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Logo Mark脳内伝言板ディジュリドゥとの出逢い (1)

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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何度か沖縄には来ていたが、沖縄本島は離島へ行くためのフェリーの乗り継ぎで泊った事あるだけで、キャンセル待ちする為フェリー乗り場で野宿した事しかなかった。

一度沖縄本島も巡ってみようかと思い、ある時島に降り立った。

那覇では知り合いの紹介で安いゲストハウスにしばらく泊まる事にした。一泊1000円くらいの安宿だった。
上手く言えないがゲストハウスでは普段キャンプ生活で知り合うタイプとはまた少し違うタイプの旅人が多いように感じた。
キャンパーは少しサバイバルチックで日々そこでの生活の基盤から確保する必要があるのでそういったところにかける時間が多くなる。悪天候でも快適に過ごしたいので結構大変だ。宿に泊まるとお金はかかるがそういったところに時間をかけなくても良い分、旅そのものに時間がさけるというメリットがある。どちらも楽しく魅力的だ。旅のスタイルも人生も大なり小なり拘りがあるもので経験を積むと少しづつ拘りが減り選択肢が増えるように感じている。
私も当初キャンプ場にも入らずどんなに悪天候でも宿にも泊らずというような変な拘りがあった。今考えると拘りではなく自分に対するチャレンジだったのだが、その頃は考えを曲げるのが負けるみたいな気がして嫌だったことを覚えている(結構めんどくさい性格だ)。1〜2年はそんな思いが強くあったが、様々な経験をし多分自信が付いたのか次第にキャンプ場や宿に泊まる事も受け入れられるようになっていった。

そこで出会った旅人が黒くて長い筒のような物を吹いていた。今考えるとその音を聞いたとき私の中で何かが目覚めたんだろう。出逢ったというべきか。ただ、その時はここまで私の人生に長くかかわりを持つとは思ってもみなかった。

イダキ、イキ、ディジュリドゥ、呼び名は様々だ。

その形状から想像できない音で、大地を感じさせる重低音と共に宇宙的な不思議な高音がする。大地の音のような宇宙の音のような不思議な音色。

何というか心地いい。

今から20年前ディジュリドゥはほとんど知られておらず一部のバックパッカーから広まったとされているがまさにリアルタイムで出逢った感じだった。

不思議な演奏方法で循環呼吸という奏法を使い切れ目なく吹き続ける。
鼻から吸って口から吐く…う〜ん難しい。
音の出にくいものでは音を出すだけでも難しい。
楽器の壁にいきなりぶち当たる種類の楽器だ。
中学生のころギターを手に入れれば自在に弾きこなせるものだと思い込み、いざ手にしてみると何をどうしていいのかすら分からなかったのを思い出す。

それでも少し教わると音が出た。循環呼吸も理解し、なんとなく使う事ができた。
覚えたばかりの循環呼吸を忘れたくなくて、その後の旅では循環呼吸しながら歩いたり暇さえあれば循環呼吸をしていた。
楽器が無いので出来ているのか出来ていないのかも良くわからないのだがそれでも続けた。

それからは海岸で筒状の物を探すようになった。
しばらくして道路工事用の電気を立てるプラスチック製の筒状の漂流物を見つけたので、それにコーキングで吹き口を作った。これが自作ディジュ第一号だった。ちょっと太めで吹くのが難しいタイプだったが、当時はそんなことも分からず、暇さえあれば吹いていた。なぜかはわからないのだが楽しくて仕方なかった。
今考えれば水道管を買うのが手っ取り早いのかもしれないが当時はそんなものが鳴るのかさえもわからなかったしそんなことしている人もいなかった。まだインターネットもそれほど盛んでなかったし今のような情報は足を使って仕入れたり、自分で試してみるしかない様な時代だった。

地元に帰りしばらくして桐の樹の伐採の仕事が入り、まっすぐ伸びた桐の枝を見てこれでディジュリドゥを彫ろうと思い立つ。
持ち帰った桐の木を丸鋸で二つに引き裂いて中を彫り再び張り合わせて制作してみた。
思いのほか上手く出来て、しばらくはそれを愛用していた。

それ以後気になる木が手に入るとそれで制作するようになる。音は振動なので当然硬くて重たい木の方が音量やキレは良いのだが形状次第では柔らかい木でも十分良い音を得られるので彫りたいと思う素材に逢えばそれで制作していた。二つに割っているので中の空気の流れや厚みもコントロールできる。少しの振動を効率よく増幅させるように試行錯誤しながら制作している。私の理想では吹きやすくて(音が出やすくて)音が大きいディジュが好ましい。それは自ずと音の切れもよくなるし、微妙な変化で大きく音色が変わる。

これまで桐、タモ、カリン、樫、栗、桜、檜、竹、高野槇、陶器、紙、塩ビ、etc様々な素材で制作してきたがどれも皆、素材にあった作りをすれば皆魅力的な音を発してくれた。

         〜ディジュリドゥとの出逢い(2)へ続く〜


Brain II 【未来の記憶】より

【旅】

多分皆、自分の中に眠っている何かに期待して旅に出る

           白砂勝敏


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鹿が樹の皮を食べて樹が枯れる。
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割合の問題で鹿が増えると枯れ樹も増える…。
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その音は皆にどう響くのだろうか。
その音は鹿にどう響くのだろうか…。

ミズキ 2015年制作 個人蔵

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

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