです。みなさんは、プロレスラーの高山善廣さんをご存じであろうか? まだ団体間の交流はテレビ局の都合もあってぎくしゃくしていた時代に堂々とどの団体も渡り歩いたプロレス界の帝王と呼ばれた最強レスラーです。
2017年5月4日、試合中のアクシデントにより負傷、頸髄損傷および変形性頚椎症と診断され、首から下が動かない状態で長期入院となってしまいました。7年を過ぎた現在もまたリングに立つことを目標にリハビリを続けています。
9月3日に、『TAKAYAMANIA EMPIRE 3』という髙山善廣を支援する団体TAKAYAMANIAが主催するプロレス興行が後楽園ホールで行われ、超満員の観客の中、号泣必至の大会が行われました。今回はその大会の様子をレポートします。


■ TAKAYAMANIA EMPIRE

2018年、試合中のアクシデントにより負傷した高山善廣さんを支援する団体「TAKAYAMANIA」が設立され、記者会見に臨んだプロレス王鈴木みのるさんは涙ながらに協力を訴えました。興行団体、プロモーション会社ではないため、クラウドファンディングでチケット販売、協賛募集、リターン支援、グッズ制作費を実施しました。第1回大会当日は、会場ロビーにて、プロレスラー仲間が事前告知もなく募金活動を行い、会場内だけの募金総額は100万円を超える金額となったようです。興行終了後、鈴木みのるさんが「第2回、第3回…あいつが帰ってくるリングが今日生まれたんで。これを残していかないと。」と言って、継続支援を公表してくれました。


■ TAKAYAMANIA EMPIRE 3

そしてコロナ禍にできなかったこともあり、2024年9月3日、3回目の大会が5年ぶりに開催されました。マッチメイクは、高山善廣さんに相談しながら作ったと思うのですが、きっと本人がニヤッとしたに違いないバラエティに富んだ人選となっていました。大会のメインイベントでは、鈴木みのるさんと柴田勝頼さんが激しいチョップ合戦を繰り広げファンは大興奮、試合終了後のエンディングに向かうかと思いきや、なんと、鈴木みのるさんが髙山善廣さんを呼び込みました。このサプライズ登場に場内は驚愕と歓喜の渦に包まれ、髙山コールが巻き起こりました。参戦選手たちは、車椅子の高山善廣さんをリングにあげるために連携して一瞬のうちにロープを外します。これが早い。高山善廣さんを待たせない、日頃、裏方の少ない団体では自分たちでやっているのでみるみるうちにロープがはずされ、車椅子ごと髙山善廣さんがリングに上がりました。以前から「最後はリング上で自分の足で立ってファンに挨拶をする」とおっしゃっていました。まだまだ途上ですけれども一つの念願の瞬間でもありました。さらに、鈴木みのるvs高山善廣がコールされ、鈴木みのるさんは、何度も「かかって来い!」「立てよ!」と挑発。動かないはずの高山善廣さんの首下あたりが、立とうとする意志が現れたのか動いた気がしました。もう号泣です。挑発の後、鈴木みのるさんは、「お前が立てないんだったら、この勝負お預けにしてやるよ。その代わり、テメェが帰ってくるまで、俺はプロレスのリングでお前のことずっと待ってるからな! 何が帝王だ、今のプロレス王はこの俺、鈴木みのるだ! 悔しかったら立ち上がって、俺の顔蹴っ飛ばしてみろ、コノヤロー!」と言い放ちました。おそらく二人とも泣いていましたね。最後に、髙山善廣さんが「ノーフィアー!」と叫び、大会を締めくくりました。一緒に観に行った仲間も「ほんとに来てよかった」と…全員泣いていました。これがプロレスの力です。


■ 広田さくらさん

壮絶なメインイベントが、ネットニュースを席巻しましたが、私の脳裏に焼きついたのは、女帝里村芽衣子vsシン・広田さくら。広田さくらさんは、コミカルレスラーとしてすべてのリングに上がる天才コスプレレスラー。今回は、高山善廣さんのコスプレで、髪型も顔も徹底的に似せてきましたが、KISSをはるかにしのぐ超ロングブーツ型ツールで、トップロープを軽々とまたぐアクションなど会場中を笑いの渦に巻き込んでくれました。当日のいろいろな試合は、神妙なものではなく、この日を自分の得意でお祭りにするというレスラーの思いが詰まっていたと思います。以前に高山善廣さんは、レストランを経営しており、私はよく伺っていました。とてもフレンドリーに接していただきましたし、「知り合いにマーケティングを学んでほしいので呼んでいいですか」と言っていただいたり。帰りも角を曲がるまでずっとお見送りをしていただいたり、翌朝には必ずお電話で感謝を伝えていただいたり、ほんとうに人間的にも素晴らしい方でした。あるとき、広田さくらさんの結婚パーティーをプロレス会場でやることになり、広田さくらさんと一緒にお店まで高山善廣さんに出場を交渉に行ったことがあります。快諾していただきステキな破壊力抜群の存在感を示してくれました。今回の広田さくらさんの力の入れようも、この感謝もあるのかもしれません。


■ 募金

試合後、鈴木みのるさんは、しゃべり終わるや否や、「ポケットの余った小銭1つでもいいから募金お願いします」と言って、支援募金箱を持ってファンを見送りました。それに呼応するように多くの選手も続々と募金箱を持って立っていました。正確ではないかもしれませんが、グッズ販売や募金などが200万円を超えたという情報もSNSで見かけました。高山さんは、現在もリハビリを続け本当に1ミリずつながら前向きに進んでいます。大会の必要経費以外の収益はすべて医療費になります。そしてすべてのファンが、帝王降臨を心から待っています。

以前に、各団体が集結して、『ALL TOGETHER〜日本プロレスリング連盟発足記念・能登半島復興支援チャリティ大会〜』が行われたことをレポートしました。これもプロレスが世の中を元気にする役割として素晴らしいものです。ただ、その中で、能登のみなさま、能登を支援するみなさまへのメッセージが少なかったことは課題と書きました。今回は、被災ではなくて個人へのサポートではありますが、鈴木みのるさんをはじめとするプロレスラーの本気が観客を動かしたと思います。企業運営でも団体運営でも個展開催でも、「やってみる」「SNSに書く」で終わることと、ここまで「思いを伝える」ことにこだわることの差というものが勉強になるとも思いました。目的の達成にこだわる、できる以上のことをやってみる。大事なことですね。

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