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Logo Mark歯を磨く様に演じる人は物事を…

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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先日、心理学の放送を聞いていて、面白い事を耳にした。
『人は自分の見たい様に物事を見る。』のだそうだ。
自分の生活を振り返ってみると、最近物事が進まなくてやきもきする。それは上の状態が関係しているのかもしれない。
“こんな事を言ったら相手が嫌に感じるかもしれない”
“私の本意が伝わらないかもしれない”
そう思い、簡単に済ませそうな事でも頭の中がグルグルして時間が取られて困ってしまう。特にメール。自分も相手を見たい様に見、相手も私を見たい様に見るからしょうがないのかもしれないが、どうにかしたい…。
そんな好き勝手な見方をする相手に対して、表現者は表現をする。演劇にしろ美術にしろ音楽にしろ。
ただ表現したいだけで表現する者もいるだろうが、わかってもらいたかったり、認めてもらいたくて表現する者も多いのではなかろうか?
言葉での説明ではなく、唯一作品が表現伝達物となるので、相手に本意を伝えるのはとても難しい事だと思ってしまう。
でも、『いいじゃん。好き勝手に見てもらえば。楽しんでもらえば。』と、ある意味割り切る事が出来る部類の表現は救われるのかも。
芝居をしていて個々の役者はその役の状態がわかってもらいたくて役を追及する。
自分の場合、家だけでなく、街中移動中の自転車でも、自分の中に入ってきた台詞を時おり口に出して走る。台詞と共に、身体の感覚もその時の状態になって走っている。それを繰り返すものだから、その時の心身が自分なのか役なのかわからなくなっている。
明るい楽しい、なんとも単純な役(おそらくそんなものはないだろう)なら良いが、どんより出口の見えない役の場合、心を病みそうになる。
まさに現在、常日頃の舞台より、ちょっと大きな舞台の稽古が進行中で、私の担当の仕事もなかなか進まず、役も、
『どうしてこんなんになっちゃったんだろ〜、あれはなんだったんだろ〜。』
と、あくまで雰囲気ネガティブ的な役なもんだから、それをひきずってか、朝からモヤモヤして外は晴れていても私の周りは今にも雨が降りだしそうな曇天模様。
そうそう、昨日も演出が言っていた。
『〇〇(役者)がこの一瞬だけほんの薄っすら浮かび上がって、すぐ消えてなくなってもらいたいんだよね。こう言っておけば鵜飼が何か考えてくれるだろう。』
なんてマジックみたいな事を言い出すので、また、モヤモヤの種が増えた。
頭の中で常に時限爆弾に取り付けられたカチッカチッというリミットを刻む音が聞こえてきているにも関わらず、こんな事が毎日の様に積み重ねられていき、なんともスッキリしない状態である。
昔は自分より年上の人が多かったのでその先輩方に作業中、
『本当に初日、開くんですかね?(不安調)』
なんて聞いて、
『開くに決まっているよ。』
と怒られていたが、今となっては私より年上は1人しかいない。そんなことを言っても進まない。
そして、これだけ私の精力を注いで作った物だったり役だったりなので、
その役としての呟き、
『わかってよー!』
なんですが(勿論、私だけでなく他の部分は他の担当の人が頑張っている)、なんせやっている事が集団表現の演劇なもんですから、あくまで1作品全体が良かっただの悪かっただの、興味があっただの、考えさせられただのとなってくる。
そうなんです。悲しいかな、悲しくない!
ちょっと脱線しましたがやっぱり、
『人は自分の見たい様に物事を見る』
でいいんですよ。
*注)いろいろ書きましたが、やっぱり芝居は大変ですが楽しいものですよ(笑)。

「コメット・イケヤ 2021」

空に新しい彗星が一つあらわれた日に、地上で一人のサラリーマンが蒸発した。
盲目の少女と、星を観察する青年の目を通して描かれる孤独な宇宙の物語。

今から55年前、東京オリンピックの2年後の1966年8月31日、NHK-FMでオンエアされた寺山修司作のラジオドラマ「コメット・イケヤ」は、人と人、人と星の関係を細やかに描いた作品。
そんな作品を、新型コロナという新たな事象によって、普段思っている以上に自分と世界がつながっていることを思い知らせた今、ラジオドラマではなく、そこにいるひとが演じる演劇として皆様に味わっていただければ…。

作:寺山修司
脚本・演出:片岡友美子
出演:清水愛子、将、丸井裕也、小島美恵子、鵜飼雅子、ゆうや(遊幻空間)、GAR(劇団ネクスト・ステージ)、常盤美紀(舞台芸術創造機関SAI)
声の出演:大島朋恵(りくろあれ)

日程:10月23日(土)、24(日)、30日(土)、31日(日)
開場時間:12:30 開演時間:13:00
開場時間:17:30 開演時間:18:00

会場:アトリエほんまる
栃木県宇都宮市本丸町1-39 お問い合わせ:080-3545-6808 オフィシャルサイト

動画配信も行います。
詳細は、アトリエほんまるWebサイトをご覧ください。
本公演はバリアフリー上演に取り組みます。
是非ご参加いただき、感想をお聞かせください。

チケット:一般2,000円、高校生以下1,500円
※料金は当日清算、高校生以下は学生証の提示をお願いします。
予約取扱:カルテットオンライン
予約ページ

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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