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Logo Mark歯を磨く様に演じる一人芝居『幸せのヤマイ』を巡って

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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ひとりで演劇活動を始めたばかりの頃、アロマテラピストやでパンを焼いている友人はじめ、マルシェに出店する方々と活動をすることが多かった。そして初対面時には、お互い何をしているとか何を売っているとかの話になるのだが、私は『役者です。芝居をやっています。表現活動しています。』と話すだけで、他の人の様に見せる物が何もなかった。
これが名が知れた人や、長年やっている人なら口で言うだけで、仕事に結びつくのだろうが、なかなかそんなわけにはいかない。そこで、
『作品を作ればいいじゃん!』
となった。ほんとに安直だが、作品があればデモンストレーションとして見せられるし、売るものが出来るわけだ。
そして、日頃から台本を書いている、これまた友人に一人芝居の執筆を頼んだ。
そこでまず、こんな会話が始まった。
友人『何着たい?』
私『え!?特に…。まあ…、セーラー服とか…着てもいいかな。』
苦し紛れにそう言った。特にセーラー服が着たかったわけでもないし、何が着たいという衣装案等なかった。そこはどうでもいいから、芝居の脚本が1本欲しいわけよ。
今では私も台本を書くからわかるのだが、なかなかそう容易く脚本が書けるものではない。彼女としては台本を書く題材を絞り出したかったのだ。しかし当時の私には無意味と思える会話で、芝居作りが始まった。
スタートしたものの待っても待っても台本が出てこない。
お世辞にも筆が早いとは言えない彼女をせかしせかし、彼女の『うん大分書けてるよ。』の言葉に“本当は進んでないんだろうな”とわかりつつも、その蕎麦屋の出前の「今、出ました!」状態が繰り返され、やっとやっとで短い13分位の一人芝居が出来上がってきた。
タイトルは『幸せのヤマイ』。
台本を初めて読んだ時は「なんじゃこりゃ!」と衝撃のはしる台本でございました。
あらすじはざっくり言うと、ポジティブ思考はどんなに良いのかを女性が語り始め、ずーっと言っていて、最後にはこんなに無理やりポジティブでなくてもいいのかなぁ?なんて思いつつも、ポジティブ状態から抜けられない話。そして全身体とテンションをほぼマックスに使う一人芝居。稽古を3回続けると体育会系の私でも息が切れる。
勿論制服が衣装。そりゃ全身全霊ポジティブじゃないとこの年になって制服は着られないよ。
でも、凄いことに、極限のポジティブさんの話なので、セリフがほぼ全てポジティブシンキングなわけで、それを口に出し、練習しているとなんだか素の自分もどんどんポジティブになっていく。確かそれを作っていたのはある年の冬の時期で、自転車をこぎながら、1人でセリフを口ずさみ、初詣に行った記憶が今だに残っている。私とすれ違った人はその時何と思っただろう(笑)。
そして初の公演は、一人芝居と体で表現をするグループとの合同作品として作ることになった。本番は満席の大谷石蔵スタジオで観客が引き気味で観ている中を、不思議な動きの人々と共に高校生が着る制服で駆け回りました。ちなみに観客が引き気味な状態も、この芝居の正しい観方だと演出が申しておりました。
その後に行われたビギナー講師陣デモンストレーション会でも、和室をツインテールに制服、お膝を出した短めのプリーツスカートと白いソックを履いて駆け回り、見事にご覧いただいた会社の方から、表現講師の仕事、しかも県の仕事を、まだ個人として表現の仕事がほぼない時代に頂いたのだ。
本当、制服&ポジティブシンキング恐るべし!である。

ドキュメンタリー「コロナとアーティスト」上映予告

2020年10月25日、宇都宮市の大谷石蔵スタジオ「be off」に3人のアーティストが集い、観客の前に立った。
「アートヴィルス」と名付けられたこの試みに込められた思いと当日のパフォーマンスの貴重なドキュメンタリーが完成した。

ドキュメンタリー「コロナとアーティスト」完成上映会&トークショー

日時:2021年1月10日(日)14:00 / 16:00(入れ替え制)
会場:「be off」 宇都宮市吉野1-7-10 TEL028-689-8661
料金:一般1000円、学生500円、小学生以下無料(保護者同伴)
定員:各回50人(マスク着用、入場時に検温、来場者名簿記入)

トークショー出演
妻木律子、鵜飼雅子、小川倫生(10/25出演者)
鈴木智(映像監督)、ベイトオル(音楽制作)

御予約は「be off」までどうぞ。
メール
※駐車場が少ないため、公共機関をご利用ください。
 東武宇都宮南駅北口より徒歩1分。
 関東バス 南宇都宮駅前下車30秒

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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