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Logo Markなにか創るとうれしくてポンタさんとの「ありがたい」思い出 その1

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 はじめに、私なんかが言わなくても多くの方が知っている、偉大なるドラム・プレイヤー・村上PONTA秀一さんのご逝去に、本当に心からの哀悼の意を表するとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。そして、私なんかのような小さな者にさえ、こんな風に語れるような思い出を残してくださって、本当にありがとうございます。
 ということで今回は、自分自身の懐かしさだけで展開するようなお話ではありますが、オヤジの思い出話におつきあいください。


「なんか、客席にポンタさんがいるらしいぜ。」
「ポンタさん? あの? マジ?」
「マジマジ。」
「えっ? なんで?」
「なんかふらっと来たんだって。」
 時は90年代。東京は池袋のライヴハウス「Adm(アダム)」の楽屋。自分たちの出番前。そこに珍しくやってきた馴染みのスタッフの方がやや緊張気味に言った。いや、それでもその時点ではまだ全然実感はなかったんだ。だって逢ったことなんてもちろんなかったし、そりゃいろいろな逸話は聞いてたけど、もちろんそれらもリアリティを持って自分の中にあったわけじゃないから、あんな有名な人がなんで?…と思ったくらいだった。だいたい、ポンタさんと言えば一番緊張すべきドラマーの木村MYE稔さんでさえ、「へぇ、そうなの?」程度の反応で、つまりはメンバー全員がことの重大さを認識していたとは言えない状態だったと言える。
 まぁ今思えばそれはそれでよかったんだ。そんな感じでいられたから、ライヴ自体には特に影響も無くいつものようにやれたんだと思うもの。

 で、事件はライヴの終了後に起きた。
「コンコン。」
 楽屋のドアをノックする音。返事をすると件のスタッフさんが顔だけ中に入れながら言う。
「ね、ポンタさんが呼んでるよ。」
 「は?」である。思わずメンバーそれぞれで顔を見合わせたことを思い出す。で、思わず確認する。
「呼んでるって…ポンタさんが?…俺たちを?…なんで?」
 その時のスタッフの方が見せたいぢわるな表情は今でも思い出せる。
「いいから早く。待たせちゃヤバイって。」

 正直言おう。行きたくなかった。だってそれまでに聞いていたポンタさんの逸話の数々はもうとんでもないものばかりだったから、絶対ロクなことにならないに決まってると思えた。なのでかなり躊躇していたのだが、「行かないとやばいんじゃない?」という、メンバーの中ではかなりまともなキーボードのぷりしらさん(現在の…というか当時から私の嫁)の声に押されるように楽屋を出た。

 ポンタさんは遠目にも普通ではなかった。隣にいる女性に半ばよりかかっている。かなり呑んでいるだろうことは容易に想像がつく。嫌な予感しかしない。となれば次に起こるのは消極的な誰が矢面に立つか争いだ。ふと気がつくと、メンバー全員がいち早く自分の後ろにいた。いや、気づいてからでもそこは悪あがくよ。ということで、すれ違うことも難しいくらい狭いそのライヴハウスの階段を再度一旦出口に向かって戻ろうと試みると、普段は連携なんてしやしないメンバーたちが面白いくらいにちゃんと連携して、それぞれがちゃんと進路を阻む位置にポジショニングしている。それぞれの顔を見ると無言のまま、早く行けと言っている。くそw

 ということでやむを得ず自分がポンタさんの正面に立つ。目と目が合う。マジで怖いw しかしその瞬間ポンタさんはニヤリと笑った。
「いやぁ、面白い。面白かったよ。君らみたいなのがもっと出てこないとな。日本の音楽は面白くならないよな。ということでこれからも頑張ってくれ。」
 正直言おう(その2)。ポンタさん言葉はマジで呂律が怪しくて、必死に耳を傾けても明瞭には聞き取れず、しかし聞き返すなんてことをしようもんならいきなりぶっ飛ばされるんじゃないかとも思うので死ぬ気で聞くと、おそらくはこんなことを言ってくれているように思えた…というレベルの認識。
「あれ? 今ひょっとして褒めてくれた?」
 相当予想外だったのでややキョトンとしながら反応に困っていると、ポンタさんはもう一度ニマッと笑って、「じゃあな」的なことを言って颯爽と去って行った(いや、その後もなにかいくつか言ってくれていたように思うんだけど、それはもう覚えてない)。

 その後はもうずっと有頂天だったのは分かるでしょ。ずっとニヤニヤしっぱなし。なんたってあのポンタさんに褒めてもらえたのだ(泥酔していたとは言え)。いやぁそれはもううれしいに決まってる。
「俺たち行けるぜ。」
 いや、もう行けちゃったような錯覚にさえ陥っていたかも知れない。まぁ、そのくらいその日は幸せな気分で帰路についたということですな。

 まぁ人間、乗せられると調子に乗るというか、期待値というものは際限なくふくらむもので、その後CD作品「crimson char」をリリースした際には、それをポンタさんに送って聞いてもらおうなんてことになった。
「もう覚えてないかもよ。」
「あの時酔っ払ってたしな。」
「でもあれだけ褒めてくれたんだからひょっとしたりして?」
 いろいろな感情が交錯する…というかこちらも酔っ払いながらそんな話しをしているのだからやや支離滅裂になりながらも、まぁダメ元で送るだけ送ろうぜということになった。
 もちろんなんの反応もない。時間はなにもないまま流れ、自分たちも割とすぐに、CDをポンタさん宛に送ったこと自体を忘れてしまっていた。
 しかしこの話はこれで終わらなかった…ということで次回はさらにこの後の顛末で。

※ちなみに写真は栃木県那須町にある愛宕山公園で撮影した桜。
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 6D + EF24-70mm F2.8L II USM

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紫水勇太郎・清水 豊

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1966年、栃木県生まれ。

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