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Logo Mark脳内伝言板創作ヒストリー 素材と創造の物語 - NO.2-3 ホシノタマゴと植物種子

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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前回の続き

2019年4月の個展、「イヤシロの地へ」 で私の他の作品と絡めたインスタレーションに発展していった。その後も展示の規模が少しずつ広がっていき、2019年10月開催されたつくば国際ビエンナーレでは茨城県つくば美術館の野外展示場と、そこに隣接するつくば中央公園の至る所にホシノタマゴを展示することが出来た。この時は野外展示場の中は基本的に立ち入りは自由だが手を触れないでもらうような展示で、惑星が並ぶようなイメージで展示を行い、公園部分に関しては自由に手に取ってもらってかまわないという展示をした。植物の種が入っているので、例えば鳥が種を遠くへ運ぶように、子供がホシノタマゴをぶん投げたとしてもOKというコンセプトで展示をした。思いのほか多くの方が反応してくれた。

つくばには数日滞在して制作をしたのだが、つくばは粘土が豊富な土地で、使われなくなった田んぼを瓦屋さんが買い取り、田んぼを掘ると粘土の層が出てくるそうで、そういったところから土を提供していただいた。他の作家さんとは基本英語しか通じなかったのでなかなか細かい所のコミュニケーションは難しかったが、私は太鼓をもっていったので十分皆と楽しめた。この辺については以前書いた記事を参照して頂けたらと思う。
つくば国際アーティスト・イン・レジデンス

その後も個展やグループ展などで発表を続けているうちに、青山のスパイラルガーデンでの展示が決まった。ここには何度か訪れたことがあった。こんなところで展示できたらいいなぁと思っていたので、話が来た時はとても嬉しかった。

広い空間では、大小様々なホシノタマゴを200〜400個くらい展示している。会場ごとに、色々なことを気付かせてくれる。人工物の中に置いても自然界に置いても存在感を損なわず、だけど派手さはない。それでもなんとなく気を引く感じ。単純な形だけに、なんか不思議な感じだ。一番大きな気付きは、上の空間が広くても空間を取り込んでしまうということを体感できた事だった。大きい物でも20数センチ位なのだけれど数が並ぶと宇宙的な想像があるせいなのか何故か上の空間を感じてくる。展示を見た人が空から降って来たみたいだという人がいた。

例えば室内で作品展示をするとなると空間を上手く使うのに、天井から吊るさげる事が頭をよぎるのだが、ホシノタマゴに関しては天井からつる下げない事で逆に上の空間を感じる事が出来る。私にとってこれは凄い発見であった。広々とした会場に展示してみて初めて実感できる事であった。

ホシノタマゴを展示していて気が付いたことがある。通常の作品よりも、作品と作品を見た人との距離が近いのではないだろうか。どういうことかというと、ほとんどの人が幼い頃、泥団子を作った事がある。ホシノタマゴを見た瞬間、自分の幼い頃の思い出とリンクするようで、少し力が抜けるというか空気も和らぐ。作品から何かを読み取ろうとするというよりは、独自解釈をしやすいのか、作品の中にはいっていくというか、見た人の中に入っていっていると言った方が近いのか、なんにせよ、幼いころの体験が蘇ってくるのではないかと感じている。

ホシノタマゴについては今後も新しい切り口で展開していこうと考えているので、追ってご報告できたらと思っている。

                       おしまい

写真は「ホシノタマゴ」 南青山スパイラルガーデンにて


創作ヒストリー 素材と創造の物語
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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

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