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Logo Mark脳内伝言板石に心奪われて 7〜巨石巡り

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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山添村を後にして柳生の里へ向かう。柳生という地名もかっこいいな。天石立神社(あまのいわたてじんじゃ)と一刀石という所へ向かったんだけれど、なんでここに行こうと思ったのか全く記憶にない。なんかアンテナに引っかかったんだろう。ここもまた人気のない駐車場に車を止めて、ここでいいのかなと思いながら、軽いハイキングといった感じで山道を登っていったように記憶している。今ググってみたら2020年に鬼滅の刃というアニメが流行り有名になっているみたいだ。私が行った時にはまだマイナーだったのだろう、結構長い時間滞在していたと思うが、誰にも会う事は無かった。

木漏れ日の中、のんびり歩いて30分ほどで到着。
小さな鳥居をくぐり少し進むと、大きな苔蒸した岩が現れた。これがまた何というのか美しい。天石立神社(あまのいわたてじんじゃ)名前の通りか大きな石が立っている。古代日本における自然崇拝の好例として注目される場所らしい。思わず納得してしまう。想像以上に神聖なものを感じずにはいられない。なんだろうこの空気感ピリッと張りつめた感じと木々の生命力、瑞々しさ、数年たった今でも鮮明に思い浮かぶ位印象的な場所である。上手く言えないが、私の体の奥底に眠るもの(DNAみたいなものなのかな?)を強く刺激される様な感じだ。忘れかけた何かとても大切なモノを呼び起されるような…。そういった経験は出来そうで、そうそうできない経験だ。

更に進むと一刀石があった。
これがまた想像をはるかに超える大きさと圧倒的存在感に感動。TOPの写真から大きさは想像できるかと思う。なにより。柳生一刀石、みごとに真っ二つに割れている。昔、柳生新陰流の始祖、石舟斎宗厳が、ある夜一刀のもとに天狗を切ったと思えば実はこの岩であったと伝わっている。先ほど見た天石立神社では神域みたいなものを感じたが、こちらはまた全然違った感覚で、言葉ではうまく言えないが、思わず感動してしまうといった感じであった。あまりの気持ちよさに、思わず数時間をこの場で過ごすのであった。

こうやって遺跡や巨石を巡ってみて、色々と考えさせられる。人類は太古から、石板や壁画や文字等を使って、なにかどうしても伝えたい事や大切なことを伝えようとする。だが、どこかで時代が途切れたり、時間と共に、文字が変わり解読不能で読めなくなり、事実は失われてしまう事の方が多いのかもしれない。それでもその時代時代に読み解くインスピレーションやロマンを残す。
余程伝えたかったか、証を残したかったのか。現在を生きる私にも、わかるような気がする。文字はよめなくなるが壁画や石造からはイメージが伝わりやすい。例え勘違いだったとしても、何かが伝わる事で新しいイメージが生まれ、更に新しいモノが生まれる。クリエイティブっていいなぁと思える瞬間である。

地球が長い年月をかけて出来上がった自然の造形、過去の人々、遺跡、作品、そういったものが時を越えて今を生きる私と呼応する感覚が、時々、あったりもする。何とも言えない面白さがあるものだ。

石に心奪われて〜そもそも巨石巡りの事を書こうと思ったのだが、石に心奪われてというタイトルにしたが為に、自分の人生と石との関係を色々な角度から書く事になった。こうやって言葉に起こす事って不思議な感じがあって言語化することで見えなかったものが見えてくる事があったり、良くも悪くも頭の中というか心の中が整理されて、書き終えると空っぽになる感じがある。私はいつも空っぽの状態でいたいので、文章を書く事は結構気持ちいい。若い時にはわからなかったが、様々な経験をする事で学ぶことも多く、空っぽにすることで新しいものが沢山入ってくる事がわかっているから。

今回改めて石に焦点を当てみて石ってやっぱり魅力的だと感じている。

        完

TOPの写真は「一刀石」です。


石に心奪われて
石に心奪われて 2
石に心奪われて 3
石に心奪われて 4〜巨石巡り
石に心奪われて 5〜巨石巡り
石に心奪われて 6〜巨石巡り
石に心奪われて 7〜巨石巡り

天石立神社(あまのいわたてじんじゃ)

ご神体。とても神秘的であった。

天石立神社(あまのいわたてじんじゃ)

ご神体。別角度から。

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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