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脳内伝言板地図のない旅 (8)

白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

1973年生まれ 静岡県出身 造形家/演奏家 農業高校造園科卒業 美術音楽共に独学。
パーカッション ディジュリドゥ奏者。

二十代前半人生は一度きりだと腹をくく...

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今回は旅をした中で一番恐ろしい出来事について書こうと思う。

長く旅をしていると確かにお化けっぽい経験もなくもないが私には霊感とかはないので総て気のせいで押し通せる範囲だった。
それよりも基本的に生きた人間のが怖いのかなと思っていた為、そういうところは少し警戒していた。
その甲斐あってか意外と誰かに襲われるとか、脅かされる等そういう経験は一度もない(海外でボラれた事位はある)。

沖縄の離島にいるとスコールが頻繁にあるのだが昼間なんかは結構気持ちよかったりもする。

星空が美しい夜でも浜から海を見ていると時々ピカピカ光ることがある。それは遠くで雷が落ちている様子でこれがまた美しい。ただこれが自分の上に来た時はシャレにならない程恐ろしい事になる。
地震、雷、火事、親父とはよく言ったものだと体感して初めてなるほどと思ったわけでした。

その時は浜辺のアダンの樹の周りの藪を切り開きテントを立て、その上に拾ったブルーシートを張り雨でも炊事が出来るようにしていた。
食器や鍋は周りのアダンの木の枝に引っかけていた。

余談だが、この浜にはカラスが結構いて食材なんかをテントの外に置いて出かけるとみんなカラスの餌食になってしまった。ある時テントに戻ったら近くにとまっているカラスのくちばしがマヨネーズだらけだったことがあり、その時はシュールな感じで笑えた。ビニール袋には食べ物が入っていると思っているらしく石鹸をいれたビニールを木に吊るしていると襲われていたりもした。カラスも賢いが、実体験をしながらこちらも学ぶ(笑)。
あと夕食にレトルトのカレーを食べ放置しておくと夜中に何かガサガサいっている。恐る恐る中を見るとヤドカリがいっぱい入っていてしかも洗剤で洗ったかのように綺麗に食べつくされていたり。自然て凄い。

ある晩、猛烈な雨と雷に襲われたのだがこれが本当に恐ろしかったのだ。
どしゃ降りと雷の音で目を覚ますと、光ってから音がするまでがどんどん早くなっていった。
(この体験以来、雷が鳴ると光ってから音がするまで未だに心の中でカウントしている)

そうなると外に吊るしてある鍋や金属が心配で仕方なくなる。
どうしたらよいかと考えていると砂に埋めれば大丈夫かなと思いつく。
埋めている時に落ちないように祈り、急いで外に出てずぶ濡れになりながら、
どしゃ降りの中、金属製品を総て砂に埋めテントの中に潜り込んだ。

やがて雷が近くにバンバン落ちてくる。
これはうまく言葉で伝えるのが難しいが本当に恐ろしい。
雷が空気を切り裂くようなあの爆音と振動。そしてすぐそばに落ちたとわかるインパクト。

次は俺かと頭によぎる。本当に運頼み。

過去にもバイクやなんやでヒヤッとしたり危険な事が何度もあったが、
この時は本気で死ぬかも知れないと感じた。
しかもそれが今はいつ自分に落ちてもおかしくないのだから生きた心地がしない。

たぶん数十分間の出来事なのだと思うがとても長く感じた。最後まで抗いたいとも思うのだがやれることをやってしまうと最後には運を信じテントの中でじっと何かに祈るしかない。

やがて雷と雨は過ぎ去り気持ちのいい朝を迎えた時には、
生きててよかった〜と心の底から思ったのを覚えている。
不思議と生かされたという思いまで湧き上がってくる。

冷静に考えると天から何万ボルトという電気が落ちてくるわけで…自然て凄い。

TOP画像の作品は【循環】です。
以前フランス料理店で展示した時にそのお店で使われていた割れたグラスを使用して制作した作品です。
今回の話のビーチで拾った貝殻を加工したものにムスカリ等を植えてあります。


BRAIN II 「未来の記憶」より

【向こう側に咲く花】

瞬きのような壱年が過ぎ 老いる以外に手に入れた物は何なのか

得体のしれない黒い箱をむやみに開けるような人生でも 明日へ繋がる選択が未来を積み重ねている事に気づくが それでもやはり傾き続ける天秤に心惹かれる

向こう側に咲く花よ 許される事にどれ程の意味があるのか

いつだって予測不能な未来を切り開く力に魅力を感じ 目を凝らしても見えぬから ただ気を張って感じ取るしかなく

誰ともちがう己の時を刻む事が生きる事だと気づいた時 得体のしれない孤独と期待も受け入れた

そして、あの花はこちら側に咲いている事に気がついた

           白砂勝敏


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【ミネラルアート】

向かって右はヒマラヤ水晶、左はボルダーオパール。

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白砂勝敏(Shirasuna Katsutoshi)

1973年生まれ 静岡県出身 造形家/演奏家 農業高校造園科卒業 美術音楽共に独学。
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