2025/06/11
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
縁あって集まってくれる素材と工具に囲まれて、とても幸せなんだけど、制作にかける時間以上に素材の管理や道具の整備に時間がかかる。お金をかければもっと制作のみに集中できるのかもしれないが、いつからかそういった事に時間をかけることも制作に大きくかかわっていることを肌で感じている。これは上手く言葉にできない。ただ楽しいという事の先に私の中の核みたいなものが求めている感じなんだ。
例えばノミやカンナやヤスリなんか頂くことが多いのだが、もちろん錆さびだしカンナの台もそのままではねじれて使えない。錆を落として使えるところまで刃を研ぐ。これが錆が深いことが多いのでその辺を見極めてカンナとして復活させるのかそれとも別の用途に加工するのか決める。まぁ基本的に古道具の場合、使っている鋼はいいものが多いので何かしらに応用が出来る。カンナの台もまずは平らに削る。カンナの台ってまっ平だと抵抗があり過ぎて使いにくいので基本的に何か所か凹ませる。そうやって手をかけることで愛着がわく。ものってそうやって愛情をかけて手をかけるとなんだか生命力が宿るような気がしてくるのも不思議な感じだ。そういうものに囲まれていると、とてもポジティブなものを感じる。また私にとっては単なる道具というよりは、なくてはならない大切なもの感が強くなっていく。
日々やりたいことがコロコロ変わるし、同時に違う事もしたくなる。困った性格なんだけれど、しかたがないからそういった感情を逆手に取るように受け入れて、思った通り行動していく。当然効率を考えたら最悪なんだけれど、自分でも制作し始めたときは、何が出来るかわからない状態で創作を進めていく。少しの不安と大きなワクワク、これが私にとって最高の快感になっている。出来上がった喜びも確かにあるのだけれど、これが創作中ずっと続くんだからたまらない。だから出来るだけアトリエにいたい。創作の種(閃き)が出来た時、すぐさま実行できるから。
あと、この仕事のいい所は何処でも仕事が出来るということ。ちょっと空いた時間があればすぐに頭の中は想像の世界へ突入していく。ただ紙とペンがないと忘却も凄まじいのでいつもペンと紙は持ち歩いている。パソコンが使える場所なら普段後回しにしがちな事務作業や、これまで思いついたことを書き留めているものを整理したりもできる。私はパーカッションをやるのでそういったものの練習もできる。この生き方になった時から暇という事がない。ただ私の場合問題なのは、計画性がないというか。あえてそう言ったものを排除してしまうので、形として表れにくいというか効率が良くない。
計画性や目標を持ってやる方が形になりやすいし、対外的な評価も受けやすいのではないかと思う。それでも私は人に迷惑が掛からない事ならば自分の気持ちを最優先している。結果とっ散らかっていく。まぁそれもやり続ければやがて何かの形に仕上がっていくこともこれまでの経験から分かってきているので、焦らずマイペースで進んでいる。
また話が脱線してしまった。
アトリエを直すにしても材料が必要になる。持つべきものは友というのか、解体する家や大掃除して不要になった家具や廃材なんかがあると声をかけてくれる方が何人かいて、そういった家具をバラしたり廃材にカンナをかけたり磨いたり、ねじれた材木を工夫して使ったり、手間は異常にかかるけど素材の特性を活かし使う場所や使い方をその都度考えながら直していった。ただこの後どんな素材が手に入るかは未知なのでそういった事を加味しながらの作業だった。まぁ木造のいい所は自由度が高いので何とかなるだろうとは思っていたけど。結果購入したものはビスとコーキングとかボンドとコンパネ数枚くらいだった。ただ私の手間賃を考えれば普通に数百万になるのだけれどそれは気持ちのいい空間ができれば感覚的にはペイできる。
そんなこんなで作業スペースと倉庫スペースとほんの少しの生活スペースを確保することが出来た。ストレスが無く作業が出来るというのは本当に嬉しい。ここに来るまでは、木を削った時に出る細かい埃が風に舞うので迷惑をかけないかとか、チェーンソーや電動工具の騒音だったりすごく気を使っていた。それでも何か所かそういった事が問題で使えなくなってしまった場所もあった。
ここは田舎なので昼間は周りでもチェーンソーや草刈り機が日常的にブンブンいっている。埃も隣との距離があるので問題ない。あともう一ついいことは昼間なら防音なしの生ドラムをバンバン叩くことも可能という環境。数件となりでも毎日レッスンしているのかピアノ弾いている。私は夜に音が出ない作業が出来るように、昼間は音が出る仕事をしている。いつも寝るのは朝で、何もなければ目が覚めるまでは起きないと決めているので起きるのはだいたい昼過ぎくらいになる。このペースが一番ストレスないし作業も進む。
ここ数年陶芸をやる環境を作りたいと思っていたのだが中々時間が取れずにいた。それでも本当に少しずつ環境を整えていった。やっぱり陶芸って彫刻や絵画と比べてみると結構特殊なんだなぁと改めて思う。3年位前から構想していたのが最近ようやく小規模ながら実現に近づいてきた。陶芸制作もやるために作業スペースや棚の位置などかなりアトリエ内を変えている。あとは初めてからまた必要に応じて変化すればいいかなぁというところまでようやくこぎつけた。
また人のアトリエというのは面白いもので、その人の仕事へ向かう姿勢や正確など色々なものが見えてくるし、見たことない道具とか素材とか、興味深いものが沢山ある。一種のテーマパークみたいな感じだ。展覧会のオープニングパーティーの二次会なんかでよく誰かのアトリエで朝まで飲み明かすのは作家生活のささやかな贅沢みたいなものだ。そういう時間を共有し、各々プロフェッショナルな人たちの制作に向かう姿勢や思考を話し合うのはとても楽しいし良い刺激を受ける。
どのアトリエにお邪魔しても、感じることは限られた空間の中で「1mmでも広く使いたい」みたいな思いが垣間見える。当然私もそういう感覚が常にある。
そんな感じで今後も日々アトリエ増殖計画は続いていく。
おしまい
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
準備中