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Logo Mark脳内伝言板創作ヒストリー 素材と創造の物語 - NO.2-2 ホシノタマゴと植物種子

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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ホシノタマゴの着想を得たのは2016年4月21日に富士市にあるハウスゾンネンシャイン音楽堂での演奏に伺ったときだった。その日はコンガやディジュリドゥのソロ演奏と音楽堂の館主の北川さん(ピアノ)とセッションだった。少し早めに到着し準備もスムーズに終わり、本番まで2時間ほど時間があったように記憶している。メモ帳と鉛筆があればどこでも仕事が出来るのがいいところ。普段から時間が空いたら何か考えたりアイデアを膨らめたりするのが至福の時間でもある。

この数日前に陶芸家の知人の知人が窯を閉めるとのことで必要な物があればいただけるというありがたいお誘いがあり出かけて行った。アトリエを改装する為の素材(電気器具や木材等)を頂いた。この時陶芸用の粘土があり、アトリエの補修(隙間を埋めたり)なんかに使えるかもと思い頂いてきた。

ここ数年陶芸をやめる方が何人かいた。団塊の世代の方々が退職する数年位前から陶芸教室に通い始め、退職金で窯を開くのが流行っていた時代があった。そういった方が年齢を重ね体力的にも厳しくなってきている時代なのかなと感じている。陶芸ってある程度の規模でやり始めると、重労働な部類ではないかと思う。もう一つ気が付いたことがある。窯を閉めるとなった時、ロクロや窯や道具などは転売や引き取り手が容易に見つかるのだが、陶芸家の殆どの方は、「土」と「釉薬」に拘って作品を制作しているので、他の陶芸家の使っていた土や釉薬、しかも量も中途半端だと益々引き取り手が無く、それは産業廃棄物になってしまう。しかも結構重い。

そういったタイミングもあったので多分フワッと閃いたのだと思う。粘土を使う事で普通のの土では出来ない大きいサイズも出来るかもしれないと思いついた。思いついたときは中に心棒みたいなものを入れないと形を保持するのが難しいかとも思ったのだが、実際に制作してみると必要ない事もわかった。セメントの分量も試行錯誤した。想像ではもう少し乾燥中に割れるかも知れないと思ったがそこらへんもちょっとしたアイデアで難なくクリヤーできた。

制作は単純だが、なんだかとても楽しい。これまでに数百個制作しているが今でも作り始めるとやっぱり楽しい。泥遊びっていうのはそういうものなのかもしれない。
まだ発表する前、泥団子を制作している所に知人作家がやってきて、私を見てうちの奥さんに「お宅の旦那ニコニコしながら泥団子作っているけど大丈夫ですか?」ってからかわれたな(笑)。

最初は小さい物から大きなものへ10数個制作た。
種の入った泥団子。面白いと思って作ってしまったのだが、本当に発表してもいいのだろうかと、勘違いじゃないだろうか等色々考えた。作品制作していて毎回思うのだが、制作は誰も見ていないので、本当に心のままに制作できるのだが、発表するとなるとこれとは少し話が変わってくる。本当に発表しても良いのだろうか? 空間との関係性? 発表するタイミング? 等々。今の所大体良いタイミングで発表できる展覧会が決まってくるので助かっているのだが、当然発表出来ない作品もでてくる。そういったものも其のうち発表できるタイミングがくればいいなぁと思っている。

始めて発表したのは藤枝市にあるアートカゲヤマ画廊での個展、地球の記憶(ホシノキオク)白砂勝敏展 2018/5/14〜5/20 であった。これを書きながら時系列を見ていくと、思いついてから一月後には個展で発表していたんだなぁ。改めて凄いタイミングで発表出来て良かったと思っている。この時は壁面に「水の記憶」シリーズを展示したのだけど、床面のセンターに一直線にホシノタマゴを並べた。
10m位使って十数個並べてみるとかなり空間を掌握する。想像は飛躍していく。もっと広い空間で、もっと沢山並べたら面白いのではないかと。そうやって転がり始めていった。

その後も野外での展示や室内の展示で、その空間に合いそうな展覧会にはホシノタマゴを何度か展示する事ができた。色を付ける事も始めた。最初はベンガラを塗ったりしていたが、次第にへんな拘りも消えてゆきアクリルで着色するようになっていった。
また半球体や変形玉を作り始めた。そんなことをしているうちに彫りが出来るかもと思い立ち紋様玉が生まれた。色付きや紋様玉が混じる事によって更にイメージが拡張していく事を感じた。

                    次回へ続く


創作ヒストリー 素材と創造の物語
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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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