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Logo Mark脳内伝言板石に心奪われて 5〜巨石巡り

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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「益田岩船」。山の中に巨大な石。
大した看板なども出ておらず…。そこそこ広い駐車場(無料)に車を止めて、ここでいいのかと思いながら、ちょっとした山登り的な山道を登っていくとそれは突然姿を現すと言った感じで、山あるきをしていると突然大きな石がありそれには明らかに細工が施されており、上から見下ろせる場所までくると全貌が明らかになる。
なんの知識もなく初めてみた巨石は、なんとも宇宙的なものを感じずにはいられない程の圧倒的なたたずまい…衝撃的であった。TOPの写真が益田岩船なのだけれど写真で見ても結構なインパクト。山の中で見るとUFOみたいだった(笑)。
横に石を砕いた跡があり何とか登れそうだったのでよじ登ってみた。大きな四角い穴が2つ彫ってある。見事な仕事。そしてこれまた美しい。一体何なんだろうと思いながら写真を撮ったりゴロゴロしたりしていると、おじさんが一人やってきた。この方、私が登って行くのを見たそうで、朝からこんなところに来るやつはマニアックな人だろうと思って登ってきてくれたという。遺跡が好きでこの土地に移り住んだとのことで色々詳しく教えてくれた。ラッキーというかホント色々な人がいる。世の中面白い。

この巨石には横160cm深さ130cmの四角い穴が2つ並んで開いているのだが、片方は雨水が満タンで、もう片方は少しだけ水がたまっていた。そして下側の面から水がしみ出ている場所があった。ということは片方の穴にはクラックが入っていて水がもれているらしい。おじさんの話では、お墓をつくっていたのだが、途中でクラックが入ったか、もしくは元々入っていたのに気が付き、仕方なく制作途中で放棄したのではないか?というのが、今のところ一番有力な説だということだった。なるほどそういう目で見れば納得のいく造形で、今現在の状態をコロンと90度回転するとまさに2つの石室になる。それと確かに底部分をある程度平らにするために石を割った跡もあり、屋根部分は削ったのかそのままなのかわからないが、起き上がればそのまんま屋根のような形になる。発想力というのか想像力って凄いなぁ。

「二面石」。
橘寺(たちばなでら)にある「二面石」ここは聖徳太子が誕生したとされる場所。高さ約1m程の石彫刻 左右の面は善相と悪相が彫られているようで、人の心の二面性を表現しているらしい。昔は2面性で良かったのかもしれないが、色々複雑に絡み合う現在的には何面必要なのか? もし自分が彫るなら善と悪とグレーゾーンの3面かなぁ~などとくだらないことを思いながら眺めていた。
橘寺(たちばなでら)にはその他にも「三光石」や「阿字池」などもある。ここの観音様が置かれている所がとても心地よく感じた。その傍らに数点の鬼瓦が展示されていた。これがどれもかっこよくて印象的だったなぁ。鬼瓦もシンプルなものになっていき、瓦屋根もだいぶ少なくなって、時代と共に色んな事が大きく変わっていく。冷静に考えるとあんな大きなものを屋根の上にのせるのはかえって危険ではないかとも思えるのだが、魔除け的な事が主かもしれないが、先人達の粋を感じたりもするし、美の追求にも思えてくる。

「鬼の雪隠」。
こちらは石棺らしい。こちらも酒船石同様に高取城を建てる際、石垣の石材として割り取ろうとした後がある。

「高松古墳」「キトラ古墳」。
遺跡の発見の経緯にも面白さを感じる事があるけれど、高松古墳発見の経緯も、私的には面白かった。村人がショウガを貯蔵しようと直径約60cmの穴を、掘ったところ、穴の奥で擬灰岩の四角い切石が見つかったことが発端となる。その後、古墳近くに遊歩道設置のための調査が必要となり、奈良県立橿原考古学研究所に発掘調査を依頼。そこに住む人が偶然見つけるパターンが私は結構好きだ。また、高松塚古墳壁画発見の直後、付近の住民から「近くに似たような古墳がある」と知らされ、これがキトラ古墳の発掘調査に繋がる糸口となったらしい。地元の人も昔からなんかあるんだよねぇと思いながらも、これといって話題にも上らなかったのか、考古学自体が近年の学問らしいので、なんとなく頷ける。知らないってことは無いものと同じような物なので、人生においてやはり知るという事は、一つ大きなキーワードなんだなと思う。

考古学者もホント凄いと思うのは、慎重に慎重に事を進める。膨大な時間を掛けたり、あえて手を付けなかったり。確かに一度手を入れてしまえば温度・湿度・微生物など様々な環境の変化に晒されるわけだし一度崩してしまえばもとに戻す事は出来ないのだから、いわば人類としての責任が生じる。カメラの進化や今でいえばドローンなど、文明の力も多大に関係してくる。予算の問題なんかも大きいのだろう。以前何かで見たのだが、南極の地下に湖を発見したので、氷に穴をあけて調査したいのだが、穴をあけた瞬間、長い間閉ざされた環境なので予測不能な出来事が起こり得るというので慎重に進めなければならないという。どれだけ慎重を期しても完璧にというのは難しいのだろうな。何しろ未知の領域なのだから。まぁ見たいけれど見れないというのもロマンがあるし、より想像を掻き立てられる。その湖も数年前ついに穴をあけて調査をしたと何かの記事を見た。そうやって人類は進んで行く。

石に心奪われて 6〜巨石巡りへ続く。


石に心奪われて
石に心奪われて 2
石に心奪われて 3
石に心奪われて 4〜巨石巡り
石に心奪われて 5〜巨石巡り
石に心奪われて 6〜巨石巡り
石に心奪われて 7〜巨石巡り

益田岩船下から

TOPの写真の益田岩船を下から見た所。
ここからよじ登れた。

鬼の雪隠

田園風景と遺跡が何ともいい感じだった。

高松古墳

高松古墳で夕暮れまで過ごす。
静かで良い所だったという印象。

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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