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Logo Mark脳内伝言板創作ヒストリー 素材と創造の物語 - NO.6 【再生のムジカ〜古道具の音器〜】

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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いつの頃からか、私の作品を見た人が後日、色々な物を持ってきてくれるようになった。そんな中に、使われなくなり何十年も倉庫に眠っている古道具を持ってきてくれることが多々ある。捨てるには勿体ないが、だからと言って使い道がなくなってしまった古道具。有難いもので、直したり改造したりしながら使わせて頂いて、とても助かっている。だが、いかんせんその量が多くなってくると話は変わってくる。使うために直すのは、とても手間がかかる作業で、それほど沢山の同じ道具は使いきれない。やがて作品の素材として使うようになっていった。そういった中である時、想像を超える美しい音を放つ物がある事に気付く。こうなるとまた面白くなってくる。どうすればいい音がするかを試行錯誤し始める。数か月前に種類がバラバラな不要になった床板を大量に頂いたので、ベースはその床板で作りそこに釣り糸を張りその上に金属製のスパナなどの工具をのせ、いわゆる鉄琴を制作し始めた。

鉄の道具を載せる糸の幅でも音階が変わるし乗せる箱の部分の作りでもかなり音が変わってくる。幾つもいくつも試作してみて段々と出来上がっていく。今回この古道具の音器を創っていて一つ気が付いたことがあった。
ミュージシャンが楽器を作ると楽器としての要素が強くなっていく。当然いい音、完成された音が創りたくなっていく気持ちもよくわかる。そして彫刻家が音の出る彫刻を制作すると、私の拙い知識ではあるが、それはやはり彫刻であることが多いように思う。私のやりたい事は多分、もう少し楽器であってもう少しアートであるみたいなことなのかもしれないなぁと思う事があった。こういう事は自分の中ではかなり大きな気付きであり、結構楽しいものである。

そしてここからがとても重要なのだが、どの工具をどういった順番で並べるのか。演奏に直結してくる事であり、自分の手癖やふいに動く動作なども含めて並べて演奏してみては、ばらして違う並びや違う工具を並べてみたりとこれが結構気の遠くなるような作業だった。そうやってなんとなく自分の気になる音と、好みの音階が少しずつ見えてきた。単純にCメジャースケール(ドレミファソラシド)ではなく、自分の好きな世界観が出る音の並びをひたすら探す。音楽的理論等よくわかっていないのでとにかくやってみるしかない。まぁそれが楽しいのだけれども。また、どんな並びにせよ結果的には何か名前のあるスケールになっているのだろうが、そこにはあまり興味を持っていないので深堀することは今はしていない。

またすごくいい音でサスティン(音の伸び)がメチャクチャ長い物があって、それらはまた違った使い方(演奏方法や楽器の創り方)を今後模索してみたいと思っている。今年はこの後も楽器を中心とした展覧会が続くのでどこかで発表出来ればいいなぁと思っている。

話は変わるが先日のボタニカでの個展会場でライブを開催することが出来た。会場の壁に取り付けた「刃ノ音器」などは本当にこの環境でしか出来ない貴重なライブを経験でき本当にうれしく思う。また会場に来てくれた方々にも感謝の気持ちでいっぱいである。本当に感謝。今回のライブの4〜5日ほど前に車を運転していると急にある事を思い出した。それはもう30年ほど前になるのだが、大工をしていた頃の事で、今は一般的には、エアーのガンでパンパン床板を留めているのだが、当時は床板を留めるのに、頭の小さな釘で留めていた。それを最後まで打ち込むのにポンチ(釘締め)を使う。そのポンチを先輩の大工さんたちが各々得意なリズムで打っていたのだ。当然のように自分でもやってみたが結構難しい。特に施主さんがいる現場なんかでは施主さんのうけも良く、何だかとてもいい感じであった。そんなことを思い出し、あれライブでやってみようかなぁと思い、やってみた。思いのほか皆さん楽しんでくれたみたいだし、やっている私もとても楽しかった。これはこれでもう少し進化させたくなっているので今後のライブにもタイミングがあれば取り入れていきたいと思っている。

おしまい

TOP写真は古道具の音器です。
釘打ち演奏動画下記から閲覧できますので興味のある方是非見てみてください。YouTubeチャンネル登録していただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

この後の再生のムジカ作品展示予定です。
【5月@アートカゲヤマ企画個展(藤枝市)1Fギャラリーと2Fギャラリー同時開催】 5月29日から6月4日。
【だれもがワンダフルアート@グランシップ(静岡市)静岡県文化財団企画展】
8月26日から9月10日まで。
こちらはかなり会場が広く大規模な企画展。アートに出逢ってから15年間の間に制作したほとんどの種類の作品を展示予定という企画であり、これまでの活動の集大成。
会期中の9月3日にグランシップ企画のソロライブを開催予定。かなりいい環境でライブを楽しんで頂けると思う。


創作ヒストリー 素材と創造の物語
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釘ノ音器 即興演奏 / improvisation

釘を使った即興演奏demo動画。再生のムジカ〜白砂式音器〜釘ノ音器〜。
釘の音。気になる音を見つけ、気になる音の並び逢い、好きなリズムを刻んでいる。

白砂式音器〜古道具ノ音器〜

白砂式音器〜古道具ノ音器〜。
「不要になった古道具で制作した白砂式音器」。
気になる音を探し求め、気に入った音の並びと出逢い、好きなリズムを刻んでいる。


白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。

20代前半人...

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