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Logo Mark脳内伝言板創作ヒストリー 素材と創造の物語 - NO.2 ホシノタマゴと植物種子

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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今回はホシノタマゴの制作ヒストリーを書いてみたいと思う。

ホシノタマゴとは土に植物の種と少量のセメントを混ぜ、丸く成型して固めた作品である。単体で展示する事もあるのだが、基本的に数百個のホシノタマゴを空間に合わせて展示している。

この作品を見た方から、時々これは芽は出るのですかと尋ねられる事がある。これは何とも言えないのだが、例えばセメントも外に置いて風雨に晒されたとしたならば、数百年で朽ちてくるのではないかと思われる。セメントは水と化学変化を起こして固まるのだが、一週間ほどでかなりの強度に達し、その後、数十年間固まり続け、最強の強度になるのを境に劣化がはじまる。

この作品には少量のセメントしか使用していないので風雨に晒しておいた場合数十年で朽ち果てるのではないかと思っている。植物の種は物にもよるのだろうが数千年前の種が発芽するものもあるそうなので、可能性としては発芽する事も無くはないと思う。またセメントはアルカリ性なのでアルカリ性に強い植物や、今は雨自体が酸性になっている様なので風化したホシノタマゴから転がり落ちた種の環境がその種に適応すれば発芽する事だろう。

植物は数億年間、生き残る為に様々な進化をしてきたのだろう。例えば今年採れた種を翌年撒いたとしても総て発芽するわけではないらしい。勿論腐ってしまったり死んでしまうものもあるのだが、それよりも面白いなぁと思う事は、もし翌年総てが発芽してしまうと、その年に日照りや動物に食べられてしまったりすると、その種が絶えてしまう事をわかっているというのだ。だから種一つ一つに色々な性質が組み込まれていて、凄いものは火災のあった翌年に発芽する種なんかもあるらしい。これは地表面の温度を種が感知するらしく、高温を感知した翌年に発芽するようにインプットされているというのだから驚かされる。

私の作品に「休眠の解除」という作品があるのだが、これはハチの巣や、セミの抜け殻等に種をまいて発芽を待つという作品で、種の状態というのは休眠している状態であり、その種の発芽の条件に見合った状況がくると種はそのことを感知し発芽するのである。
まぁ現在地球上に存在する植物は人間が誕生する遥か昔から脈々と子孫を残し繁栄を続けてきた者たちであるのだから、冷静に考えれば不思議ではないのかもしれないが、人間目線で考えると不思議でいっぱいなのである。

私は種子の形にも魅力を感じている。どれも美しい。また植物には意識というか認識力や考察力といった考える力があるとしか思えない所も魅力の一つである。動物にくっついて種を遠くまで運ばせるとか、動物がいる事を明らかに認識しているとしか思えないし、どうしたらくっつきやすいかを理解し、その形に進化していく。その他鳥に食べてもらいやすくしたり、昆虫に受粉を手伝ってもらったり…。最近では離れた樹どうしも意思の疎通があることが判明してきているのだから本当に驚かされる。私たちが子供の頃教わった常識が随分覆されている。

あとホシノタマゴに内包している種についても時々質問を受ける事がある。これは普段の制作と同じで縁のあった種というか、私が出かけた先で偶々見つけた物で、例えばタンポポやススキ等は一個のホシノタマゴの中に数百粒の種が入っている物や、クルミやドングリ等の種が一粒だけの物、色々な種が入っている物、種が露出しているものなど様々である。

話がどんどん飛び火してしまったが、ホシノタマゴはアート作品なので実際に芽が出るか出ないかというよりも、ホシノタマゴを見た人の頭の中で何かが芽生えてくれるかどうか、想像の扉が開くかどうかの方が重要ではないかと考えている。
実際発芽している所を見てしまうと、見た人の思考を停止させてしまい、見た人から想像する楽しさを奪ってしまうのではないかと思っている。

以前、知人がやっている美術教室で子供たちがホシノタマゴをつくり、更にホシノタマゴの絵を描かせたものを見せていただいた事がある。子供たちの描いた絵は私の想像を超えたものが多くあった。ホシノタマゴから家が生えていたり、宇宙がとびだしていたりと。
もしホシノタマゴから植物の芽が出ていたものをみて絵を描いたならば多分殆どの方はホシノタマゴから植物がはえた絵を描くのではないかと想像してしまう。

次回はホシノタマゴの着想や展覧会について書きたいと思っている。

                    次回へ続く


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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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