2022/08/05
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
未来の扉の制作ヒストリーをふまえて今回の栃木県那須塩原市での展覧会について書いてみようと思う。
今回の企画は板室温泉湯宿きくや様 板室温泉大黒屋様、北風と太陽様 オートキャンプ場ハピスポ様 の4つの企業さまと黒磯駅前に2020年に開館した市立図書館みるる様の5か所で私の作品が見れるというもの。私としては、とても嬉しく感謝しかない。
今回は私の制作する作品群の中から未来の扉(平面・立体作品)に焦点を当て展覧会を企画していただく事になった。
未来の扉を描き出したのは2018年の事だった。
そうめん等が入っていた桐箱が幾つかたまっていたので、それに絵を描き始めたのが始まりだった。そうこうしているうちに偶然、桐の板材の廃材が手に入った。何故か解らないが桐という素材に惹かれていった。最初のうちは色々な物を描いていた。数日ほど桐と戯れているうちに次第に桐という素材に同調していく。桐は日本では馴染みの深い樹で古い箪笥などは桐で出来ている事が多い。湿気の多い日本で着物を保存するには向いているのだろう。水分を吸ったり乾燥したりとかなり呼吸をする樹であることを、絵を描く事で実感していった。そこで呼吸をするように、出たり入ったりする絵を描けるのではないかと思いたち、丸や四角だけで空間を描くようになっていった。
桐の板は普通のキャンパスなどに比べ絵の具を吸い込むので、その分奥まで空間を感じる事ができる。またとても柔らかく不思議な光沢があるのも桐の特徴で、そういった特徴を掴むと、柔らかさは薄くて優しい色になり、光沢は不思議な透明感を表す事ができた。そうやって未来の扉は生まれた。出たり入ったり渦巻いたりとただそれだけなのだが、それだけでも無数の表現ができるのだ。そしてこれがまた思いのほか楽しい。絵描きってこんなに楽しい事していたのかと心の底から思った。四十数年生きてきてようやく出会えた。
私の場合は、こういう事って人生において中々無い事なのだけど、過去にバイクに乗った時、魚釣りに出逢った時、アートに出逢った時、音楽に出逢った時、にも同じような感覚になった。でもそれってただ音楽を聴いていたり、演奏しているだけでは分からなくて、何かそういうものの引き金みたいなものを引く瞬間が訪れて、それに気が付いたら心の底から楽しくて、やめられなくなってしまうみたいな感じである。何はともあれラッキーなことに絵を描く楽しさを知ってしまったのだ。
例えば緑色の四角を描くとその隣に黄緑色の四角を描きたくなる。するとこの辺にこのくらいの大きさの黄色を描きたくなる。そんなふうにどんどんどんどん描いていくと、今はここを描いているのだが頭の中では次の場所を描いているといった状態が起こり、それが朝まで続くと、現在と未来の狭間がリアルになるというか…未来の扉が開いているというような感覚に出逢える。言葉ではうまく伝えられないのがもどかしい…。生きていれば、いい事も悪い事も沢山ある。だけどこの時ばかりはみんな忘れて没頭できる至福の時なのである。
キャンパスの形も変形にしてみた。色々な形をつくってみたが、だいたい同じような形に落ち着いていった。それは私の中で一番拡張していく感覚がある形で、壁に複数枚掛けるとより意味を増す。
通常、壁に一枚の絵がかかっていると、絵に注意が注がれる。だが変形のキャンパスを複数枚使いインスタレーションする事で白い壁が通路のように浮き上がって見えてくる。一枚だと絵しか見れないものが複数枚掛ける事で壁全体、空間を見れるようになる。虚と実を捉えられる。
私の感覚では、これもうまく言えないのだが、絵画は内側へ向かうものが殆どのように感じている。それに比べて、彫刻は外側に向かっている物が時々あるように感じている。私は絵を描くなら外側に向かう絵画を描きたいと思っていた。
初めてこの絵を発表したのは2019年の4月那須塩原板室温泉での個展「弥益(イヤシロ)の地へ」であった。私にとってはかなり大きな意味を持つ展覧会であった。
そこで未発表でしかも今までとは全く違うタイプの作品を展示するのは、いつになくリスキーだった。通路でつながった2部屋の展示会場だったので、一部屋は水の記憶(石の作品群)そうしてもう一部屋を未来の扉(絵画)を展示した。来場者の殆どの方が別の作家の作品だと感じたようだった。色のない世界(水の記憶)と色の世界(未来の扉)と、全く違う作品だったが、かえって会場の状態は相乗しているように感じたし、来場くださった方々の意見も好印象のようだった。我ながらよくあそこで発表したなぁと思う。内心では結構このタイミングで発表するか悩んだように記憶している。ただ空間的に面白いかなぁと思ったのと流れ的に自然だったので、勇気を振り絞って発表してみた。
