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Logo Mark脳内伝言板美しい道具たち 2

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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ペンチやヤットコといったものは、私の元へやって来た時には錆びて動かない物が多い。こういう物は廃油やエンジンオイルの残りに一晩つけておく。それでたいがいのものは動くようになる。動かなかったらひっ叩く(叩く)。
必要に応じて刃先などを自分の使いたい形にサンダーなんかで作り替えたりできる。
綺麗に油を洗い落としサンダーや紙やすりで錆を落として、錆止め加工を施す。

錆止めに使うのは庭に生えているお茶の木と葉っぱ、あと酢を少々。
ブリキで作った長細い器に、道具と水、お茶の木を入れてぐつぐつ煮込む。すると赤さび(普通の錆)が黒錆に変化する。黒錆は酸化しにくく要するに錆びにくくなるのである。そのあとステンレスのたわしで磨くと凄く美しくなる。
お茶の木はとても重宝でタンニンを多く含む。私はこのほかにも染め物にも使用している。もちろん新芽の時期には摘んで、天ぷらや少し蒸して軽くもむだけでかなり美味しい生茶が楽しめる。

陶芸、木工、鉄鋼、石の加工、ガラスの加工等色々な事がやりたい私。お金に余裕があればいいのだがそういうわけではない。仕方がないから時間をかけるしかなく、まずは道具を作る所から始めなければならない環境なのだが、最低限の素材は何とか揃う時代に感謝しながら生きている。

自分の手の大きさや指の長さに合わせた道具を作るのは大変だか、一度作れば一生使える物もある。元の素材から理解しているものならば尚更愛着も沸く。

道具が増えてくると何処に道具があるか探している時間の方が長くなってしまう事が結構あるので、私の場合はなるべく見えるように道具を置くように工夫している。アトリエの中は道具タワーというのか様々な道具が陳列している。

先日、尊敬する美術家の大先輩が訪ねてくれ、「工場や人の作業場で工具や道具を見る事はこれまでにも何度もあったが、こんなに美しいと思った事は無い。」と言われそういうつもりで並べたわけではないのだがなんだかとても嬉しく思ったし、確かにそうかもしれないなと気づかされた。それは本質的な美しさについて改めて考えさせられる言葉でもあった。

atelier SHIRASUNA展にお越しいただいた方々も道具の多さに驚かれたり興味深そうに眺めたり写真におさめていく人も数多くいた。やはり道具って魅力的なんだろうと共感出来た事もとても嬉しかった。

美しい道具たち 完


美しい道具たち 1
美しい道具たち 2

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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