その後もタイミングがあれば未来の扉を発表していく事が出来た。流石に意見は賛否両論という感じだが、私的には描きたくて仕方ないのだから仕方ない。私はトリッキーなことをしたいわけではない。ただ出逢った素材に準じて制作することが楽しくて仕方ないだけなので今後もそこは曲げずに進んで行けたらと思う。
そもそも作品を発表するのって結構勇気がいる事なんだろう。制作するのは自由でも、いざ発表するとなると嫌でも賛否されることになる。見る人の感性は当然バラバラなわけで…。っとなるのだけれど、こんな無知で独学でコネもカネも無い私でも、創るのが好きで頑張ってやっていたら作品は色々な出逢いを運んでくれる。今これを読んでいる方で今後何かを発表していこうかと悩んでいる方がいたら、一つの参考にして頂けたら嬉しい。まぁ楽観的にとらえたならば、見る人の感性はバラバラなので、少しくらい同じような感性の人はいるのかもしれない。どの道、何をしていても、いい事も悪い事もあるのだから、せめて好きな事やったほうが乗り越えていけるかと思い、私は結構、楽観的に生きている。
創作ヒストリー 素材と創造の物語 - NO.3−2へ続く
関連施設
板室温泉湯宿きくや 様
板室温泉大黒屋 様
北風と太陽 様
オートキャンプ場ハピスポ 様
市立図書館みるる 様
写真作品は【未来の扉】です。
創作ヒストリー 素材と創造の物語
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この度、栃木県那須塩原市の5か所(個展2ヵ所と常設展示3ヵ所)で作品がご覧いただける展覧会、白砂勝敏「未来の扉ー先が見えないときほど未来は明るいことが多いー」を開催していただく運びとなりました。
企画・応援頂きました企業様・関連スタッフの皆様、本当にありがとうございます。
地元から離れた地域での開催になりますが多くの方に見て頂けましたら嬉しく思います。
皆様よろしくお願いいたします。
会場は那須塩原市図書館みるるギャラリー(個展)、カフェレストラン&アート・北風と太陽(個展)、ファミリーオートキャンプ場ハピスポ(常設展示・ワークショップ)、板室温泉大黒屋(常設展示)、板室温泉湯宿きくや(常設展示)となります。
会場ごとに定休日や条件が違いますので下記詳細をご覧ください。
【展覧会名】未来の扉ー先が見えないときほど未来は明るいことが多いー
【開催期間】2022年8月5日(金)~9月19日(月・祝)
※時間等は各会場参照ください。
※作家在廊日:8月5日~8日、9月15日~19日。
主に個展会場「北風と太陽」にいる予定。
【会場】
(1) 那須塩原市図書館 「みるる」ギャラリー【個展会場】
開館時間:火~金10:00~21:00、土・日・祝日10:00~18:00、休館日:月曜日
栃木県那須塩原市本町1番1号 TEL:0287-63-9031
(2) カフェレストラン&アート「北風と太陽」【個展会場】
作家在廊予定:8月5日~8日、9月15日~19日
営業時間:11:00~16:00、定休日:毎週火・水曜日・第1木曜
栃木県那須塩原市戸田708-1 TEL:0287-73-8700
※カフェでゆっくりと時間を過ごしながら作品を鑑賞できます。
(3) ファミリーオートキャンプ場「ハピスポ」【常設展示・ワークショップ】
定休日:毎週火・水曜日(夏休み期間は無休)
栃木県那須塩原市戸田619-1 TEL:0287-74-5417
※森の中で自然を感じながら作品を鑑賞できます。
(4) 板室温泉湯宿「きくや」【常設展示】
見学希望の方は事前にお問い合わせください。
栃木県那須塩原市板室844-7 TEL:0287-69-0303
(5) 板室温泉「大黒屋」【常設展示】
栃木県那須塩原市板室856番地 TEL:0287-69-0226
【協賛】板室温泉 湯宿 きくや・板室温泉 大黒屋・北風と太陽・ハピスポ(五十音順)
白砂勝敏ワークショップ開催!【色んなものに描く】
幼い頃、壁に落書きをして怒られたことがある方は案外少なくないのではないかと思います。
年齢を重ねるごとに四角い画用紙の中に綺麗に描く事が、当たり前のように思ってしまいがちではないでしょうか?
たまにはそこら辺にある石や樹や瓶などに、気の赴くままに描いてみてはいかがでしょうか。
石や樹や瓶などにアクリル絵の具で赴くままに色をつけます。
【開催日】8月7日(日)10:00 ~ 1回30分程度
【会場】ファミリーオートキャンプ場「ハピスポ」内「ガゼボ」周辺
【募集人数等】先着10名程度、小学生~大人、参加費無料、要予約(「ハピスポ」までTEL:0287-74-5417)
<お客様への注意>
絵の具が付くなど汚れても良い服装で来てください。
小雨決行※大雨強風など天候によって中止させていただく場合があります。
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
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